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クリニックで生成AIを使っていいの?医師が知っておくべきルールと活用法
「生成AIは、医師やクリニックには関係ない」。
そう感じている方も、まだ多いのではないでしょうか。ところが、現実は少しずつ変わり始めています。スタッフの採用難、増え続ける書類仕事、患者さんの対応に追われる診察室…。そうした日常の課題を少し楽にしてくれる手段として、生成AIは医療現場にも浸透しつつあります。とはいえ、「使っていいの?」「ルールはあるの?」「個人情報は大丈夫?」という疑問が先に立ってしまうのは、むしろ当然のことだと思います。本記事では、「生成AIは、正しく使えばクリニックの業務を支える存在になる」ことを、わかりやすくまとめています。生成AIへの疑問や不安の解消、そして自院に合った活用のヒントとしてお役立てください。

1)そもそも「生成AI」とは?
AIとは、人間の知的な作業をコンピュータで再現する技術の総称です。画像診断の補助や予約システムの自動応答など、医療現場でもすでに活用されています。そのAIの中でも、言葉でやりとりしながら文章や画像などを新しく「生成」できるのが、生成AIです。「ChatGPT」や「Claude」といった名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。念のため、ふたつの違いを表で整理しておきましょう。
種類 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|
AI | 人間の知的作業をコンピュータで再現する技術 | Google検索、カーナビ、顔認証 |
生成AI | 言葉でやりとりしながら文章や画像を生成できるAI | ChatGPT、Claude、Gemini |
これまでのコンピュータは「決まった操作をすると決まった結果が出る」ものでした。例えば、翻訳ツールや電卓などがそれにあたります。しかし、生成AIは少し異なります。「カルテの下書きを作って」「この内容を患者さんにわかりやすく説明して」といった、答えが決まっていない依頼にも、文脈を読みながら自然な言葉で応えてくれます。医療現場に置き換えれば、「問診内容をもとにカルテの下書きを作る」「診察中の会話を録音してSOAP形式に整理する」といったことが、音声や文字を入力するだけで実現できます。ただ、ひとつだけ忘れてはならないのは、生成AIはあくまでも「草案をつくるアシスタント」であるということ。医師や看護師の代わりをさせるものではなく、補佐をする賢い道具です。このあたりは、後ほど詳しく解説いたします。
2)「医師がAIを使う」のはOKなのか
「AIにカルテを作らせたら、医師法違反では?」「生成AIが診察していいの?」など、生成AIを使うことに対してさまざまな疑問をお持ちの方も多いはずです。答えからいえば、正しく使えば医師がAIを活用することは何ら問題ありません。そのあたりを2つに絞って解説します。
生成AIが作った文書の最終責任は、医師が持つ
結論からいえば、ルールを守って使う限り、生成AIの活用は医師法に抵触しません。医師法では、診断書や処方箋などの医療文書は「医師が作成する」ことが義務づけられています。しかし、生成AIが作成した下書きを「医師が必ず内容を確認し、修正した上で署名・発行する」という手順で進めれば、法的な問題は生じません。つまり、生成AIの出力をノーチェックで使うことは医師法に抵触しますが、最終チェックを医師が行うことで、生成AIは安心して使える道具になります。「生成AIはアシスタント、判断するのは医師」という大原則を守ることが、すべての前提です。なお、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では、厚生労働省が「業務の効率化に資するICT、AI、IoT等の利活用の推進」を重点課題として基本方針に明記しています。生成AIを活用した文書作成や音声入力システムを導入した医療機関では、医師事務作業補助者の配置基準も柔軟化されるなど、AIの実装が診療報酬上の評価に直結する設計へと移行し始めています。クリニックで生成AIを使うことは、法律違反でも例外でもなく、国が積極的に推進していることでもあるのです。
個人情報保護とセキュリティについて
生成AIに患者さんの情報を入力する際には、2つの観点で注意が必要です。まず個人情報保護法では、入力データが生成AIの学習に使われてしまうと「第三者提供」に該当する可能性があるので、「入力データが再学習に使われない設定」が必須となります。次にセキュリティでは、厚生労働省・経済産業省・総務省が定めた「3省2ガイドライン」というセキュリティ基準への対応が求められます。どの生成AIサービスを選ぶかは、安全性の確保に直結する重要な判断です。
3)使う前に知っておきたい「リスク」
生成AIの利便性を理解した上で、導入時に想定されるリスクも確実に押さえておきましょう。非営利法人 医療AIプラットフォーム技術研究組合が公表している「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」では、医療現場で特に注意すべきリスクとして以下の7つを挙げています。いずれも、正しく把握し適切な対策を講じれば、十分に対処できるはずです。それぞれを詳しく解説します。
Risk 1 情報漏洩・セキュリティ
患者さんの情報を生成AIに入力する際は、まずセキュリティが確保されたサービスかどうかを確認することが必須です。セキュリティが十分でないサービスは、情報漏洩だけでなく、不正アクセスや外部からの攻撃を受けた際に記録の改ざんといった深刻な事態にもなりかねません。サービスを選定する際には、「入力データが再学習に使われない設定になっているか」を必ず確認するとともに、3省2ガイドラインに準拠しているかどうかも判断基準のひとつにしてください。
Risk 2 ハルシネーション(幻覚)
生成AIは一見、整合性のとれた文章を生成しますが、事実とは異なる情報を出力する「ハルシネーション(幻覚)」を起こすことがあります。これは、正確性が最優先される医療現場では、極めて深刻かつ重大なリスクです。生成AIの出力内容は、あくまで「下書き」として位置づけ、必ず医師が精査・修正する運用を厳守してください。特に薬剤名・用量・診断の根拠など、患者さんの安全に直結する情報は念入りな確認が欠かせません。
Risk 3 バイアス・公平性
生成AIは、学習データの偏りをそのまま反映する性質があります。その結果、特定の年齢・性別・国籍・病歴を持つ患者さんに対して、不公平あるいは不適切な内容を出力することも考えられます。出力結果を鵜呑みにせず、医師としての専門的な判断を常に優先してください。違和感のある出力に気づいた際は、使用を控え、内容を改めて検討する姿勢が大切です。
Risk 4 著作権
生成AIは、学習データに含まれる既存の著作物に類似した文章や画像を、意図せず生成することがあります。患者さんへの説明文や院内資料などに使用する際も、例外ではありません。出力をそのままコピーして使うことは避けて、医師や担当者が確認・加筆した上で使用することを原則としてください。特に外部に公開する文章や画像については、より一層の慎重な確認が必要です。
Risk 5 透明性・説明責任
生成AIで作成した文書を使用する際、その旨を患者さんや関係者へ報告することが必要です。誰が・どのような方法で作成したかという責任の所在が不明確なままでは、トラブルの元凶にもなりかねません。院内の運用ルールとして、生成AIで作成した文書をそのまま使用する場合はその旨を明記し、最終的な責任者を常に明確にしておくことが、患者さんとの信頼関係を守ることにもつながります。
Risk 6 不適正利用
生成AIの便利さゆえの「目的外の利用」は、見逃せないリスクです。例えば、特定の医薬品を推奨する文章を作らせたり、患者さんへの説明なしに生成AIの出力を診断の根拠にしたりすることは、医師法や薬機法に抵触する恐れがあります。まず、院内で「使用可能な業務」と「禁止する業務」を明確にルール化し、特に診断・処方・患者さんへの説明に関わる場面では、AIの活用が補助であることを必ず徹底してください。
Risk 7 ディープフェイク
「ディープフェイク」とは、AI技術を悪用して本物と見分けのつかない偽の画像や動画を生成する行為です。生成AIそのものの問題ではなく、技術を悪用した第三者によるリスクですが、院内でのなりすましや虚偽情報の拡散は医療現場でも起こりえます。利用者・利用場面・利用ツールを院内ルールで明確に定め、不審な画像や動画が共有された場合の対策もあらかじめ用意しておきましょう。
In the case of CLINICS |
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CLINICSは、こうしたリスクへの対応を設計の前提として組み込んでいます。3省2ガイドラインへの準拠と、入力データが再学習に使われない設計により、情報漏洩やセキュリティリスクを最小限に抑えています。さらに、医師が必ず内容を確認・修正してから保存する仕様によって、ハルシネーションへの対策も設計レベルで組み込まれています。CLINICSとの契約に基づいて責任範囲が明確に定められており、利用ルールに関するサポート体制も整っているため、導入後も安心して運用を続けることができます。「リスクを知った上で、安心して使える環境」をシステムとして提供しているのが、CLINICSの強みです。 |
4)クリニックでの活用シーン
ここからは、具体的な活用法をご紹介します。生成AIを医療現場で活用できる場面は、実はかなり幅広く存在します。来院前の問診対応から、診察後のきめ細やかなフォローアップに至るまで、クリニックのあらゆる場面で業務を支える可能性を持った道具といえるでしょう。単なる効率化のツールとしてではなく、日々の診察の現場でどのように機能するのか、診察の流れに沿って具体的にイメージしてみてください。
来院前「感染症トリアージの補助」
来院前に患者さんが入力した問診フォームの内容を生成AIが自動で取り込み、流行感染症への感染疑いを判別して医師にアラートを出す、という活用が実用段階に入ってきています。患者さんの優先順位づけを補助する仕組みとして、今後普及が進む可能性があります。
診察前「問診データの整理」
問診票のデータを生成AIに読み込ませると、可能性のある病名を根拠とともにいくつか提示してくれます。診断を下すのはあくまで医師ですが、情報整理の補助として使うことで、見落としを減らしたり診察の効率を上げたりする効果が期待できます。
診察中「カルテ・医療文書の作成」
最も活用が進んでいる領域が、書類仕事の効率化です。問診内容や診察内容を生成AIに入力すると、カルテやレセプト(診療報酬明細)の下書きを作成してくれます。生成AIを搭載したスマートスピーカーに音声で話しかけるだけで文書の草案が仕上がる、という使い方もあります。キーボードに向かう時間が減れば、患者さんとの対話により集中できます。
診察後「患者さんへの説明・翻訳」
外国の方を診察した際に、診察結果を生成AIに入力すれば、その方の言葉でわかりやすい表現に翻訳した説明文を作成できます。難しい医学用語を噛み砕いた患者さん向けの説明文を作るのも、生成AIが得意とするところです。
診察後「服薬指導のフォローアップ」
処方箋の内容を生成AIに入力し、患者さんへの服薬指導メッセージの草案を作成する、という使い方もあります。薬剤師が確認・修正した上で使用することで、質の高いフォローアップが効率的に実現します。
In the case of CLINICS |
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CLINICSでは、こうした活用シーンを安全かつ手軽に実現できる環境を整えています。なかでも「AI要約アシスト」は、診察中の医師と患者さんの会話をリアルタイムで自動文字起こしし、その内容をAIが要約してカルテ記入をサポートします。SOAP形式をはじめ、診療科や症例に合わせたフォーマットで出力でき、テンプレートを事前に作成しておけば柔軟なカスタマイズも思いのままです。カルテ入力にかかる時間を大幅に削減しながら、患者さんとの対話に集中できる、そんな診察室の実現を、電子カルテと一体化した形で支えています。 |
5)よくある質問
生成AIのクリニック活用について、特に多く寄せられる疑問をまとめました。「使っていいとは聞いたけれど、具体的にどこまで大丈夫なのか」という細かな疑問の解消にお役立てください。
Q. 医師がAIでカルテを作成するのは、医師法違反になりますか?
A. 生成AIが作成した下書きをそのまま使うのであれば、医師法違反になる可能性があります。ただし、医師が内容を必ず確認・修正した上で署名・発行するという手順を踏めば、法的な問題は生じません。「AIは下書きを作るアシスタント、最終判断は医師」という運用が大原則です。
Q. クリニックで生成AIを使う際、患者さんの個人情報は守られますか?
A. サービスの選び方によって大きく変わります。入力データが再学習に利用されない設定のサービスを選ぶこと、そして厚生労働省・経済産業省・総務省が定めた3省2ガイドラインに準拠したサービスを使うことが、個人情報を守る上での基本的な条件です。無料の生成AIサービスをそのまま業務に使うことは、安全性の観点から推奨されません。
Q. 生成AIがカルテや文書を誤って作成した場合、誰の責任になりますか?
A. 最終的な責任は、その文書を確認・発行した医師が負います。生成AIはあくまで補助ツールであり、出力内容の正確性を担保するのは医師自身です。だからこそ、AIの出力をノーチェックで使わず、必ず医師が目を通すという運用が不可欠です。
Q. 無料の生成AI(ChatGPTなど)をクリニックの業務に使ってもいいですか?
A. 患者さんの個人情報や医療情報を含む入力は、原則として避けてください。無料プランの多くは入力データが再学習に使われる設定となっており、個人情報保護法上の「第三者提供」に該当するリスクがあります。一般的な医学知識の調べものや、個人情報を含まない文章の参考例を調べるといった用途であれば活用の余地はありますが、診療に直結する業務には医療機関向けに設計されたサービスを使うことを強くお勧めします。
6)まとめ
クリニックで生成AIを使うことは、適切なルールを守れば、十分に可能です。大切なのは「何の業務を効率化したいのか」を具体的に考えること、「安全に使える仕組みが整っているか」を確認すること、そして何より「生成AIの最終判断者は、常に医師自身である」という大原則を忘れないことです。厚生労働省が令和8年度の診療報酬改定でICT、AI、IoT等の利活用推進を基本方針に明記したように、生成AIの活用は国としても前向きに推進されています。「怖いから使わない」より「正しく知って使い始める」ことが、これからの時代のクリニック経営には必要な一歩です。生成AIを活用した診療所の業務効率化について、より詳しく知りたい方には、お役立ち資料として「診療所のための生成AI活用ガイド」をご用意しています。以下よりダウンロードのうえ、自院に合った活用イメージを見つけるきっかけにしていただければ幸いです。

【参考資料】
医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)/非営利法人 医療AIプラットフォーム技術研究組合
令和8年度診療報酬改定について/厚生労働省
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(令和5年5月)/厚生労働省
※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法令・制度は随時改定されますので、最新情報は各省庁の公式サイトや専門家にご確認ください。
執筆監修者
CLINICS事務局
株式会社メドレー
医療現場のDXパートナーとして「医療ヘルスケアの未来をつくる」を理念に、開業を目指す先生や開業医の方々に寄り添う情報を発信しています。お届けするのは、オンライン診療や電子カルテ関連、開業準備を成功へ導くノウハウ、最新の医療制度・法令などさまざま。ITの力で人と医療の現場をつなぎながら、日々の診療やクリニック経営に役立つ知見を丁寧かつ分かりやすくまとめています。ぜひ、理想とするクリニックづくりのヒントとしてご活用ください。