
電子カルテ導入のポイント | 失敗しないための手順と注意点
電子カルテは多くのメリットがあると考えられています。電子カルテ導入にはポイントがあります。ここでは、電子カルテ導入のポイントから、失敗しないための手順と注意点、電子カルテ導入後のメリットなどを紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
- 電子カルテの導入率
- 電子カルテの選定ポイント
- 電子カルテの導入の流れ
- 電子カルテ導入時の注意ポイント
- 電子カルテ導入後のメリット
関連記事:クラウド型電子カルテとは?普及率と今後の見通しなども解説
目次[非表示]
- 1.電子カルテの導入率
- 2.電子カルテの導入の流れ
- 2.1.電子カルテ導入手順1:電子カルテの選定
- 2.2.電子カルテ導入手順2:要件確認とシステム設定
- 2.3.電子カルテ導入手順3:試験運用
- 2.4.電子カルテ導入手順4:運用開始
- 3.電子カルテ導入に必要となる準備
- 3.1.1.資料に関する準備
- 3.2.2.場所に関する準備
- 3.3.3.体制に関する準備
- 3.4.4.備品に関する準備
- 4.電子カルテ導入時の注意ポイント
- 4.1.自院に合った提供形態か確認する
- 4.2.初期コストだけでなく運用コストも把握する
- 4.3.必要な機能をはっきりさせる
- 5.電子カルテ導入後のメリット
- 5.1.情報整理の時間短縮ができる
- 5.2.保管スペースの削減
- 5.3.データの共有が容易
- 6.電子カルテの導入でさらなる業務効率化を!
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「電子カルテの選び方ガイドブック」
電子カルテの導入率
電子カルテの導入率は次のとおりです。
一般病院 |
病床規模別(400床以上) |
病床規模別(200~399床) |
病床規模別(200床未満) |
一般診療所 |
|
平成20年 |
14.2% |
38.8% |
22.7% |
8.9% |
14.7% |
平成23年 |
21.9% |
57.3% |
33.4% |
14.4% |
21.2% |
平成26年 |
34.2% |
77.5% |
50.9% |
24.4% |
35.0% |
平成29年 |
46.7% |
85.4% |
64.9% |
37.0% |
41.6% |
令和2年 |
57.2% |
91.2% |
74.8% |
48.8% |
49.9% |
上記のとおり、電子カルテの導入率は年々高まっています。ただし、病床規模別が400床以上の病院の導入率が9割を超えているのに対して、病床規模別が減少するほど導入率は低下しており、200床未満の病院は5割に到達していません。
今後、5割を超えることは予想されますが、病院の資金力によって導入率に差が生まれているといえます。
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「電子カルテの選び方ガイドブック」
電子カルテの導入の流れ
導入するサービスによって細かい点ではいくつか違いはありますが、流れとして一般的なのが、下記の4ステップです。
- 電子カルテの選定
- 要件確認とシステム設定
- 試験運用
- 運用開始
円滑な導入を実現するために、電子カルテ導入の流れを把握し、スムーズに導入できるよう準備することが大切です。上記の4ステップに沿って、電子カルテ導入の流れを確認しておきましょう。
電子カルテ導入手順1:電子カルテの選定
1社だけを見て決めるのではなく、複数のサービスを比較検討すると良いでしょう。クリニックが重視する項目に基づき、候補をピックアップしましょう。
- クリニックの診療科目などの基本情報
- 電子カルテ導入で実現したい内容
- サービスのコスト面やサポート面
- 画面のデザインや操作性
上記項目を加味して比較・評価を行い、候補となるサービスを絞り込みます。
電子カルテ導入手順2:要件確認とシステム設定
候補を絞ったら、電子カルテに関する要望、確認したいポイントをまとめて提供元に伝えます。要望を具体的に伝えることで、次のステップであるデモンストレーションに反映しやすくなります。
電子カルテと連携できるシステムもありますので、電子カルテ以外にも実現したいICTがあれば相談しておくのもおすすめです。電子カルテと連携できるシステムは年々拡大しており、連携機能を実装しておけば、業務をさらに効率化できる可能性があります
電子カルテ導入手順3:試験運用
次に試験運用です。打ち合わせの内容に基づいて実際の機材やソフトを確認しながら試験運用を実施していきましょう。本稼働に向けて操作方法を習得する時期なので、操作性やレイアウトなどを確認しながら操作しましょう。
電子カルテ導入手順4:運用開始
試験運用に問題がなければ、電子カルテを本稼働させましょう。本稼働後は、デモンストレーションでは問題のなかった所にもトラブルが起こることがあります。トラブルや不具合があったら、サービス提供元の企業に問い合わせましょう。
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「電子カルテの選び方ガイドブック」
電子カルテ導入に必要となる準備
電子カルテの導入に必要となる準備として次の3つが挙げられます。
- 資料に関する準備
- 場所に関する準備
- 体制に関する準備
- 備品に関する準備
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.資料に関する準備
電子カルテを導入する際は、次の資料を準備しておきましょう。
- 全帳票類
- 既存ネットワーク関連資料
- 加算を算定するために使用しているゴム印など
「全帳票類」は紙・Excel・Wordといったなど、現在使用している帳票がカルテのどの機能に該当するか検討する際に必要となります。
「既存ネットワーク関連資料」は電子カルテの導入時にネットワークの見直しをするため、既存ネットワークを把握するために必要です。配線図や既存IPアドレス一覧を準備しておくとよいでしょう。
「加算を算定するために使用しているゴム印など」はどのような加算を行っているかを把握し、電子カルテに実装するかどうか検討する際に必要な資料です。
2.場所に関する準備
次の場所を準備しておきましょう。
- サーバールーム:電子カルテサーバーの設置場所(オンプレミス型のみ)
- プロジェクトルーム:導入時、SEが病院常駐して作業する際のスペース
- リハーサルスペース:電子カルテのリハーサルを行う際の場所
- 操作研修場所:電子カルテの集合研修を行う場所
- クライアントPCの設置場所:診察室の業務上電子カルテ端末が必要な場所に設置できるかどうか
いずれも事前に確認することが大切です。
3.体制に関する準備
体制は次のような部分について準備しておきましょう。
- 電子カルテ委員会の設置
- 業務ヒアリングの準備
- 電子カルテ障害時の対応
- マスター管理者担当者の決定
「電子カルテ委員会」を設置しましょう。各部門の代表者を決めたうえで定期的に打ち合わせを開催し、課題への最終判断や月次報告を行いましょう。
業務ヒアリングを準備する際は、業務を把握しており、それなりに決定権のある人を担当者にし、カルテ導入後の運用方法を決定していきます。
マスター管理担当者を決定し、マスター設定や導入後のメンテナンスを行います。障害時に迅速な対応を行うためにも、障害時の対応や連絡方法を決めておきましょう。
4.備品に関する準備
電子カルテ端末が増加すると必要な備品も増加します。そのため、状況に応じて次の備品を準備しておくとよいでしょう。
- 電源
- LANケーブル
- プリンター
- スキャナー
処方箋を印刷する必要がある場合は接続できるプリンター、紙カルテを電子カルテに取り込む際はスキャナーが必要です。
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「電子カルテの選び方ガイドブック」
電子カルテ導入時の注意ポイント
電子カルテは構築するだけで終わりではありません。電子カルテの運用を開始してから、想定外の障害やトラブルが起こる可能性があります。
導入後、逐一トラブルに対処するのは大変ですから、ここでは導入後起こりやすいトラブルを想定しながら電子カルテ導入時の注意点について見ていきます。
自院に合った提供形態か確認する
システムを選ぶとき、診療内容や医療機関に合った電子カルテなのか、コスト面はどうかなどをチェックしなければいけません。サービスごとに異なる電子カルテの特性を十分に理解し、自院にあった提供形態か確認してから導入する電子カルテを選びましょう。
初期コストだけでなく運用コストも把握する
電子カルテを運用していくにあたり、気にするべきポイントがコスト面だと考える方も多いでしょう。そのとき、ぜひ確認してほしいのが運用コストです。
安く抑えたいクリニックが安易に初期費用の安い電子カルテを導入すると、運用コストが高く、結果的に損をすることがあります。初期費用だけでなく、オプションを含めた運用コストも確認して選ぶのが得策です。
必要な機能をはっきりさせる
自院の電子カルテに必要な機能をはっきりさせることも大切です。とはいえ、必要な機能が何なのかわからない場合もあるでしょう。そんな場合は、次の二点をチェックしましょう。
- 何が目的で電子カルテを導入するのか?
- 電子カルテでどのような課題を解決したいのか?
「業務を効率化したい」「紙カルテの煩雑さをなくしたい」など、目的をできるだけ具体的にすることで、必用な機能が明らかになります。
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「電子カルテの選び方ガイドブック」
電子カルテ導入後のメリット
ここでは、電子カルテを導入してからのメリットをご紹介します。
- 情報整理の時間短縮ができる
- 保管スペースの削減
- データの共有で診察の質が向上する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
情報整理の時間短縮ができる
電子カルテは、紙のカルテと比較して、記入する速度も上がり記入漏れも失くしやすくなります。その結果、診療に関わる信頼性や正確性が上がり、診察にかかる時間を短縮できる効果が期待できます。また、記入された情報は電子情報として保管できるためのため、カルテの整理がしやすくなります。
保管スペースの削減
紙カルテの場合、保管のためのスペースが必要になります。開業当初はよくとも、ある程度年数を重ねると、紙カルテの置き場に悩んでしまうクリニックは多いのです。その点、電子カルテは、ハードディスクやクラウド上などにデータを保管できるため、保管スペースの問題はほとんど考慮する必要がありません。
データの共有が容易
電子カルテを利用すると、患者のデータをオンラインで検査センターなどとデータの共有がスムーズにできるようになります。検査結果、既往症やアレルギー・他の医療機関で処方されている薬などの情報を紐づけられるので、情報の精度が向上し、医療事故防止にも役立つとされています。
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電子カルテの導入でさらなる業務効率化を!
厚生労働省も医療等分野におけるICT化を推進しており、今後、電子カルテは新規開業する医療機関にとって、より必要不可欠のシステムになるでしょう。電子カルテを導入するだけですぐに業務効率化ができるわけではありませんが、よりよい医院運営の一助となることは間違いありません。
デメリットをきちんと享受するためにも、導入時には比較検討していくことが重要になります。電子カルテの導入でさらなる業務効率化を図っていきましょう!