クリニック開業の流れを徹底解説!失敗しないためのポイントを紹介します
クリニックを開業するためには、さまざまな準備や手続きが必要であり、どこから始めればいいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、クリニック開業の流れを徹底解説します。将来の選択肢を広げるための一助として、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.クリニック開業までの流れ
- 1.1.コンセプトの決定
- 1.2.開業スケジュールの決定
- 1.3.事業計画の策定
- 1.4.開業地の選定
- 1.5.資金調達
- 1.6.物件の選定
- 1.7.医療機器の選定
- 1.8.求人・採用の実施
- 1.9.集患対策の実施
- 1.10.税理士の選定
- 1.11.行政への手続き
- 2.クリニック開業のスケジュール
- 3.クリニック開業を失敗させないためのポイント
- 3.1.開業する土地の医療機関をリサーチする
- 3.2.コンセプトに基づいたターゲットを設定する
- 3.3.経営理念に基づいた立地を選定する
- 3.4.医療機器は必要最低限に止める
- 4.クリニック開業に関するよくある質問
- 5.まとめ
クリニック開業までの流れ
一般的に、クリニック開業は以下の流れで進めていきます。一つずつ内容を確認していきましょう。下記の順番はあくまで目安であり、同時並行で進んだり、順番が入れ変わったりするものもあります。
- コンセプトの決定
- 開業スケジュールの決定
- 事業計画の策定
- 開業地の選定
- 資金調達
- 物件の選定
- 医療機器の選定
- 求人・採用の実施
- 集患対策の実施
- 税理士の選定
- 行政への手続き
コンセプトの決定
開業を成功させるための最も重要なポイントが、コンセプトです。クリニックの雰囲気やサービスなどの方向性が決まり、患者をはじめ、スタッフや地域に対して、どのような診療を提供するのかを明確に伝えられます。
コンセプトを明確にするには、5W1Hの考え方が助けになります。
- 誰のために(Who)
- どのような(What)
- どのように(How)
- いつ(When)
- どこで(Where)
- なぜ(Why)
特に、開業に至った理由となる「経営理念」と、開業後の方向性を示す「方針」が大切です。自分の考えに基づいたコンセプトの構築が、クリニック開業を成功させる鍵となります。
開業スケジュールの決定
開業時期は、事業の成功に大きく影響します。なぜなら、タイミングによって集患に与える影響が大きく変わるためです。例えば、耳鼻咽喉科なら、花粉症シーズンの前後では、患者数に差が生じるでしょう。
美容皮膚科なら、新しい年や春になる前に開業したほうが、新しい自分を求める患者が多く来てくれる可能性も考えられます。診療科の特徴と季節の関係を考えて、開業する時期を決めるとスムーズな集患に寄与するでしょう。
事業計画の策定
事業計画の策定では、まず、開業する理由をはっきりさせましょう。例えば「地域の患者と深く関係をもちたい」「自分の専門性を発揮したい」「収入を上げたい」など、さまざまな理由が挙げられます。
開業する理由を明確にすると、開業後も目標を見失わずに進められます。実際の計画書には、以下の項目が必要です。
- 想定される来院患者数
- 見込まれる将来性
- 平均の売り上げ(患者の単価、検査や薬剤などの原価)
- 固定費(家賃、設備、リースなど)
- 変動人件費(自身、スタッフの分)
そして、最終的にどのタイミングで利益を出せるのか、具体的に計画できているかが重要です。目標に向かって進むための目印であり、また融資を受ける際にも信用を得るための材料となります。
できるだけ負担なく事業計画を立てられるように、事業計画書のテンプレートを用意しています。こちらからダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
開業地の選定
開業地の選定は、自分の診療科とターゲット層に合わせて決めましょう。例えば都心では、母数となる患者数が多いため収入が高くなる可能性はありますが、ほかのクリニックとの競合が激しく、差別化が難しいかもしれません。
反対に郊外では、患者数が少なくて収入が低くなる可能性がありますが、競合が少ない分、地域に深く貢献できるかもしれません。開業予定地の状況を調査し、どのような医療が必要とされているかを考えましょう。
資金調達
クリニック開業には資金が必要です。ほとんどのケースでは、自己資金に加えて外部から融資を受けます。なお、資金調達において、自己資金の目安は開業資金と運転資金の2割です。
具体的な融資元には、日本政策金融公庫や福祉医療機構などの公的機関のほかに、民間の金融機関やリース会社などもあります。それぞれの条件や融資額を確認して、自分に合った方法を選びましょう。
資金を調達するには、後述する物件が決定している必要があります。資金調達と物件選定は同時並行で行いましょう。
開業予定の1年前までに資金調達を始めると、その後の流れがスムーズです。資金調達の詳細について、以下のリンクで解説しているため、ぜひご覧ください。
物件の選定
物件選定は資金調達後の重要なステップです。購入と賃貸があり、購入は戸建てが一般的ですが、土地代も考慮する必要があります。賃貸は初期費用を抑えられ、戸建て、ビルテナント、医療モールなど、選択肢が豊富です。
自分のやりたい診療に合っているか、予算はどれくらいかなどを調査し、最も適していると判断できる物件を選びましょう。なお、専門の不動産会社や開業コンサルタントに依頼すると、条件に合った物件を効率よくみつけられ、入居に関するトラブル回避にも役立ちます。
医療機器の選定
物件が決まれば、診療に必要な医療機器の選定に移ります。物件の広さや内装に合わせて、必要な機器の種類や数を決めていきますが、最初は必要なものだけにしましょう。
CTやMRIなどは高価ですが、ほかの病院・クリニックと連携すればコストを抑えられるかもしれません。機器のグレードや値段はメーカーによってさまざまです。予算内で最適な機器を選ぶために、複数の見積もりを取ったり、専門家や知人の医師に相談したりしましょう。
なお、基幹システムである電子カルテは、開業後の診療効率や情報管理に重要です。そのため、開業準備段階での導入をおすすめします。
求人・採用の実施
開業初期は忙しいため、経験豊富なスタッフの採用が重要です。具体的には、開業2〜3か月前から募集をスタートし、看護師は数名、受付事務は2名程度の規模が一般的です。募集時には、クリニックの経営理念や診療コンセプトに共感する人を選ぶよう心掛けましょう。
なお、看護師は経験豊富な方、受付事務はレセプト業務や診療報酬に詳しい方が有力候補となります。採用時には採点表を準備して客観的に評価すると、軸をぶらさずに採用が進められるでしょう。
集患対策の実施
新規開業では、集患のためのPRが必要不可欠です。遅くとも開業2〜3か月前からアクションを起こしたほうがよいでしょう。
現代ではインターネットが主な情報源となっているため、クリニックのホームページ作成は重要です。ホームページ制作を自分で進める方法もありますが、負担を分散させるためにも、制作は専門の制作会社に依頼したほうがクオリティの高いホームページがスピーディに出来上がります。
また、多くの方がスマートフォンで情報を閲覧するため、ホームページはスマートフォンの表示サイズに対応させる必要があります。なお、集患のための情報発信は「医療広告ガイドライン」にしたがって作成しましょう。
インターネット以外の方法として、近隣住民へのチラシ配布や新聞折り込み広告も効果的です。
税理士の選定
クリニックを開くときには、信頼できる税理士選びが大切です。税理士は、税金の申告や節税についてアドバイスしてくれます。しかし、医療業界に長けていない税理士も多いため、選定には注意が必要です。
医療に詳しい税理士を選ぶには、次の点を確認しましょう。
- 医療業界にどれくらい詳しいか
- どれくらいの医療機関を顧問先にしているか
- 医療法人の設立や移行に関する知識や経験があるか
医療に詳しい税理士であれば、診療科目や医療法人に関する留意点も把握しています。また、税務調査に対応できる点もメリットです。
税理士の選定について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
行政への手続き
開業の手続きは複雑で多岐にわたります。
保健所と消防署に事前相談
- 防火管理責任者の確定
- 地域の医師会への挨拶と加入申請の検討
- 「診療所開設届」を提出
- 「社会保険医療機関指定」を申請
上記の手続きは、開業コンサルタントのサポートを受けると、スムーズに行えます。
クリニック開業のスケジュール
クリニックを開業するには多くの準備が必要であり、少なくとも1年半から2年はかかります。しかし、開業の形態によっては、もっと早く開業できる場合もあるでしょう。
開業の目的や条件に合わせて、柔軟にスケジュール調整できるゆとりが重要です。例えば新規で開業する場合と、クリニックを引き継ぐ場合では、準備の際にかかる手間が違います。
また、自分の土地や建物で開業するのか、それともレンタルスペースを利用するのかによっても必要な準備期間は異なります。
開業スケジュールについてより詳しい内容は、こちらをご覧ください。
クリニック開業を失敗させないためのポイント
クリニック開業を失敗させないためのポイントを、わかりやすく説明します。
開業する土地の医療機関をリサーチする
クリニックを開く前に、診療圏の競合を調査をしましょう。具体的には、どんな病院やクリニックがあるか、診療科や不足している医療サービスなどを調べます。
自分のクリニックと同じ診療科のクリニックがたくさんあると患者が分散し、思ったような集患ができない可能性があります。反対に数の診療科の場合、患者が集まりやすいかもしれませんが、母数が少ない可能性も否定できません。
医療機関の調査だけではなく、診療圏の視点で開業場所を決めると、成功への道筋が立てやすいでしょう。
コンセプトに基づいたターゲットを設定する
クリニックを開業する際は、自院の特徴や開業の目的の明確化が大切です。例えば、子どもが多い地域だと小児科や産婦人科の需要は高い傾向にあります。
また、自分がどんな治療をしたいか、どんな機器が必要かも重要です。
コンセプトに基づいてターゲットを設定し、無駄な出費をおさえると、開業はスムーズに進められます。
経営理念に基づいた立地を選定する
どんなクリニックにしたいかをはっきりさせたうえで、立地を選定すると成功につながります。例えば、地域密着を目指すなら駅やバス停の近くなど、アクセスしやすい場所がおすすめです。
そのほか、近くに競合となるクリニックがあるかどうかや、交通状況のチェックなど、実際にその場所に訪れ、自分のクリニックがうまくいくかを具体的にイメージすることも大切です。
医療機器は必要最低限に止める
医療機器はクリニックにとって大切なものですが、費用がかかります。そのため、開業する際は、必要なものだけにしましょう。
多くの医療機器を購入しても、使わないものがあるかもしれません。使わない医療機器は、管理や修理にも費用がかかります。
開業したばかりのクリニックは、コストの節約が大切です。
クリニック開業に関するよくある質問
クリニックを開業する際に、よくある質問を3つ紹介します。
開業するのにどれくらいの費用が必要?
クリニックや病院を開業する際には、以下の費用が必要となります。
- 内装費
- 物件の初期費用
- 医療機器の導入費
- ランニングコスト
具体的には、内装費は20〜100万円、医療機器の導入費は400〜4,500万円が必要です。
ただし、返済や税金についても考慮しなければなりません。そのため、無駄なお金を使わないように、専門家へ相談しながら進める方法も選択肢に入れておくとよいでしょう。
理想的な人材が集まる求人はどうすればいい?
求める人材を集めるためには、以下のような点を考慮しましょう。
- 広告: 求人情報を多くの方に見てもらうために、いろんな求人サイトに掲載する
- 面接: 面接だけでなく、筆記試験や性格テストを使って、人の能力や性格を確認する
- 教育: 新しく入ったスタッフには、きちんと教育して、仕事を覚えてもらう
- 評価: スタッフの頑張りはきちんと評価する制度を作る
集めるだけではなく、採用した後の給料制度や福利厚生の見直しも、人材を集めるうえでは必要です。
開業にコンサルタントは依頼したほうがいい?
自身が得意ではない分野や、未経験の分野については、開業コンサルタントのサポートは有効です。例えば、銀行とのやりとりや不動産の選定、事業計画など、勤務医の時には経験しない分野は数多くあります。
なお、自社の利益を最優先にするコンサルタントは一部存在します。自分の目標や夢を理解してくれるコンサルタントを選ぶポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
まとめ
クリニック開業は、コンセプトの決定から行政への手続きまで、多くのステップが必要です。開業スケジュールの作成から始まり、事業計画の策定や資金調達、物件選定など準備内容は数多くあります。
また、開業を成功させるためには、人材の選定や集患対策、税理士の選定なども重要です。コンセプトに基づいたターゲットを設定し、経営理念に基づいた立地を選定し、理想とする開業を実現させましょう。