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電子カルテの保存期間は5年でいいの?知っておきたい「データの残し方」を解説

電子カルテの保存期間は5年でいいの?知っておきたい「データの残し方」を解説

執筆監修者:CLINICS事務局

電子カルテ・レセコン

「カルテの保存は、法律通り5年で十分である」。これまで多くの医療現場で共通認識とされてきたこの考え方が、今、大きな転換期を迎えています。医師法や療担規則によって定められた5年という保存義務。そのルール自体に変わりはありません。しかし、医療DXの社会実装が加速している2026年現在、カルテの役割は劇的に変化しました。もはや単なる「過去の記録」ではなく、クリニックの信頼を支え、未来の医療へと繋ぐ「重要な資産」へと進化を遂げています。デジタル化が避けられない流れのなかで、これまで積み上げてきた診療の蓄積をどのように守り、活用していくべきなのでしょうか。本記事では、法的根拠である5年の真意を改めて紐解き、訴訟リスクの回避や将来的な健康管理を見据えた「これからのデータの残し方」について、詳しく解説します。

1)カルテ保存の原則は「完結の日から5年」

カルテの法定保存期間は「診療が完結した日から5年間」です。 病院で発生する診療記録の保管は、単なる事務作業ではなく、医療機関としての法的責務です。まず、遵守すべき法律の定義を解説します。

診療記録の保存に関する法的根拠

医師法 第24条第2項

診療録(カルテ)は5年間保存しなければならない(違反した場合は50万円以下の罰金)

療担規則 第9条

保険医療機関は、患者の診療録をその完結の日から5年間保存しなければならない

医師法が「5年間保存する」という大原則を定める一方、療養担当規則(以下、療担規則)がその起算点を「完結の日から」と補う形で、実務上の指針を与えています。療担規則には医師法のような直接的な罰則こそありませんが、保険医療機関として診療を行う以上、必ず守らなければならない義務です。ここで多くの方が陥りやすいのが、「10年前の記録なら、もう5年以上経っているから破棄してもいいだろう」という誤解です。20年前から慢性疾患で通院しているSさんを例に、詳しく見ていきます。

【20年前から慢性疾患で通院しているSさんの場合】

例えば、2026年2月15日にSさんが来院されたとします。この時、20年前の初診時の記録であっても、保存期間のカウントダウンはまだ始まっていません。なぜなら、この日に診察が行われた以上、Sさんの診療はまだ「完結」していないからです。仮に、Sさんが2026年3月2日の診察を最後に遠方へ引越し、通院が終了(完結)したとします。この「2026年3月2日」が起算点となり、ここから初めて5年のタイマーが動き出します。つまり、20年前の初診時からのすべての記録を破棄できるようになるのは、さらに5年後の2031年3月1日が過ぎてから、ということになります。

完結とは、このように疾患が完治したとき、あるいは他院への紹介、患者さんの死亡、もしくは通院が完全に途絶えたときなどを指します。慢性疾患で数十年通院されている患者さんの場合、初診時から現在に至るまでの全ての記録は、いわば一冊の長い物語のようなものです。その物語の最終ページ(完結日)が閉じられない限り、途中の数ページ(過去の記録)だけを切り取って捨てることはできません。つまり、「通院が続いている限り、過去の全記録をひとまとめに守り抜く必要がある」。これが、5年という数字の裏に隠された実務上の真のルールなのです。

2)5年で破棄して大丈夫?長期保存を検討すべき背景

たとえ法律上の5年が経過したとしても、安易にカルテを破棄することには慎重であるべきです。 2026年現在の医療現場において、多くのクリニックが義務を超えた長期保存、あるいは永久保存に近い運用を選択しています。そこには、医師と患者さんの双方を守るための極めて現実的な理由が大きくわけて2つあります。

⒈ 医療訴訟のリスク管理

損害賠償請求権の時効は、2020年の民法改正により、以下の通り定められました。

不法行為による
損害賠償権

事実を知った時から5年、または行為の時から20年

債務不履行による
損害賠償権

権利行使できると知った時から5年、または行使できる時から10年

もし診療から10年以上が経過した後に医療過誤を問われる事態になった際、カルテを破棄していれば、医師は自らの正当性を証明する唯一の証拠を失っていることになります。日本医師会も、こうした不測の事態から医師自身を守るため、可能な限りの長期保存(永久保存)を推奨しています。

⒉ 医療DXによる価値の転換

現在、国が進める「医療DX令和ビジョン2030」により、情報の価値は劇的に変わりました。過去の経過を正確に参照できることは、現在の診療の質を高めるだけでなく、患者さん自身がスマートフォンなどを通じて自分の病歴や検査結果を確認し、将来的な健康管理に役立てる仕組みの基盤となります。もはやカルテは、自院の棚に眠らせておく記録ではなく、患者さんの未来を支え続けるための、決して欠かすことのできない「生きた資産」なのです。

3)電子保存の三原則と保存方法の進化

カルテを電子データとして適切に保存するには、厚生労働省のガイドラインが定める「電子保存の三原則」を遵守することが不可欠です。

電子保存の三原則

真正性

責任の所在を明確にし、改ざんやなりすましを防ぐこと

保存性

法定期間中、消失させず、いつでも復元可能な状態で維持すること

見読性

必要な情報を速やかに、整然とした形式で表示・印刷できること

この三原則は、厚生労働省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(令和5年5月)」において明確に示されており、電子カルテを運用するすべての医療機関が遵守する必要があります。

電子カルテ導入時の保存方法と注意点

長年「紙カルテ」を運用してきたクリニックが電子化へ移行する際、過去の記録をどう扱うべきか。代表的な手法は以下の通りですが、2026年現在、これら全てを一度に行う必要はありません。「来院予約が入った患者さんの分だけ、前日にスキャンしておく」「新患から順次完全デジタル化する」といった段階的な移行を選択することで、日々の診療を止めずに、無理なく「紙のない診察室」へ近づけることができます。

⒈ スキャンして集約 紙カルテをPDF化し、電子カルテの患者情報へ紐付け保存する方法。診察室で即座に参照でき、保管スペースも削減できます。原本性担保に電子署名やタイムスタンプの付与が必要です。

⒉ 外部倉庫への委託 電子カルテ導入以降の記録はデジタルで行い、過去の紙カルテは専門業者に預ける方法。スキャン等の人件費を抑えられますが、急な参照が必要な際、取り寄せに時間とコストを要します。

⒊ ハイブリッド運用 直近数年分のみをスキャンし、残りは紙で残す方法。コストは抑えられますが、1章で述べた通り診療が「完結」するまではセットで守る必要があるため、情報の紛失や管理漏れに注意が必要です。

4)閉院した場合のカルテ保管はどうなる?

閉院・承継する場合も、保存義務がなくなるわけではありません。 保管義務の所在は、以下の3つのパターンに分かれます。

事業を承継する場合

カルテも引き継がれ、保管義務は承継先の管理者に移ります

承継せず閉院する場合

閉院した医療機関の管理者が、引き続き5年間保管する責任を負います

管理者が死亡した場合

遺族に保管義務は継承されませんが、損害賠償請求などの支払い義務は継承されます。万が一の証拠として、公的機関や外部倉庫への保管が推奨されます

たとえ閉院しても、過去の医療行為の正当性を証明する手段はカルテだけです。処方箋や手術記録、レントゲンフィルムといった診療諸記録(保存期間3年)なども含め、法定期間を過ぎても可能な限り破棄せず、安全な場所に保管しておくことが、医師とその家族を守る最後のリスクヘッジとなります。

5)電子カルテの保存期間に関するよくある質問

頭では理解していても、いざ実務で判断を迫られると迷うことがあるのではないでしょうか。電子カルテの保存期間に関するFAQに、ひとつずつ丁寧にお答えします。

Q1. 電子カルテの保存期間は何年ですか?

電子カルテの保存期間は、紙カルテと同じく5年間です(医師法第24条第2項・療担規則第9条)。ただし、これは法的な最低ラインであり、医療訴訟の時効(最長20年)を考慮すると、日本医師会は永久保存を推奨しています。

Q2. カルテの「完結の日」とはいつのことですか?

「完結の日」とは、一連の診療が終了した日のことです。疾患が完治したとき、他院への紹介、患者さんの死亡、あるいは通院が完全に途絶えたときなどが該当します。慢性疾患で通院が続いている場合、最後の来院日が起算点となるため、初診から何十年経っていても、通院中はすべての記録を保存し続ける必要があります。

Q3. 保存期間の5年が過ぎたら破棄してもいいですか?

法律上は破棄可能ですが、慎重な判断が求められます。2020年の民法改正により、医療過誤による損害賠償請求権の時効は最長20年となりました。カルテを破棄した後に訴訟が起きた場合、医師側が自らの正当性を証明できなくなるリスクがあります。できる限り長期、あるいは永久保存に近い運用が望ましいといえます。

Q4. 閉院した場合、カルテの保管義務はどうなりますか?

閉院後も保管義務は継続します。事業を承継した場合は承継先の管理者が義務を引き継ぎます。承継なく閉院した場合は、閉院した医療機関の管理者が引き続き5年間の保管責任を負います。管理者が亡くなった場合、保管義務は遺族には継承されませんが、損害賠償請求の支払い義務は継承される点に注意が必要です。

Q5. 紙カルテを電子化した後、原本は廃棄してもいいですか?

適切に電子化(真正性・見読性・保存性の三原則を満たした状態でのスキャン・保存)が完了していれば、法律上は原本を廃棄することが可能です。ただし、廃棄の際は患者さんの個人情報を含むため、専門の機密文書処理業者への委託など、情報漏えいのないよう慎重に対応する必要があります。なお、移行直後は過去の経過を参照する機会も多いため、実務上は一定期間の並行保管が安心です。

6)まとめ

これからの経営に求められるデータのあり方
カルテ保存における「5年」という数字は、あくまで法的な最低ラインであり、実務上は「スタートライン」に過ぎません。慢性疾患の診療が続く限り保存期間のカウントダウンは始まらず、たとえ診療が完結しても、2020年の民法改正による20年の時効リスクが控えています。さらに医療DXの加速により、カルテは「保管する義務があるもの」から「活用して患者さんを守るための資産」へと、その価値を180度転換させました。これからの時代、クリニック経営に求められるのは「いかに捨てるか」ではなく、「いかに安全に、かつ効率よく永久保存に近い運用を実現するか」です。「5年で捨てていいのか」という不安を抱え続けるのではなく、一生涯、患者さんのパートナーとして伴走し続けるために。適切なデータの残し方を「選ぶこと」こそが、何より大切なのかもしれません。

「CLINICS」は、その重責を担う方々のためのプラットフォームです。世界最高水準のクラウド基盤により、20年、30年といった長期間のデータ保持を物理的な制約なく論理的に可能にします。さらに、最新のガイドラインや医療DX施策にも自動で対応し続けるため、常に最新の基準で情報の安全性を守り抜けるのが強みです。万が一の災害時でもデータが失われない強固なBCP対策も備えており、大切な診療録を未来へ繋ぐための最適な環境を提供します。

【参考資料】
医師法(昭和二十三年法律第二百一号)/e-Gov 法令検索
保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)/e-Gov 法令検索
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(令和5年5月)/厚生労働省
医師の職業倫理指針 第3版/日本医師会
※本記事は公開時点の法令・ガイドラインに基づいて作成していますが、実務上の最終的な確認や最新情報の把握については、以下の参考資料等をご参照ください。

執筆監修者

CLINICS事務局

株式会社メドレー

医療現場のDXパートナーとして「医療ヘルスケアの未来をつくる」を理念に、開業を目指す先生や開業医の方々に寄り添う情報を発信しています。お届けするのは、オンライン診療や電子カルテ関連、開業準備を成功へ導くノウハウ、最新の医療制度・法令などさまざま。ITの力で人と医療の現場をつなぎながら、日々の診療やクリニック経営に役立つ知見を丁寧かつ分かりやすくまとめています。ぜひ、理想とするクリニックづくりのヒントとしてご活用ください。

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