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クリニックの事業計画書の書き方と手順【無料テンプレート付き】
1. そもそも、なぜ事業計画書が必要なのか
事業計画書には、大きく2つの役割があります。1つは融資審査を通過するための書類として、返済能力を示すこと。クリニックの開業は、診療科目や規模にもよりますが、一般的に5,000万円から1億円以上の資金が必要であり、その大半を金融機関からの融資でまかなうことになるため、計画書の提出は避けられません。もう1つは、開業後の経営を支える設計図としての役割です。計画書を作る過程で自分のクリニックの収支を数字で把握できるので、融資審査と同じくらい、あるいはそれ以上に重要といえます。開業資金はいくら必要か、毎月の固定費はどれくらいか、何人の患者さんが来れば採算が取れるか。こうした問いを事前に整理しておくことで、開業後の資金繰りの見通しが立ち、準備の優先順位も明確になります。スタッフや取引先に自院のビジョンを伝える際も、言葉だけより数字の根拠を示せる計画書があるほうが、説得力は格段に高まります。事業計画書は、自分のクリニックの未来を数字で描く作業でもあるのです。
2. 事業計画書の構成と記載項目
事業計画書は「言葉で書く項目」と「数字で書く項目」に大きく分かれます。この2種類がそれぞれ役割を持ち、全体は次の3つのブロックで構成されています。
① 経営基本計画 | 開業の動機、コンセプト、診療方針、経営理念など、クリニックが「誰のために、どんな医療を提供するのか」を記載します。 |
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② 資金計画 | 開業に必要な資金の総額と、その調達方法(自己資金と借入金の内訳)を記載します。融資額の根拠となる重要な部分です。 |
③ 収支計画 | 開業後の売上・費用・損益・資金繰りを月次・年次で予測します。経営が軌道に乗るまでの資金の動きを把握できます。 |
この3つが揃ってはじめて、「このクリニックは何を目指し、どう運営され、返済できるのか」が金融機関にも自分自身にも伝わります。
3. 作成前に押さえるべき、5つのステップ
テンプレートを開いたとき、どこから埋めればよいか迷わないために、作成の流れを先に頭に入れておきましょう。全体の手順は5つのステップに分かれています。
Step 1. 開業資金(初期費用)の見積もり
物件の保証金・内装工事費・医療機器・広告費・コンサルティング費など、開業までにかかる費用を項目ごとに見積もります。複数の業者さんから見積もりを取り、根拠のある数字を揃えておきましょう。融資申請の土台となる部分です。
Step 2. 支出の見積もり
開業後に毎月かかる費用を固定費と変動費に分けて整理します。固定費は人件費・賃借料・水道光熱費・システム保守料など、変動費は薬品費・診療材料費などが該当します。賃借料と人件費は支出の大部分を占めるため、開業前に正確な金額を把握しておくことが重要です。
Step 3. 収入の見積もり
収入は「1日の外来患者数 × 診療単価 × 月間診療日数」で算出します。1日の患者数は診療科目によって大きく異なるため、楽観的な想定だけでなく、患者さんが少ない場合のシナリオも並べて試算しておくと、計画に現実的な幅を持たせられます。
Step 4. 資金繰り表の策定
収支の見積もりが揃ったら、月次の資金繰り表を作成します。毎月の収入・支出・月末の運転資金残高を可視化することで、資金が薄くなる時期を事前に把握できます。開業後、月々の実績と照らし合わせる際にも役立てられます。
Step 5. 開業までのスケジュール策定
開業日から逆算して、物件選定・内装工事・医療機器導入・スタッフ採用・各種申請の時期を書き出します。余裕をもって準備するには、一般的に1〜2年程度の期間が必要です。
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4. CLINICSのテンプレートを使った書き方
CLINICSでは、クリニック開業に向けた事業計画書テンプレート(Excel形式)を無料で提供しています。シートごとに項目が整理されており、数字を入力すると収支が自動計算される設計です。ここでは、テンプレートを開きながら、各シートに「何を、どう書くか」を具体的な記入例とあわせて解説します。
Sheet 1|開業計画のサマリー
開業計画のサマリーシートは、クリニックの概要・創業費用・融資計画・軌道に乗った後の収支想定を1枚にまとめたものです。融資担当者が最初に目を通す部分であり、「このクリニックは何科で、いくら借りて、返せるのか」が一目でわかる内容にする必要があります。
【概要】標榜科目・開業場所・開業時期を記入します。
【創業費用と資金手当て】かかる費用の内訳と、自己資金・銀行融資の内訳を入力します。
【融資計画】創業費用・運転資金・必要資金の合計と、自己資金・銀行融資の内訳を記入します。
【資産状況】預貯金・換金性のある保険・不動産・負債(住宅ローンなど)を記入します。融資審査で自己資金の裏付けとして確認される部分です。
【収支と返済】売上・費用・利益・銀行返済額・手残りを記入します。
【軌道に乗った後の収支想定】経営が安定した後の月次売上・費用・利益・銀行返済後の手残りを記入します。融資担当者はここで「長期的に返済できるか」を確認するため、楽観的すぎない現実的な数字を入れることが大切です。
備考には、以下の2つを自由に記述します。
■院長について | (記入例)総合病院の内科に11年間勤務し、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患管理を専門としてきました。延べ診療患者数は約8,000名。内科認定医の資格を持ちます。地元である○○区に戻り、幼少期からお世話になった地域の方々のかかりつけ医として、長期的な健康管理を支えるクリニックを開業したいと考えています。 |
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■集患について | (記入例)開業前にホームページを制作し、Googleビジネスプロフィールの整備と近隣へのポスティングを実施します。○○駅から徒歩3分という立地を活かし、通勤・通学途中に立ち寄れる夜間診療(週3日、19時まで)を設けることで、働く世代の患者さんの取り込みを図ります。競合は半径500m以内に内科クリニックが1院ありますが、土曜午後診療と夜間診療で差別化します。 |
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Sheet 2|医院概要
クリニックの基本情報と診療体制を記載するシートです。以下の項目を順に埋めていきます。
【基本情報】医院名称・開業日・院長名・医院住所・交通・標榜科目を記入します。
【診療時間】曜日ごとに午前・午後の時間帯と休診日を記入します。
【診療所周辺の地図】駅からのアクセスがわかる地図のスクリーンショットを貼り付けます。
項目 | 記入例 |
|---|---|
医院名称 | ○○内科クリニック(仮称) |
開業日 | 2026年10月1日 |
院長名 | ○○ ○○ |
医院住所 | 東京都○○区○○1-2-3 |
交通 | ○○線「○○駅」徒歩3分 |
標榜科目 | 内科、消化器内科 |
■自由記入欄 |
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(記入例)総合病院の内科に11年間勤務する中で、慢性疾患を抱える患者さんが「忙しくて病院に行けない」「待ち時間が長くて通い続けられない」という理由で治療を中断するケースを多く目にしてきました。生活習慣病は継続的な管理が命綱であるにもかかわらず、通いやすい環境が整っていないために悪化してしまう。この現実を変えたいと考え、夜間・土曜診療を設けた、働く世代が通いやすいクリニックの開業を決意しました。診療方針は「薬を出して終わり」ではなく、生活習慣の改善を一緒に考える伴走型の医療です。 |
Sheet 3|創業費用
開業までにかかる初期費用を、カテゴリ別に入力するシートです。業者さんから取得した見積もりの数字をそのまま転記します。以下の6カテゴリが用意されており、各カテゴリ内の項目に金額を入力すると合計が自動計算されます。
【物件契約時】 礼金・仲介手数料・敷金・保証金
【医療機器】 診察台・超音波・心電計・レントゲンなど
【工事費用】 内装工事(建築工事はテナント開業では不要)
【広告】 HP制作・チラシ・看板・内覧会費用
【家具・備品】 机・椅子・棚・家電製品
【その他費用】 求人広告・医薬品・医師会入会費・開業前家賃
書き方のポイント |
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Sheet 4|資金計画
創業費用シート(Sheet3)の合計と運転資金を足した「必要資金の総額」と、それをどう調達するかを整理するシートです。必要資金と資金調達方法のそれぞれの合計が一致するように組みます。以下の2つも忘れずに記入しましょう。
【借入条件(想定)】 設備資金・運転資金の借入額や返済期間・金利・返済方法を入力します。毎年の返済額は自動計算されます。
【担保・保証人の希望/その他・補足事項】 担保や保証人の有無は融資条件に影響するため、現時点での状況を正直に記載しましょう。
書き方のポイント |
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Sheet 5|固定費・人件費
毎月かかる費用を整理するシートです。ここへの入力内容が、収支表の自動計算に直結します。人件費欄では開業から15年分のスタッフ構成を月ごとに入力でき、各月に勤務するスタッフの給与額を入力すると人件費合計が自動計算されます。開業当初は最小限の人数から始め、患者数の増加に応じてスタッフを追加する計画を立てておくことで、固定費を抑えながら経営を安定させやすくなります。固定費欄には地代家賃・水道光熱費・通信費・保守使用料・税理士顧問料など、毎月一定額かかる費用を入力します。売上がゼロでもこれらの固定費が出ていくことを念頭に、運転資金の厚みを確認しておくことが大切です。
Sheet 6|収支表(月次・年次)
固定費・人件費シートへの入力が完了すると、このシートの計算が動き始めます。入力が必要なのは「1日の外来患者数」「診療単価」「月間診療日数」の3つだけです。

売上・費用・損益・資金繰りがすべて自動で算出されます。月次シートでは開業から12ヶ月分、年次シートでは15年分の推移を確認できます。このシートで特に注視すべきは、以下の2点です。
【損益がプラスに転じる月】 黒字転換のタイミングです。
【運転資金残高が最も少なくなる月】 資金ショートのリスクがある時期です。
開業直後の赤字は珍しくありませんが、黒字転換の時期を把握しておくことで、それまでに必要な運転資金の厚みが見えてきます。運転資金残高がマイナスになっていれば、運転資金が足りないサインです。その場合は融資額を見直す必要があります。この2点を確認することで、計画書が「絵に描いた餅」にならず、実際の経営判断に使える設計図になります。
5. 事業計画書作成に関するFAQ
事業計画書を作成する中で出てくる、よくある疑問をいくつかピックアップしました。
Q1. 事業計画書はいつ作り始めればよいですか?
開業を決意したタイミングで着手するのが理想です。一般的に、クリニックの開業準備には1年〜1年半程度かかるとされており、事業計画書はその出発点となります。物件が決まったら金融機関への相談も早めに動き出すことが大切で、融資の審査・実行には一定の時間がかかります。「まず計画書を作ってから動く」という順番が、準備全体をスムーズに進める近道です。
Q2. 作成する際の注意点は?
収入の見積もりは楽観的になりすぎないことが大切です。支出や負債は概ね見積もり通りになりますが、収入は想定を下回るケースが少なくありません。「患者さんが少ない場合」「想定通り」「多い場合」の3パターンで試算しておくと、より現実的な計画が立てられます。また、開業動機や診療方針と収支の想定に矛盾があると計画書全体の信頼性が損なわれるため、内容の一貫性を保つことも意識してみてください。
Q3. 自分で作成すべき?
大枠は自分で作成されることをおすすめします。開業の動機・コンセプト・経営理念は、自分の言葉でなければ説得力が生まれません。数字の部分は開業コンサルタントや税理士に相談しながら進めるのが現実的ですが、すべてを任せてしまうと自分のクリニックの収支を把握できないまま開業することになりかねません。計画書づくりを通じて経営の全体像を理解することが、開業後の判断力にもつながっていきます。
Q4. 融資先はどこを選べばいい?
代表的な融資先は、日本政策金融公庫・地方銀行・医師信用組合の3つです。日本政策金融公庫は低金利・長期返済が特徴で、開業実績のない医師でも融資を受けやすい傾向があります。地方銀行は開業地のエリアに根ざしており、経営サポートを提供している銀行もあります。医師信用組合は医師・歯科医師を対象とした専門機関で、医療機関特有の事情を踏まえた対応が期待できます。金利・返済期間・審査基準はそれぞれ異なるため、複数に相談して比較することをおすすめします。
Q5. 診療圏調査は事業計画書に必要ですか?
必須ではありませんが、収支計画の説得力を高めるために非常に有効です。事業計画書の収入見込みは「1日の外来患者数」をもとに算出しますが、その根拠が「なんとなく」では融資担当者への説明が弱くなります。診療圏調査で開業予定地の人口・競合・患者需要を把握しておくと、患者数の見込みに現実的な根拠が生まれ、計画書全体の説得力が増します。開業コンサルタントや医療専門の税理士に依頼するほか、自治体や医師会が提供する統計データを活用する方法もあります。
6. まとめ
事業計画書の作成は、融資審査を通過するためだけの作業ではありません。開業資金・月々の固定費・収支の見通しを数字で整理することで、準備すべきことの優先順位が明確になり、開業後の経営判断の土台にもなります。CLINICSの事業計画書テンプレートは、必要な項目がシートごとに整理されており、数字を入力するだけで収支が自動計算される設計です。ぜひテンプレートをダウンロードして、一歩ずつ取り組んでみてください。

【参考資料】
創業計画の書き方/日本政策金融公庫
※本記事は情報提供を目的としたものです。融資条件・金融機関の審査基準などは変更される場合があります。個別の資金計画については、金融機関や専門家にご相談ください。
執筆監修者
CLINICS事務局
株式会社メドレー
医療現場のDXパートナーとして「医療ヘルスケアの未来をつくる」を理念に、開業を目指す先生や開業医の方々に寄り添う情報を発信しています。お届けするのは、オンライン診療や電子カルテ関連、開業準備を成功へ導くノウハウ、最新の医療制度・法令などさまざま。ITの力で人と医療の現場をつなぎながら、日々の診療やクリニック経営に役立つ知見を丁寧かつ分かりやすくまとめています。ぜひ、理想とするクリニックづくりのヒントとしてご活用ください。
