【最新版】IT導入補助金を活用した医療機関の業務改善
「クリニック開業時は費用を抑えたい」と思っているなか、電子カルテやレセコンなどの電子機器を一気にそろえることは金銭的に負担になるでしょう。そのような資金面のハードルを下げる手段として、補助金や助成金を活用が挙げられます。今回は、IT導入補助金について解説していきます。
この記事を読むと以下のことがわかります。
- IT導入補助金とは
- クリニックでIT導入補助の対象となるのは?
- IT導入補助金申請手続きの流れ
- ITツールではどんなことができる?
IT導入補助金を活用して、上手に医療機関の業務改善を図っていきましょう。
目次[非表示]
- 1.IT導入補助金とは
- 1.1.国または地方公共団体が事業者に対して行う返済不要な金銭の給付
- 1.2.「通常枠」(A・B類型)
- 1.2.1.「デジタル化基盤導入類型」
- 1.3.補助金は必ず受給できるわけではない
- 2.クリニックでIT導入補助の対象となるのは?
- 2.1.どのようなITツールが補助金の対象?
- 2.2.補助対象となるITツール
- 2.2.1.①業務プロセスに関するソフトウェア
- 2.2.2.②オプションに関するソフトウェア
- 2.2.3.③付帯サービス等の役務
- 3.IT導入補助金申請手続きの流れ
- 3.1.IT導入支援事業者の選定とITツールの選択
- 3.2.「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」の実施
- 3.3.交付申請
- 3.4.補助事業の実施
- 3.5.事業実績報告
- 3.6.補助金交付手続き
- 4.ITツールではどんなことができる?
- 5.IT導入補助金を活用して業務改善をしよう!
IT導入補助金とは
そもそも、IT補助金とはどんなものなのでしょうか。IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等に対して自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
以降で詳しく解説していきます。
国または地方公共団体が事業者に対して行う返済不要な金銭の給付
補助金は、国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、さまざまな分野で募集されています。
事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するというもので、融資などとは異なり返済する必要はありません。後払いとなっているため、事業の実施後に必要書類を提出して検査を受けた後、受け取ることができます。
「通常枠」(A・B類型)
IT補助金には2つの枠があります。2021年度まで設けられていた「低感染リスク型ビジネス枠」(特別枠:C・D類型)が廃止された代わりに、「デジタル化基盤導入類型」が創設されました。
まずは「通常枠」(A・B類型)について解説していきます。
通常枠では、自社の置かれた環境から強み・弱みから導き出した経営課題や需要に合ったITツールを導入することを目的にしています。それにより、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることが最終目標です。
「デジタル化基盤導入類型」
今年度から導入された「デジタル化基盤導入類型」は、補助事業者が会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト、PC・タブレット等、レジ・券売機等を導入し、労働生産性を向上させるとともに、インボイス制度も見据えたデジタル化を進める事業を補助対象としています。
通常枠(A・B類型)で申請要件としていた、「労働生産性の伸び率の向上」については、求められないため、生産性向上に係る情報(売上、原価、従業員数及び就業時間、給与支給総額、事業場内最低賃金)についての入力は必要ありません。
2021はクラウド利用料1年分が補助対象とされていましたが、「デジタル化基盤導入類型」ではクラウド利用料2年分まとめて補助対象となりました。
補助金は必ず受給できるわけではない
注意点として、補助金は必ずしもすべての経費がもらえるわけではないという点があります。公益性や各補助金の支給目的などに基づき、一定の申請条件や審査があるので、事前に補助対象となる経費・補助の割合・上限額などを確認しましょう。
クリニックでIT導入補助の対象となるのは?
IT導入補助金は、事業者の方が、自社の課題やニーズに合った「ITツール」を導入する経費の一部を補助するための補助金です。しかし導入を考えるにあたって、この「ITツール」の具体的なイメージがつかない方も多いでしょう。
ここでは、クリニックでIT導入補助の対象となるITツールの具体例についてご紹介します。
どのようなITツールが補助金の対象?
どんな種類のITツールを自社に導入すべきかを決める必要があります。
まずは、どのようなITツールが補助金の対象なのかをチェックしましょう。
- 日々業務が発生する経理等の業務を効率化させるITツール
- 顧客等の情報を一元管理するようなクラウドシステム
- 会計・受発注・決済・ECの機能を1種類以上含んでいるソフトウェアツール(※デジタル化基盤導入類型)
補助対象となるITツール
補助対象となるITツールは、IT導入支援事業者が事前に事務局へ登録申請を行い、外部審査委員会等の審査を経て事務局に登録されたものだけなので、注意が必要です。
IT導入補助金で規定されたITツールとは、業務効率化のために新たに導入される「ソフトウェア製品」や「クラウドサービス」などです。導入にあたってのサポート費用や設定費用も補助の対象として含まれます。
また、デジタル化基盤導入類型では会計・受発注・決済・ECの機能を1種類以上含んでいるソフトウェアの導入が必須です。ハードウェアの購入費用も補助対象となりますが、補助対象経費となるソフトウェアの導入と併せて購入する場合のみ対象となるので注意してください。
①業務プロセスに関するソフトウェア
業務プロセスとはソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上する、または、効率化される工程のことを指します。
引用:https://www.it-hojo.jp/applicant/application-sections.html
上記のように、 「業種」「業務範囲」「業務機能」など仕様を明確に定義して開発され、一般に販売が開始されていることが条件です。レセコン、電子カルテ用PCなどがこれにあたります。
②オプションに関するソフトウェア
ソフトウェアとは別に販売されており、ソフトウェアの機能を拡張する目的のものや、セキュリティを確立する為の補足的機能のアプリケーションを指します。こちらは、電子カルテ用ソフトや、情報漏洩防止のためのセキュアソフトなどがあたります。
③付帯サービス等の役務
ソフトウェアの導入に伴って必要となる導入費や、導入後の1年間のサポート費、ハードウェアのレンタル費や購入費などが該当します。電子カルテ導入に伴い、院内で患者さまにタブレットから入力してもらうためのタブレット(ハードウェア)レンタルや購入などがあたります。
この枠は、デジタル化基盤導入類型のみの枠になりますから、注意しましょう。
IT導入補助金申請手続きの流れ
ここからは、IT導入補助金申請手続きの流れについて見ていきます。やり方自体は統一されているので、医療機関以外も同じ流れで手続きが可能です。
- IT導入支援事業者の選定とITツールの選択
- 「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」の実施
- 交付申請
- 補助事業の実施
- 事務局から交付決定を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払い等を行う
- 事業実績報告
- 補助金交付手続き
それぞれ見ていきましょう。
IT導入支援事業者の選定とITツールの選択
まずは、補助金の交付申請を行う準備をしましょう。自院の規模や今後の展望、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。
このとき、補助対象となる事業者やツール以外を選ぶと補助金がおりませんので、必ず一覧からチェックして選ぶようにしましょう。
「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」の実施
交付申請の要件には「gBizIDプライム」アカウント(ID・パスワード等)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。
「SECURITY ACTION」宣言は、中小企業・小規模事業者自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する事を要件としています。
両方とも交付申請作成時に宣言済アカウントIDの入力が必要となり、gBizIDプライムアカウントID発行までの期間は、おおむね2週間かかりますので、早めに申請の手続きをしましょう。
交付申請
ここまで準備できたら、ついに交付申請です。IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。
交付申請は、以下の流れで行います。
- IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け、代表者氏名等の申請者基本情報を入力する。
- 交付申請に必要となる情報入力・書類添付を行う。
- IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する。
- 『申請マイページ』上で入力内容の最終確認後、申請に対する宣誓を行い事務局へ提出する。
医療機関は日々の業務が忙しく、なかなかまとまった時間が取れないかもしれません。後回しにせず、なるべく早く申請を済ませてしまいましょう。
補助事業の実施
事務局から交付決定を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払い等を行います。交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができませんので、注意しましょう。
事業実績報告
補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払い等を行ったことが分かる証憑を提出します。虚偽申告などは弾かれますし、不明瞭な場合も申請が通らない可能性があります、領収書などは必ず取っておきましょう。
補助金交付手続き
事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると、『申請マイページ』で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。
ITツールではどんなことができる?
最後に、実際にITツールを導入するとどんなことができるのかを解説していきます。導入を悩んでいるクリニックや支援金の使い道に悩んでいる方は、参考にしてください。
RPAツールを活用することでルーチンワークを自動化
「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)」とは、ロボットによる人の業務を自動化する取り組みを表す言葉です。現在、RPAは多くの業界で利用され始めています。
近年、医療業界で問題となっている医師・看護師不足の背景には様々な要因があります。その中で現在注目を集めているのが医療の事務業務を自動化できるRPAです。RPAを使うことにより、医療の事務作業量を削減できるため、人材不足が深刻化する医療業界ではその効果・効能に大きな期待が寄せられているのです。
グループウェアを導入して社内の情報共有を円滑に
スピーディーかつ正確さが常に求められる医療現場。院内の情報共有や円滑なコミュニケーションツールとして多くの病院で導入されているのが「グループウェア」です。
グループウェアとは、組織内の情報共有等を一元管理できるシステムソフトウェアの総称です。利用ツールはカスタマイズできるため、自院に必要な機能のみを追加することも可能です。
電子カルテシステムの導入
電子カルテシステムを導入にもIT導入補助金の活用が可能です。
CLINICSカルテは、提供元のメドレーがIT導入支援事業者として認可されたうえで、補助金の対象となるITツールとして登録されています。
IT導入補助金を活用して業務改善をしよう!
今後の医療体制は、より柔軟な対応ができる診療方法を求められるようになります。ITツールはこれからの医療業界でより推進されていくことでしょう。IT補助金を上手に使い、自院に適したツールを導入してみてください。