電子カルテとは?導入のメリットや課題について解説します
近年、電子カルテを導入するクリニックが増えており、その普及率は年々伸びています。そこでこの記事では、電子カルテの現状とともに、その基本的な内容から、電子カルテを導入したら得られるメリットまで紹介します。
目次[非表示]
- 1.電子カルテとは
- 1.1.電子カルテの普及率や現状
- 1.2.紙カルテのデメリット
- 2.電子カルテシステムの種類「オンプレミス型」と「クラウド型」
- 3. 紙カルテから電子カルテに移行する際の注意点
- 3.1.運用に適した電子カルテを選ぶ
- 3.2.過去の紙カルテ情報のデータ移行の準備をする
- 4. 電子カルテのメリット
- 4.1.大量の患者情報を省スペースで保管・管理できる
- 4.2.見たい情報がリアルタイムで確認可能
- 4.3.データの共有で診察の質が向上する
- 5. 電子カルテのデメリット
- 5.1.操作に慣れるまでに時間を要する
- 5.2.停電になると利用できない
- 5.3.セキュリティ対策が必要
- 6. 電子カルテの導入でさらなる業務効率化を!
▼動画を確認したい方はこちら
下記の動画でも電子カルテの種類や選び方について解説しています。
1時間の長い動画ですが、概要から詳細までを理解するのに参考になるかと思いますので、ぜひ合わせてご視聴ください。
電子カルテとは
患者の診察内容や診断結果、処方薬や経過について記載した文書を「カルテ」と呼びます。近年ではをパソコンやタブレットなどを用いて作成し、電子的なデータとして保存できる「電子カルテ」が普及してきました。
電子カルテの普及率や現状
電子カルテ普及率は年々増加しており、一般診療所の電子カルテ普及率は平成29年で41.6%と、平成20年の14.7% から26ポイント以上導入率が高くなったことが見て取れます。また、厚生労働省の調べによると、電子カルテの普及率は病床数が400床以上の大病院では85.4%になっていますが、200床未満の中小規模病院では、37.0%と高くないのがわかります。
実際に電子カルテ導入をする場合、コスト負担が大きくなってしまうため、中小規模の病院には手が出しにくいことが浸透しない要因と考えられます。
関連記事:電子カルテの普及率はどれくらい?普及に対する課題と対策
紙カルテのデメリット
今でも紙カルテの風習が根強く残っている病院も少なくありませんし、「紙のほうが書きやすい」という医療者も多いのが現状です。
確かに従来のやり方は変えにくいものですが、紙カルテには下記のようなデメリットもあります。
【紙カルテのデメリット】
- 保管スペースが年々増えていく
- 医師の字が癖がある場合読み解けないことがある
- 記入ミス・記入漏れがあると逐一確認する必要がある
- 情報共有がしにくい
電子カルテシステムの種類「オンプレミス型」と「クラウド型」
現在運用されている電子カルテシステムには大きく分けて、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれにメリットやデメリットがありますので、それぞれの違いを確認していきましょう。
関連記事:クラウド型電子カルテ比較10選!導入時のポイントと注意点
オンプレミス型
オンプレミス型電子カルテとは、設備を院内で保有し、コンピュータ間をローカルネットワークで接続するシステムのことです。
自院内のみで完結するのが特徴で、これまで医療機関で広く使われていた実績があり、サポートが手厚いのがメリットです。しかし、サーバーやプリンタやパソコン、ネットワークシステムやバックアップメディアなどを自院で準備する必要がありますので、初期費用が高額になる可能性があります。
クラウド型
クラウド型電子カルテは、クラウド事業者が持つネット上のサーバーにカルテデータをアップして管理する電子カルテのことです。
システムの保守管理はクラウド側で行ってくれるので、管理をする必要はありません。また、クラウド型は初期費用が比較的安いものが多いので、オンプレミス型と比べて安価に使用できます。
ただ、クラウド型電子カルテの場合、比較的カスタマイズ性が低いことがデメリットです。ですが、近年クラウド型の機能も進化しており、オンプレ型と遜色がなくなってきています。
紙カルテから電子カルテに移行する際の注意点
紙カルテから電子カルテに移行を進めるにあたり、どういった点に注意して導入すればいいのでしょうか。ここでは、具体的に紙カルテから電子カルテへの移行する方法についてご紹介します。
運用に適した電子カルテを選ぶ
電子カルテには種類がありますので、自院の運用に適した電子カルテを選ぶ必要があります。
- 患者の来院受付
- 窓口会計へと至る患者の動線
- スタッフの動線
- 診察や検査
など、診療スタイルに合ったものかしっかりと確認しましょう。
システムごとに機能や設定は千差万別です。デモンストレーションをしてみて、入力操作がしやすいかやレスポンスの速さなども確かめることで、実際に運用し始めてからのストレスが軽減されます。
過去の紙カルテ情報のデータ移行の準備をする
紙カルテのデータをどう管理していくかも、紙カルテから電子カルテに移行する際に必ず考えなくてはなりません。
紙で書き溜めたカルテをPDFで取り込むにしろ、一度に全てを電子化するのは医院にとって大きな負担になります。そのため、今までのカルテは紙のまま保管し、来院があったときに電子化、新しい診療内容から電子カルテに記載を始めるというクリニックも多いのです。
紙カルテから電子カルテへの移行を代行してくれるベンダーもありますので、そちらを選ぶという手もあります。レセプトコンピューターごと変更して電子カルテにする場合は、レセプトデータを使っての移行ができます。サービスによって移行できるデータ内容が違うので、詳細は確認しましょう。
電子カルテのメリット
ここからは電子カルテのメリットについてお伝えします。紙カルテを使用している病院やクリニックが電子カルテに移行すると、以下のようなメリットが得られます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
大量の患者情報を省スペースで保管・管理できる
紙カルテによる院内のスペース圧迫は、医療に必要なものを置く場所の確保が難しくなるなど、治療の質にも悪影響を与える可能性があります。
また、保管場所を新たに新設しなければいけなくなるなど、コスト面でもデメリットがあります。
しかし、電子カルテのデータはサーバーに保存されます。そのため、大量の患者情報を省スペースで保管・管理できるようになるのです。
見たい情報がリアルタイムで確認可能
電子カルテは、パソコンで患者の診察内容を打ち込むだけでデータが残ります。それにより、情報整理の時間短縮ができるのは電子カルテならではのメリットと言えるでしょう。
また、入力や編集、削除したものがすぐ反映されるため、見たい情報がリアルタイムで確認可能になります。例えば外来の場合、新規の患者の名前・住所・問診票、症状・既往歴などの基本情報を受付スタッフが電子カルテに入力するだけで、医師は診察室にいながら確認できるのです。
データの共有で診察の質が向上する
カルテは電子情報となっているため、同じ病院内はもちろんのこと、他の医療機関とネットワークで結ばれていれば、簡単にカルテを共有できます。
転院や別医院での診察の際に、今まで受けてきた診断内容を共有しやすく、薬の処方ミスや検査内容の重複なども防げます。電子カルテにすることで、診療に関わる信頼性や正確性を保持できるようになるのです。
電子カルテのデメリット
操作に慣れるまでに時間を要する
もちろん電子機器の取扱いに慣れている先生やスタッフもいると思いますが、スタッフのなかには苦手意識のある方もいるでしょう。電子カルテは多くの機能を有しており便利な一方、逆に操作に慣れるまでは扱いにくいこともあります。
そのため、導入前に必ず全スタッフに研修をしなくてはなりません。また、導入後に新スタッフを雇用した場合も、同様の研修を受けさせる必要があります。研修にかかる人的コストが必要になるのは電子カルテだけではありませんが、操作に慣れる必要があることはデメリットと言えるでしょう。
停電になると利用できない
電子カルテは当然コンピュータやインターネットを活用して運用するので、停電になると利用できないことも、電子カルテのデメリットといえるでしょう。
大手のクリニックの場合だと自家発電装置が設置されており、そうそう停電になることはありません。しかし、断線や接続不良などによってシステムダウンする危険性はゼロとは言えません。対策として、システムダウン時は紙カルテ運用に切りかえ、戻り次第入力するなどが考えられます。システムダウンなどの危機に対するメーカーの具体的取り組みを導入前に確認することも大切です。
セキュリティ対策が必要
電子カルテには、紙カルテ同様に非常に多くの個人情報が記されています。そのため、漏えいを防止するためのセキュリティ対策は必須と言えるでしょう。
院内のどこからでも一元管理された患者の情報を確認できるため、自分の担当外の患者のカルテの閲覧もできてしまいます。また、スタッフがUSBなどにデータをコピーして持ち出してしまう危険性もあります。
対策としては、院内に患者のデータを残さないクラウド型の電子カルテシステムを利用することや、パスワード管理をする、コピーガードをかけるなどがあります。
サイバー攻撃や不正アクセスにも対応できるのかなども、導入時に合わせて確認しましょう。
電子カルテの導入でさらなる業務効率化を!
電子カルテはコスト面などで課題があり、なかなか導入が進んできませんでしたが、クラウド型の進出や診療報酬の改定などにより、いまでは導入しやすくなってきました。
今後の医療体制は、より柔軟な対応ができる診療方法を求められるようになります。電子カルテはこれからも推進されていくことでしょう。デメリットを鑑みて、自院に適した方法を探してみてください。