Column
精神科はなぜ開業しやすい?開業資金・5つの成功ポイント・集客戦略を解説
精神科を開業するにあたって
はじめに、精神科の開業について資金面から解説します。なぜ精神科が開業しやすい診療科といわれているかについても触れています。
精神科の開業資金
精神科の開業資金は3,000万円〜5,000万円とされています。これは他の診療科と比較すると低い金額です。高額な医療機器を必要としない精神科であることが、理由として挙げられます。開業資金の大まかな内訳は次の通りです。
- 物件関連費用:1,000万円〜2,000万円
- 設備内装工事費用:1,500万円〜2,000万円
- マーケティング費用:500万円前後
- その他(電子カルテや内装家具の費用):500万円前後
開業の際は上記に加えて、運転資金として3カ月〜6カ月分を用意しておくと安心です。
精神科医の平均年収
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」によると、個人医院の精神科(全体)の損益差額は2022年時点で約2,000万円となっています。しかし、2,000万円という年収はあくまで目安です。提供するサービスや集患数により年収は変動するため3,000万円以上を実現できる場合もあります。高い年収を実現するためには、患者に合わせた立地やリピートで通いたくなるサービスが求められます。
精神科は開業しやすい診療科目
ここまで確認してきた通り、精神科の開業資金は他の診療科と比較して低い傾向があります。そのため精神科は開業しやすい診療科目といわれているのです。しかし、開業のハードルが低いからといって開業後の経営を成功させられるとは限りません。精神科を開業する際は、開業前から戦略的な物件選定や内装設計が求められます。
失敗から学ぶ精神科の開業を成功させる5つのポイント
ここからは精神科の開業を成功させる5つのポイントを紹介します。
1.患者さまのプライバシーに配慮した立地を選定
診療科を問わずクリニックを開業する際は立地が重要です。精神科の場合は通院しやすさのみならず、患者のプライバシーを配慮できる立地を選びましょう。精神科の場合「通院している様子を人に見られたくない」と考える患者がいるためです。そのため精神科を開業する際は最寄り駅からのアクセスの良さや駐車場の広さとともに、大通りから1本奥に入った通りなどを選ぶと良いでしょう。また、複数の診療科が入った医療モールでの開業という選択肢もあります。あまりに人通りが多い場所に開業すると、患者が通院しにくさを感じ、経営が失敗に終わる恐れがあります。以下の記事では、クリニックを開業する際の土地選びについて詳しく解説しています。
2.安心感のある内装で通いやすさを実現
精神科の開業を成功させるためには、安心感のある内装を心がけましょう。精神科を訪れる患者のなかには不安を感じている人も多いためです。壁紙や天井、ドア、設備には次のような色がおすすめです。
- 白(明るく、清潔なイメージ)
- オレンジ(明るく、健康的なイメージ)
- 緑(落ち着きのあるイメージ)
さらに防音パネルや仕切りを設置すると、患者が医師と落ち着いて会話できるようになります。医師とじっくり会話できないような内装にしなかった場合、患者のリピート率が低下する恐れがあります。
3.ていねいでコミュニケーション能力に優れたスタッフを採用
精神科を開業する際は、スタッフ選びも重要です。不安を抱えている患者に安心してもらうために、ていねいでコミュニケーション能力に優れたスタッフを採用しましょう。スタッフの患者に対する接遇が不適切だとクリニックの評判が低下します。また患者はリピートで通院しなくなります。このような事態を避けるために候補者と対面で面接を行い、声のトーンや表情、言葉遣いをていねいに見極めていきましょう。ただし、スタッフを採用すると人件費が発生するため、はじめのうちは院長自らスタッフの代わりを務めたり、パートとして採用したりする選択肢もあります。
4.差別化とWebマーケティングで勝ち筋を構築
精神科の開業を成功させるためには、開業後の集患が重要です。集患が不十分だと経営が軌道に乗らず、売上が安定しません。昨今、患者の多くはPCやスマートフォンでクリニックの情報を集めます。開業に対しては、同エリアに同種の精神科があるかどうかを確認し、そのうえで自院を差別化する要素をていねいに検討しましょう。精神科であれば次のような要素で差別化を図ることができます。
- 小児特化
- 女性特化
- スタッフが全員女性
- 近隣の教育施設や小児科・婦人科との連携
- 完全予約制
- オンライン診療の実施
そしてホームページ制作やSEO対策、Web広告の運用、SNS活用を通じて自院をターゲット層に広くアピールします。これらの施策により新規の患者に来院してもらい、診察や接遇を通じてリピートしてもらう状況を構築できると精神科の経営が安定します。集患のための具体的な施策は以下の記事で詳しく紹介しています。
5.近隣の薬局にもプライバシーに配慮した対応を依頼
精神科を運営する際は、近隣の薬局との連携が重要です。特に患者のプライバシーへの配慮には、クリニックと薬局が連携して取り組む必要があります。精神科の患者のなかには、通院の事実や処方薬の内容を他者に知られたくないと考えている人がいます。そのため薬局で次のような対応をしてもらえるように連携を図ると良いでしょう。
- 処方薬を渡す際に番号で呼ぶ
- 処方箋の確認を指差し確認で行う
クリニックで満足のいく診察を受けられても薬局でプライバシーへの配慮のない対応がなされると、患者が他のクリニックを探す恐れがあります。
精神科の経営を安定させるための集客戦略
精神科の経営を安定させるためには、開業時とは別の戦略が求められます。精神科には、他の診療科のように幅広い検査や治療を通じて診療単価を高めることが難しい側面があります。そのため集客戦略をていねいに立案し、新規の患者の来院を促しつつ繰り返し通院してもらえる環境を構築しましょう。
競合調査
診療単価を高めることが難しい精神科では、来院患者数が売上に直結します。そのためていねいな競合調査を実施したうえで、クリニックの立地を選ぶ必要があります。また競合するクリニックの特徴を把握できると、自院をいかに差別化するかの参考になるでしょう。このような競合調査は、開業後に実施する集患戦略にも影響を与えます。
立地をていねいに選定
精神科の経営を安定させるためには集患数が重要です。そして集患数に直接影響を与えるのがクリニックの立地です。前述した競合調査に基づいて、一定の集患が期待できる場所をていねいに選択しましょう。立地選びを誤ると、その後の集患施策にも悪影響が出ます。立地をていねいに選択した後は、次のような施策で集患数の増加を試みます。
- オンライン診療の実施
- 近隣の医療機関から患者の紹介を受ける体制の構築
Webコンテンツの充実・広告戦略
精神科の経営を安定させるためには、新規の患者にいかに来院してもらうかが重要です。特に開業したばかりの頃は、ターゲットとなる患者が、自院の存在を認識していないことがよくあります。そのため次のような施策を実施し、自院の認知を拡大する必要があります。
- SEO対策
- Web広告
- SNS活用
これらの施策は自院のターゲット層に合わせて展開していきます。たとえば、検索エンジンで精神科について調べる人物をターゲットにする場合、SEO対策が効果を発揮しやすいでしょう。反対に、SNSをよく活用する若い世代をターゲットとする場合はSNSによる情報発信が新規患者の来院につながりやすくなります。
専門家への相談、M&Aの利用も検討
適切な集客戦略がどのようなものか分からない場合は、予算と合わせて専門家に相談する選択肢もあります。精神科の支援実績が豊富な開業コンサルタントであれば、自院に合ったさまざまな施策を提案してくれるでしょう。また、M&Aを利用して、事業承継に悩んでいる既存のクリニックの買収を検討することも一つの選択肢です。これにより顧客基盤を引き継ぐことができたり、開業資金を節約して集患施策に割く予算を増やすことができたりします。
まとめ
精神科の開業には3,000万円〜5,000万円の資金が必要であり、開業後の平均年収は約2,000万円です。このように開業資金が少なくて済む精神科は開業しやすい診療科ですが、他の診療科と比較して幅広い検査や治療を通じて診療単価を高めることが難しい側面があります。そのため精神科の開業に際しては、競合調査および立地選び、安心感を与える内装設計、プライバシーに配慮した体制構築、自院に合った集客戦略の立案をていねいに進めましょう。単独で解決できない悩みは開業コンサルタントに相談するのもおすすめです。また、開業を考えているエリアに事業承継を望む既存のクリニックがある場合、M&Aを活用した引き継ぎを検討するという選択肢もあります。自院のターゲットをていねいに定め、患者が長く安心して通院してくれる精神科を目指しましょう。

執筆監修者
CLINICS事務局
株式会社メドレー
医療現場のDXパートナーとして「医療ヘルスケアの未来をつくる」を理念に、開業を目指す先生や開業医の方々に寄り添う情報を発信しています。お届けするのは、オンライン診療や電子カルテ関連、開業準備を成功へ導くノウハウ、最新の医療制度・法令などさまざま。ITの力で人と医療の現場をつなぎながら、日々の診療やクリニック経営に役立つ知見を丁寧かつ分かりやすくまとめています。ぜひ、理想とするクリニックづくりのヒントとしてご活用ください。
