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電子カルテの「乗り換え」「移行」を決めた方への実践ガイド
1.乗り換えのベストなタイミングはいつか
最初の関門が、乗り換えの時期です。結論から言えば、狙い目は現行システムの契約更新を迎える節目、もしくは、患者さんの数が落ち着く閑散期の月初め。この2つが重なる時期であれば理想的です。なぜこのタイミングなのか、ひとつずつ解説します。
契約更新の節目を狙う
オンプレミス型電子カルテからの場合、サーバーのリース契約や保守契約を5年前後で結ぶのが一般的です。契約の途中で解約すると違約金が発生することもあるため、まず手元で確認したいのが現在の契約期間。更新の節目に合わせれば、余計な出費を避けながら新システムへ移れます。サーバー機器の更新や大きなバージョンアップが控えているなら、その費用をかけて延命するより、いっそ入れ替えたほうが結果的に安く済むケースもあります。
月初め・閑散期を狙う
もうひとつは、レセプト請求との兼ね合いです。クラウド型電子カルテへの乗り換えにレセプトコンピューターの入れ替えが伴う場合、月の途中で乗り換えると請求業務に手間がかかります。そのため、新システムの稼働は月初めの1日からが基本となります。準備は月の途中から進められますが、完全な乗り換えは前月末の最終診療後に終えておく。この段取りを踏まえれば、クラウド型電子カルテへの乗り換えは閑散期の月初めに行うのが最善です。
2.費用の相場と使える補助金
乗り換えを決めたら、次に気になるのはやはり費用でしょう。クラウド型電子カルテは院内にサーバーを置く必要がなく、初期費用を大幅に抑えられます。ただ、月々の利用料が継続してかかるため、導入前に5〜7年単位のトータルコストを試算しておくことが大切です。国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)を活用すれば、こうした費用負担を抑えられる可能性があり、従業員300人以下の医療法人やクリニックも対象に含まれます。
デジタル化・AI導入補助金2026 概要 |
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3.乗り換えの手順
クラウド型電子カルテへの乗り換えは、電子カルテメーカー選びから本格稼働まで、おおむね3〜6カ月かかります。引き継ぎの規模やカスタマイズの内容によって前後しますが、契約更新の半年以上前から準備を始めておくと安心です。以下、6カ月の場合を例に流れを解説していきます。
Step 1:電子カルテメーカーを選ぶ(6カ月前〜)
自院の診療科や業務の流れに合った電子カルテを見極めます。機能・操作性・既存システムとの連携・サポート体制を軸に比較し、必ずデモを試してから判断してください。あわせて、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」が示す電子保存の3原則(真正性・見読性・保存性)を満たしているかも確認しておきましょう。メーカーごとの特徴や選び方のポイントは、以下の記事でも詳しくまとめています。
関連記事:【最新版】電子カルテおすすめメーカー12選!主要メーカー比較ポイント付き
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Step 2:引き継ぐデータを整理する(4カ月前〜)
新システムへ移すデータと移さないデータを仕分けします。例えば、優先度が高い患者さんの基本情報・直近の診療記録・処方履歴はキープし、参照頻度の低い情報や重複データは思い切って外しておくと、引き継ぎ作業が軽くなり新システムの動作も安定します。
Step 3:設定とカスタマイズを行う(3カ月前〜)
診療科ごとの入力項目、診断名・処方の選択肢、画面レイアウトなどを自院の業務に合わせて整えます。よく使う処方セットやテンプレートを事前にリストアップしておくと、メーカー担当者との打ち合わせがスムーズに進みます。また、予約システムや検査機器との連携設定もこの段階でまとめて済ませておきましょう。
Step 4:動作確認とスタッフ研修(1カ月前〜)
本番に近い環境で実際に操作してみて、問題点をここで洗い出しておきます。医師・看護師・受付スタッフでは使う機能が異なるため、役割ごとに研修の場を設けるのがおすすめです。「受付→診察→会計」の一連の流れを本番さながらに通してみると、想定外のつまずきが見つかりやすくなります。
Step 5:本格稼働とその後のフォロー(稼働日〜)
月初めから本格稼働に入ります。稼働直後は操作の戸惑いや入力ミスが起きやすい時期です。メーカーのサポート担当に立ち会ってもらうか、院内のフォロー担当をあらかじめ決めておくと安心です。現場の声をその都度記録し、設定の見直しや追加研修につなげていきましょう。
4.乗り換えに関するFAQ
乗り換えを決めてから本格稼働までの間には、さまざまな疑問が出てくるものです。よく寄せられる質問を、ここでまとめてお答えします。
Q1. 乗り換えにはどのくらいの期間がかかりますか?
電子カルテメーカー選びから本格稼働まで、おおむね3〜6カ月が目安です。本記事の「3.乗り換えの手順」で、6カ月の場合を例にステップごとのスケジュールを解説していますので、あわせてご参照ください。
Q2. 過去のカルテデータは引き継げますか?
引き継ぎは可能です。ただし電子カルテはメーカーごとにデータ構造が異なるため、そのままコピーして移すことはできません。一般的な方法は次の3つです。
①旧データを新しい形式に変換して移行する
②旧システムをしばらく残して参照用に使う
③PDFなどの汎用形式で書き出して保管する
どの方法を選ぶかは、データ量・コスト・診療継続性のバランスで変わります。乗り換え先のメーカーに早めに相談しながら方針を決めるのが確実です。なお、医師法により診療録には診療を完結した日から5年間の保存義務があるため、乗り換え後もデータは適切に保管してください。
Q3. 乗り換えに補助金は使えますか?
「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)が活用できる可能性があります。補助率は通常枠で原則1/2以内、補助額は最大450万円が目安です。申請要件・締切は年度ごとに変わるため、検討を始めた段階で最新情報を公式サイトで確認しておくことをおすすめします。
Q4. スタッフ向けの操作研修はしてもらえますか?
多くのクラウド型電子カルテメーカーが対応していますが、有償か無償かはサポート内容によって異なります。研修を希望する場合は、契約前にサポート範囲を確認しておくと安心です。
Q5. 契約期間中に乗り換えると、違約金は発生しますか?
オンプレミス型の電子カルテは、保守契約やリース契約の残存期間中に解約すると、違約金が発生するケースがあります。まず手元の契約書で解約条件と残存期間を確認するのが先決です。違約金が生じる場合も、乗り換え後のランニングコスト削減分と比較した上で判断することが大切です。乗り換えを検討し始めた段階で、現行の電子カルテメーカーに解約条件を確認しておくと、スケジュールが組み立てやすくなります。
Q6. 新旧の電子カルテを併用する期間は、どう運用すればよいですか?
旧システムを参照用にしばらく残す場合は、役割をはっきり分けておくのが基本です。新しい記録はすべて新システムに一本化し、旧システムは過去のデータを見るためだけに使う。両方に書き込んでしまうと、どちらが最新かわからなくなり、現場が混乱します。受付や看護スタッフにも「書き込みは新しい電子カルテ、過去の確認は旧システム」と、あらかじめ共有しておくと安心です。旧システムをいつまで残すかは、参照する頻度と保守費用を見比べながら、乗り換え先のメーカーと相談して決めるとよいでしょう。
5.まとめ
乗り換えと聞くと身構えてしまうものですが、やるべきことを順番に並べてみれば、決して複雑ではありません。契約更新の時期を見極め、費用と補助金に備え、研修とフォローまで手を回す。ひとつずつ片づけていけば、現場を大きく止めることなく移行は可能です。その第一歩として、まずは使用中のカルテの現状を確かめることから始めてみてください。実際の乗り換え作業では、過去データの引き継ぎやスタッフへの研修など、どうしても現場のパワーが不可欠です。「CLINICS」は、そうした負担を少しでも減らせるよう、レセプトデータの引き継ぎや本格稼働までのサポートに力を入れています。もしクラウド型電子カルテメーカー選びで迷うことがあれば、選択肢のひとつとしてご検討いただければ幸いです。

【参考資料】
デジタル化・AI導入補助金2026/中小企業庁
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版/厚生労働省
医師法/e-Gov法令検索
※本記事の内容は2026年6月時点の情報をもとにしています。制度・費用・補助金の要件は変更される場合がありますので、最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
執筆監修者
CLINICS事務局
株式会社メドレー
医療現場のDXパートナーとして「医療ヘルスケアの未来をつくる」を理念に、開業を目指す先生や開業医の方々に寄り添う情報を発信しています。お届けするのは、オンライン診療や電子カルテ関連、開業準備を成功へ導くノウハウ、最新の医療制度・法令などさまざま。ITの力で人と医療の現場をつなぎながら、日々の診療やクリニック経営に役立つ知見を丁寧かつ分かりやすくまとめています。ぜひ、理想とするクリニックづくりのヒントとしてご活用ください。
