PACSとは?基礎から導入のメリット・メーカーまで詳しく解説
日本の医療情報システムにおいて、放射線情報システム(RIS)と医用画像保存通信システム(PACS)は標準化と相互運用性の取り組みが進んでいます。今回は、PACSに関する基礎知識やクリニックに導入するメリット・おすすめのメーカーまで詳しく解説していくので、導入を検討されている方は参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.PACSとは
- 1.1.PACSで何ができるのか
- 1.2.PACSの種類
- 2.PACSと他システムの違い
- 3.PACS導入で得られるメリット
- 3.1.スムーズな画像確認が可能
- 3.2.医療安全の向上に寄与
- 3.3.情報提供が容易
- 4.PACSを選ぶ際のポイント
- 5.【種類別】PACSメーカー9選
- 5.1.クラウド型PACS7選
- 5.1.1.1.富士フイルムメディカル「C@RNACORE」
- 5.1.2.2.コニカミノルタジャパン「NEOVISTA I-PACS SX」
- 5.1.3.3.キャノンメディカルシステムズ株式会社「RapideyeCore Grande」
- 5.1.4.4.PSP「EV Insite net」
- 5.1.5.5.株式会社ジェイマックシステム「ClimisクラウドPACSサービス」
- 5.1.6.6.株式会社エムネス「LOOKREC」
- 5.1.7.7.株式会社スリーゼット「WATARU」
- 5.2.オンプレミス型2選
- 5.2.1.1.富士フイルムメディカル株式会社「SYNAPSE EX」
- 5.2.2.2.株式会社スリーゼット「Caps-Web」
- 6.まとめ
PACSとは
PACS(パックス)とは「Picture Archiving and Communication System」の略称であり「医療用画像管理システム」または「医療画像保管伝送システム」を指します。医療分野における画像情報の管理・保管・伝送を効率的に行うために設計されたシステムで、画像のデジタル化やネットワーク化に大きく貢献しています。
PACSで何ができるのか
PACSでは、X線、CT、MRIなどの医用画像をデジタルデータとして取り込み、専用のシステムで管理や保存が可能です。
導入すると、医療機関内での画像の共有やアクセスがスムーズになるほか、適切なタイミングでの診断や治療に役立ちます。PACSは近年の医療情報システムのなかでも特に進化が著しく、放射線科をはじめ、診療現場での診断や治療などに重要な役割を果たしています。
PACSの種類
PACSには、クラウド型とオンプレミス型の2種類があります。クラウド型PACSは、画像データをクラウド上に保存し管理する一方、オンプレミス型PACSは、院内のサーバーに画像データを保存します。
今後、画像のデジタル化やネットワーク化がさらに進みデータ容量の増加が見込まれるため、クラウド型のPACSがトレンドとなり、広く利用されることが予想されます。
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PACSと他システムの違い
PACSと他システムには具体的にどのような違いがあるのか、順を追って解説します。
RISとの違い
RIS(Radiology Information System)は、放射線科における患者の予約状況を管理し、患者ごとの検査情報を確認するためのシステムです。
PACSは撮影した画像データの活用や保管を可能にするシステムです。院内のシステム環境の分け方としては、RISで画像に関連する情報を管理し、PACSで画像情報を管理するイメージだと整理しやすいでしょう。
HISとの違い
HIS(Hospital Information System)は、病院全体の情報を扱うシステムであり、電子カルテやレセコンなどが含まれます。
一方、PACSは画像データの活用と保管に特化したシステムであり、HISやRISとの連携も可能です。
PACSの導入にあたって、HISとの連携は重要なポイントになるため、全体を俯瞰した評価が求められます。
フィルムとの違い
PACS(医療画像システム)とフィルムによる画像診断を比較すると、以下6つの違いが挙げられます。
- 焼付け作業が不要
- 立体画像の合成が可能
- 容易に複写できるため作業時間が短縮
- 過去画像の検索・閲覧が簡単かつ迅速
- 保管場所の省スペース化と保管費用の削減が可能
- パソコンによる管理でファイリングや運搬の手間を大幅に軽減
PACS導入で得られるメリット
PACS導入で得られるメリットを3つピックアップして解説します。今後PACSの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
スムーズな画像確認が可能
PACSは、検査画像の管理・運用がデータになるため、従来のフィルムより安全です。また、スピーディーかつ高画質な閲覧も可能です。
画像データの転送が迅速になれば診断や診察の待ち時間が短縮され、業務の効率化が期待できます。ほかにも、フィルム保管スペースを削減できたり、画像媒体を搬送するための煩雑な業務を効率化できたりするメリットもあります。
また、検索機能によって過去画像との比較も容易です。画面上で拡大や縮小、階調処理などさまざまな処理や表示条件の変更ができるため、これまでのフィルムよりも、多くの有用な画像情報を引き出せます。
医療安全の向上に寄与
物理的なフィルムで画像を管理する場合、フィルムの取り違えや紛失が発生するリスクがあります。しかし、PACSでは画像を患者IDと紐づけてデータとして保管するため、無用な人的ミスが回避できます。
患者の取り違え防止は医療安全の基本ではありますが、向上の取り組みとして患者からの信頼感も高まるでしょう。
情報提供が容易
PACSの画像データはデジタル情報のため、容易に他病院への送付が可能です。また、必要に応じてCDやDVDなどの外部媒体にコピーして持ち運びもできるため、在宅医療で患者宅に行く際でも、その場で閲覧できます。
フィルム保管と比べて画質劣化もないため、常に鮮明な診断画像の提供が可能です。
PACSを選ぶ際のポイント
PACSを選ぶ際には、以下の4点を重視しましょう。
- クラウド型かオンプレミス型か
- セキュリティ面
- 保守やサポート体制
- 価格
PACSにはクラウド型とオンプレミス型があります。最近ではクラウド型がトレンドですが、それぞれ異なるメリットとデメリットがあるため、どちらが自院に合っているかを考慮して選択する必要があります。
また、重要な診療情報のため、システムの安全性や画像データの保護も重要です。BCP(事業継続計画)の観点でセキュリティ対策を講じているPACSを選びましょう。不測の事態が起こっても信頼できる保守・サポート体制として、たとえば24時間365日対応可能なサポートセンターがあるか、バックアップ体制は取られているかなどの確認は必須です。
最後に、価格は初期費用だけでなく、ランニングコストを含めて比較・検討しましょう。クラウド型は比較的低コストで導入が可能であり、オンプレミス型でも製品によっては低コストで導入ができます。自院が求める条件を整理して、最適なPACSを選びましょう。
【種類別】PACSメーカー9選
ここからは、PACSのおすすめメーカーをクラウド型とオンプレミス型にわけて、合計9社紹介します。具体的なメーカー選定時の参考としてご覧ください。
クラウド型PACS7選
まずは、クラウド型PACSを7社ピックアップして解説していきます。
1.富士フイルムメディカル「C@RNACORE」
参考:富士画像診断ワークステーション C@RNACORE | 富士フイルム
富士フイルムが提供するPACSシステムのなかでも「C@RNACORE」は、高度な画像処理技術と使いやすさが特徴です。的確な描写により、診たい部位を明瞭に表示します。シンプルで使いやすく、電子カルテとの連携も可能で、クリニックに最適です。
さらに、検査データ以外の情報も一画面で表示が可能なため、患者の状況把握が容易です。また、骨塩測定機能も搭載されており、骨粗しょう症のスクリーニング検査にも役立ちます。
セキュリティ面でもインターネット回線の安全性を確保し、アンチウイルスソフトも導入されており安心して利用できます。
2.コニカミノルタジャパン「NEOVISTA I-PACS SX」
参考:NEOVISTA M-RIS | コニカミノルタ (konicaminolta.jp)
コニカミノルタジャパンは、高度な画像診断技術とネットワークを活かした診断情報の活用が特徴のメーカーです。
具体的には「Bone Suppression処理」「経時差分処理」「自動心胸郭比算出機能」など、多彩な機能を備えています。NEOVISTA I-PACS SXでは、ボタン一つで過去の画像を展開し、同一部位の検査比較が可能です。
また、各種読影用機能が組み合わさり、快適な読影環境を提供します。大規模病院からクリニックまで幅広い施設への導入に対応しており、24時間365日のサポートの万全な体制が整っています。
3.キャノンメディカルシステムズ株式会社「RapideyeCore Grande」
参考:医用画像情報システム RapideyeCore | 画像ソリューション | キヤノンメディカルシステムズ
キャノンメディカルシステムズの「RapideyeCore Grande」は、複数の施設を連携させ、離れた病院でもシームレスな画像連携を実現できる機能を有しています。また、患者IDが異なっても、名寄せ機能によって同一患者として識別が可能です。
RapideyeCore Grandeの特徴は、専用のワークステーションが不要でありながら、画像処理・解析アプリケーションを使用できる点です。どこからでもアクセスできるエリアフリー環境を提供し、高速な画像処理技術PREXUS Technologyを搭載しています。
4.PSP「EV Insite net」
PSP株式会社は、2022年4月に株式会社NOBORIと合併し、より利便性の高い医療サービスを提供しているメーカーです。EV Insite netは、院内の複数部門の画像管理を可能にした医用画像診断支援システムです。放射線画像はもちろん、超音波画像や内視鏡画像の保存にも対応しています。
また、承諾書やデジタルカメラで撮影したJPEG画像なども、DISCOM画像に変換したうえでの取り込みも可能です。
大規模病院からクリニックまで幅広い施設の導入に対応しており、専門のエンジニアがサポートしてくれるためどのような規模の導入でも安心です。
5.株式会社ジェイマックシステム「ClimisクラウドPACSサービス」
参考:新規開業医向けクラウド型PACS | ジェイマックシステム
ジェイマックシステムは、医療現場での経験を積んだスタッフや最先端のITスキルを持つスタッフが中心となり、未来の理想的な医療システムの提供を目指して創られた会社です。「Climis クラウドPACSサービス」は、初期費用を抑え、定額制の月額料金で利用できます。
クリニック向けに提供されており、トータルサポートサービス契約により、迅速な対処が可能です。月額費用の変動なくデータ容量が無制限なため、圧倒的なコスト削減を図れるのはクリニックにとって大きなメリットになるでしょう。
6.株式会社エムネス「LOOKREC」
LOOKRECは、従来のPACSとは異なり、クラウドを利用してDICOMデータを自由に共有できるため、診療に必要な質の高いサポートを提供しています。
LOOKRECのソリューションは、現役医師とIT専門家が共同開発した医療情報管理共有システムです。クリニックでの検査画像の保管から始まり、読影業務の効率化、アナログ業務や人的ミスの軽減、勉強会や共同研究の手軽な実施まで、幅広い課題を解決できます。
LOOKRECは、クラウド環境でも高いレスポンスと表示速度が特徴です。専任のサポートチームが導入後もフルサポートしてくれるため、安心して利用できます。
7.株式会社スリーゼット「WATARU」
参考:クリニック向けクラウド型PACS WATARU | 株式会社スリーゼット
スリーゼットが提供している製品は、医療現場のIT化推進に尽力し、現在では2000施設でスリーゼットのシステムが活用されています。なかでも「WATARU」は、クリニック向けに特化したPACSで、コンパクトなボディに高性能なシステムが凝縮されています。
電子カルテとのスムーズな連携はもちろん、マンモグラフィをはじめとする複数のモダリティとも連携が可能です。
WATARUは、月額制のレンタルで初期費用が不要なほか、サーバーの設置スペースも要りません。クラウドにもかかわらず、高速な閲覧スピードを実現している点も大きな魅力です。
オンプレミス型2選
続いては、オンプレミス型のメーカーを2社ピックアップして解説していきます。
1.富士フイルムメディカル株式会社「SYNAPSE EX」
参考:中・小規模画像ネットワークSYNAPSE EX|富士フイルムメディカル株式会社
富士フイルムメディカル株式会社の「SYNAPSE EX」は、中・小規模の病院向けに最先端の医用画像情報システムを提供しています。当システムは、SYNAPSE Enterprise-PACSの先進技術を継承しつつ、システム構成を簡略化し、中・小規模の病院でも容易に導入できるようになっています。
また、病院の発展に合わせて柔軟にシステムを拡張でき、多くのモダリティとの接続を標準でサポートしている点も魅力です。将来的にSYNAPSE Enterprise-PACSにアップグレードする際も、蓄積されたデータはそのまま利用できます。
2.株式会社スリーゼット「Caps-Web」
参考URL:オンプレミス型PACS Caps-Web | 株式会社スリーゼット
株式会社スリーゼットのCaps-Webは、Webベースの多機能PACSで、施設の形態や検査機器の種類を問わず、柔軟なシステム構築が可能です。
操作性や画面構成は使用者に合わせてカスタマイズでき、スムーズな導入が実現できます。他システムとのシームレスな連携が可能で、オーダリングシステム、電子カルテ、健診システムなどとの統合により、院内の業務が効率化されます。
また、スタンドアローン運用にも対応し、低コストでの導入が可能です。Caps-Webの特徴は、クリニック内のあらゆる画像をDISCOM化できることであり、診療時間の短縮や患者満足度の向上に寄与します。また、大量の画像をタイムラグなくスピーディーに表示します。
まとめ
次世代の医療環境に向けて、PACSの導入は重要です。導入の際には「クラウド型かどうか」や「クリニックでの運用の適応性」「他システムとの連携の可能性」などを検討したうえで、選定を進める必要があります。
また、機能性や操作性のほかに価格面の比較検討も外せない項目です。業務の効率化や医療の質の向上を図れる最適なPACSシステムを選定しましょう。