クラウド型電子カルテとは?普及率と今後の見通しなども解説

クラウド電子カルテとは

クラウド電子カルテとは、インターネット回線を通じて提供されるシステムを利用する電子カルテのことをいいます。クラウド"型"電子カルテとも呼ばれます。

クラウド電子カルテは、院内にサーバを設置する必要がありません。
企業が管理するサーバにアクセスして、必要な情報を取得・表示させる点が大きな特徴です。

株式会社メドレーのCLINICSカルテも、クラウド電子カルテに分類されます。

そもそも"電子カルテ"とは

電子カルテとは、従来紙カルテに記載していた患者の診療内容や診断結果、処置、処方、経過などの医療情報を電子的に管理するシステムのことです。

紙カルテの運用では、カルテの探索、受け渡し、整理など、管理が煩雑になりがちでした。
医院経営が長くなると管理する紙カルテの数も多くなり、保管スペースを確保する必要もありました。

電子カルテの登場は、これらの工数を削減し、診療業務の効率化をもたらしたといえます。
主に、電子カルテがもたらしたメリットは下記のとおりです。

  • 患者情報を一元管理
  • スムーズに情報を共有
  • 書類作成の手間を削減
  • 読み間違いによる転記ミスを防止
  • 受付業務の負担を軽減
  • 保管スペースの確保が不要
  • 検索性に優れている

医療分野におけるIT化の歴史は、レセプトコンピューター(レセコン)が登場した1960年代から始まったといわれています。
1970年代にオーダエントリシステムが登場し、1990年代に電子カルテが登場しました。

そして1999年に厚生労働省より通知された「法令に保存義務が規定されている診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン等について」において、「電子保存の三原則」を満たしていれば、カルテを電子的に保存することが認められました。

その後、2005年ごろに日本医師会の標準レセプトソフトである「ORCA」が開発されたことにより、電子カルテメーカーが続々と登場し、ORCAと連動する電子カルテが多数販売されました。

電子カルテの普及率と今後の方向性

厚生労働省が2017年に行った調査「電子カルテシステム等の普及状況の推移」によると、2017年の一般病院における電子カルテ普及率は、400床以上の病院で85.4%、200〜399床で64.9%でした。
一方で、一般診療所における普及率は41.6%となっており、まだまだ普及が進んでいないことがわかります。

厚生労働省は「医療等分野におけるICT化の徹底について」において、2020年度には400床以上の病院での普及率を90%まで引き上げることを目標としています。
電子カルテ導入医療機関を拡大するのと並行して、電子カルテデータの標準化も進めています。
これは、医療情報の共有・収集・分析を促し、地域医療情報連携ネットワークを全国へ普及させる目的のためです。

レセプトコンピューター(レセコン)

 

レセプトコンピューター(レセコン)とは、医療機関が診療報酬を請求するために支払審査機関に提出する「レセプト(診療報酬明細書)」を作成するシステムのこと。医療事務コンピューター、医事コンピューターとも呼ばれる。

オーダエントリシステム

 

オーダエントリシステムとは、検査依頼・処方などの指示を紙でなく端末で入力・確認するシステムのこと。

電子保存の三原則

 

電子保存の三原則とは、電子的にカルテを保存・管理する場合に満たさなければならない、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの基準のこと。

地域医療情報連携ネットワーク

 

地域医療情報連携ネットワークとは、地域の病院や診療所、薬局、介護施設などが患者の医療情報を共有する仕組みのこと。

そもそも "クラウド" とは

クラウドとは、企業が保有するサーバが提供するサービスを、インターネット回線を通じて利用者が必要な時に必要な分だけ、手元の端末で利用する考え方のことです。
正式には、クラウドコンピューティングといいます。

クラウド(cloud)と呼ばれる由縁は、インターネットを図解する際に雲の絵を描いて表現していたことが発端になっているという説が有力です。

クラウドによって提供されるサービスは、クラウドサービスと呼ばれます。
一般的に、クラウドサービスは下記に分類されます。
  • SaaS(Software as a Service)・・・ソフトウェアを提供するクラウドサービス
  • PaaS(Plathome as a Service)・・・プラットホームを提供するクラウドサービス
  • IaaS(Infrastructure as a Service)・・・インフラ(サーバ)を提供するクラウドサービス
CLINICSカルテを始めとするクラウド電子カルテは、SaaSに分類されます。
インターネット回線を通じて、電子カルテ機能を有したソフトウェアを、サービスとして提供しているためです。

オンプレミス型電子カルテとは

院内にサーバを設置して運用する、従来の電子カルテのことをオンプレミス型電子カルテと呼びます。

クラウドの対比として扱われる言葉がオンプレミスです。
オンプレミスは、クラウドの登場までサーバの利用方法として主流でした。

オンプレミスとは、自社内にサーバ・ネットワーク機器を設置して、運用することです。
オンプレミス(on-premises)のpremises(複数形)は「建物」を意味しています。

医療分野におけるクラウド解禁

医療分野におけるクラウドサービスは、2010年に厚生労働省より「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正が通知されたことで解禁されました。
それまで、電子化された診療録は、医療機関や医師会・自治体など医療機関に準ずる場所に設置されたサーバで管理する必要がありました。
この改正によって、電子化された診療録などを一定の基準を満たした民間企業が運用するサーバで管理することが認められました。

クラウド電子カルテが登場した当初は、セキュリティ面や安定性という観点から導入を見送る医療機関も少なくありませんでした。

しかし、近年はクラウド電子カルテのシェアが徐々にですが高まりつつあります。

クラウド型電子カルテの普及率と今後の見通し

日経メディカルOnlineが、2019年に開業医を対象に実施した「電子カルテ関するアンケート」の結果によると、電子カルテを導入している開業医のうち、クラウド電子カルテを導入している比率は11%とのことです。
また、開業5年未満の開業医がクラウド電子カルテを導入している比率は20%でした。
新規開業の際にクラウド電子カルテを選択される先生が多いことがわかります。

また、株式会社富士経済の「2020年 医療ITのシームレス化・クラウド化と医療ビッグデータビジネスの将来展望」によると、電子カルテの普及が政策面でも推進されており、低価格やモバイル性の観点から、中小病院および診療所を中心に今後も市場規模の拡大が続く見通しであります。

中小病院や診療所は、予算が限られているケースも多く低価格なクラウド型電子カルテの需要が増加しております。企業動向/製品動向としても、クラウド型電子カルテ提供会社間での競争は、より激化していくでしょう。

クラウド電子カルテのメリット・デメリット

クラウド電子カルテのメリット・デメリットについて解説します。

クラウド電子カルテのメリット

クラウド電子カルテのメリットを、「費用」「機能」「更新・メンテナンス」「サポート」「バックアップ」「Webサービスとの連携」といった観点から説明します。

費用

クラウド電子カルテの費用形態は、サブスクリプションモデルが一般的です。
オンプレミス型電子カルテのように院内に設置するサーバを購入・リースする必要がないため、初期費用が安く、一般的に必要とされる5年毎の買い替えも不要になります。
そのため、使用期間が長くなるほど、コストを削減することが可能です。
CLINICSカルテと一般的なオンプレミス型電子カルテの費用を比較した図がこちらになります。

サブスクリプションモデル

 

サブスクリプションモデルとは、商品やサービスの数ではなく、利用期間に対して対価を支払う方式のこと。バージョンアップやサポート費用を含め、利用のために必要な料金はすべて含まれているため、追加料金が発生しない。

 

機能面

クラウド電子カルテの機能面でのメリットは、インターネットに繋がるパソコンさえあれば、場所を選ばずに電子カルテを利用できる点です。
月初に行うレセプト作成業務を自宅で行ったり、翌日に来院予定の予約患者のカルテを予め閲覧・編集したりすることができます。
また、在宅患者の家へ訪問診療した際も、その場で処方箋を発行することが可能です。

更新・メンテナンス

クラウド電子カルテはサーバを企業側で管理しているため、更新やメンテナンスの際に医療機関側で作業が発生することはありません。
オンプレミス型電子カルテの場合は、CD-ROMを用いた更新作業を自身で行ったり、担当者が医療機関に訪問してメンテナンスしたりする必要がありました。
2年に1度の診療報酬改定においても、クラウド電子カルテであれば4月1日に自動的に改定内容が反映された状態の電子カルテを利用することが可能です。

サポート

クラウド電子カルテのサポート体制は、基本的にリモートサポートが中心です。
何か不具合が生じた際に、リモートで調査することができるため、不具合の原因を特定・解決するスピードがオンプレミス型に比べて早いといわれます。
オンプレミス型電子カルテの場合は、やはり担当者が医療機関に訪問して直接不具合を確認する
必要があります。
CLINICSカルテにおいては、電話サポートの他に、チャットサポートも実施しています。

バックアップ

クラウド電子カルテは、企業が管理するサーバでデータがバックアップされるため、有事の際も安心です。
近年は、医療機関においても、大規模な自然災害などにそなえた危機管理意識が高まっています。
そのため、BCP(Business Continuity Plan)を作成する医療機関が増えており、災害対策としてクラウド電子カルテを導入することも少なくありません。

BCP(Business Continuity Plan)

 

BCP(Business Continuity Plan)とは、有事の際も業務が継続できるようにしておくために策定する事業継続計画のこと。

Webサービスとの連携

近年は、Web予約システム、Web問診システム、オンライン診療システムなど、さまざまなWebサービスが登場しています。
クラウド電子カルテは、このようなWebサービスとの親和性が高く、容易に連携することが可能です。
CLINICSカルテが連携できるWebサービス一覧は「CLINICSカルテの連携一覧」をご確認ください。

クラウド電子カルテのデメリット

クラウド電子カルテのデメリットを、「カスタマイズ性」「オフライン時の利用」といった観点から説明します。

カスタマイズ性

クラウド電子カルテのデメリットとして最初に挙げられるのが、カスタマイズ性です。
企業が管理するサーバで構築された電子カルテシステムを利用している以上、医療機関側で自由にカスタマイズすることはできません。

オンプレミス型電子カルテは院内だけでの運用になるため、自院に合った自由度の高いカスタマイズが可能です。

CLINICSカルテの場合も、医療機関ごとの個別のカスタマイズへ対応することはできません。
一方で、ユーザーから頂戴した要望は、社内の医師・エンジニア・デザイナーが一緒になって検討し、ユニバーサルに必要な要望だと判断された場合は積極的に反映させています。

オフライン時の利用

クラウド電子カルテを利用するためには、インターネットに繋がる環境であることが大前提となります。
そのため、インターネット回線に何らかのトラブルが生じた際など、やむを得ずオフラインになってしまったときに電子カルテを利用することがでません。

こうした緊急時の対策として、下記の運用が考えられます。
  • 院内にモバイルWi-Fiを常備する
  • スマートフォンのテザリング機能を利用する
  • 院内のPCにバックアップとしてカルテのPDFデータを用意しておく
  • 紙カルテ運用を実施できるように処方箋や領収証を用意しておく

クラウド電子カルテと相性のいい医療機関

クラウド電子カルテは、院外からカルテを確認するニーズが高い医療機関において特に活躍します。
例としては、下記のような医療機関が考えられます。
  • 複数医師で運営している医療機関
  • 非常勤の先生が多い医療機関
  • 分院展開している医療機関
  • 老人施設を管理している医療機関
  • 在宅・訪問診療を行っている医療機関
また、クラウド電子カルテは診療科目によらずご利用いただくことが可能です。

CLINICSカルテおいても、幅広い診療科目でご利用いただいています。
現在ご利用いただいている医療機関の診療科目を例として挙げると、下記のとおりです。
  • 内科
  • 小児科
  • 呼吸器科
  • 耳鼻咽喉科
  • 脳神経外科
  • 神経内科
  • 精神科・心療内科
  • 皮膚科・美容皮膚科
  • 整形外科・リハビリテーション科
  • 消化器科・胃腸科・肛門科
  • 婦人科・産婦人科
  • 泌尿器科・性病科
  • 乳腺・甲状腺外科
  • 放射線科
  • 在宅・訪問診療
  • 自費診療(自由診療)

まとめ

最近のトレンドで人気の高いクラウド型電子カルテですが、その理由についておわかりになりましたでしょうか。

厚生労働省による電子カルテ普及率の引き上げ政策と並行し、低価格やモバイル性の観点からも、中小病院および診療所を中心に今後も市場規模の拡大が続く見通しです。これに連動して企業動向/製品動向としても、クラウド型電子カルテ提供会社間での競争がより激化していくことが推測されるため、各社の特徴や強み/弱みについてしっかりと専任のメーカーへ確認することが最善です。

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