診療報酬改定DXとは?その概要と医療機関にもたらすメリット・デメリットを徹底解説します!
2022年6月に閣議決定した「骨太の方針2022」において、「診療報酬改定DX」の推進が明記され、実行に向けて医療DX推進本部を政府内に設置することが盛り込まれました。
診療報酬改定DXが実現すれば、医療現場は大きく変化するとされており、各医療機関も他人事ではありません。当記事では、診療報酬改定DXの概要やメリット・デメリットについて解説します。
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診療報酬改定DXとは?
「診療報酬改定DX」とは、診療報酬や診療報酬改定にかかわる作業をDX化させることで、大幅な効率化を行い、システムエンジニアの有効活用や費用削減を目指す概念です。診療報酬の改定は3月に公示されますが、報酬改定にともなうシステムの反映は4月1日の改定施行日までに終わらせなければなりません。
したがって、各メーカーは公開された資料を読み解きながら、ロジックに落とし込み、システムに反映させる作業を約1ヶ月間で終わらせる必要があるということです。診療報酬は隔年で行われるため、電子カルテやレセコンメーカーはこれらの作業を隔年で行ってきました。
また、改定内容も確定後に通知される「疑義解釈」によって、ロジックが明確化されるため、改定施行日以降も疑義解釈が通知される度に変更作業を行わなければなりません。このように診療報酬改定作業は電子カルテやレセコンメーカーに大きな労力がかかります。
DXを推進することで、これらの作業を効率化しようとする取り組みが診療報酬DXです。
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診療報酬改定DXが推進されている背景
診療報酬改定DXが推進されている背景にあるのが、少子高齢化による社会保障制度への影響です。少子高齢化が進めば、労働人口が減少し、若い世代に支えてもらう高齢者が増加します。
その結果、医療や介護費を中心に、社会保障の給付と負担のバランスが崩れるため、社会保障制度が成り立たなくなる可能性があります。バランスが崩れている中で、社会保障制度を維持していくためには医療費の効率的な利用が欠かせません。
そこで推進されているのが診療報酬改定DXです。診療報酬改定DXを行えば、診療報酬や改定作業を効率化できるため、システムエンジニアを有効活用できます。
その結果、レセプト請求や医療機関の業務システムのDXを進めて、費用削減につなげることができるため、医療保障制度全体の運営コストも削減することが可能です。全体の運営コストを削減できれば、社会保障制度の財源確保が難しくなったとしても、保険者負担を軽減することができます。
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診療報酬改定DXの主な2つの施策
診療報酬改定DXの主な施策として次の2つが挙げられます。
- 診療報酬の改定・試行
- 共通算定モジュールの導入
それぞれ詳しくみていきましょう。
診療報酬の改定・施行
前述のとおり、診療報酬の改定は隔年つまり2年に1度行われ、4月に施行されます。ただし、軽微な変更は定期的に行われています。
2020年からは新型コロナウイルスへの対応によって頻繁に変更されており、ベンダーや医療現場に大きな負担を与えています。改定データに不備があった場合はやり直しが発生するため、現場への影響も少なくありません。
以上の点から、電子カルテおよびレセコンも、診療報酬改定や通知があるたびに自動的に新点数に置き換わることが理想です。
また、ロジックが複雑なため、地域によって解釈が異なる部分も生まれてしまいます。そのため、後述する「共通算定モジュールの導入」に合わせて、診療報酬のロジックをシンプルなものへ変更することも考えているようです。
共通算定モジュールの導入
厚生労働省やベンダー、審査支払機関が協力するとともに、デジタル庁のサポートも得ながら共有算定モジュールの作成・導入を目指しています。「共通算定モジュール」とは、医療機関やベンダーの負担を軽減するために、各ベンダーが共通で活用可能な診療報酬に係るモジュールのことです。
共通算定モジュールが作成・導入されれば、モジュールを更新するだけで、診療報酬改定作業が終了するため、ベンダーの負担を大幅に軽減できるでしょう。また、支払基金で公開されている電子点数表から、レセコンに組み込める共通算定モジュールにグレードアップできれば、電子カルテやレセコンベンダーの作業を効率化できます。
これらの取り組みが実現すれば、改定データが不備にあった場合でも素早く修正できるため、医療現場への影響を抑えることができるでしょう。
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診療報酬改定DXのメリット
診療報酬改定DXのメリットは次の3点です。
- 業務負担の軽減
- コストの削減
- 地域包括ケアを支えるネットワーク構築の推進
地域包括ケアシステムとは、地域に見合った医療や介護、生活支援を確保する体制のことです。診療報酬改定DXが進み、各医療機関が連携のために電子カルテシステムを導入して、医療現場のデジタル化やDX化が進めば、各地域の医療機関がデータの連携・共有がしやすくなります。
データの連携・共有を進めることで、地域包括ケアシステムを支えるネットワーク構築の推進が可能です。ネットワークが構築されれば、介護・医療・福祉サービスといった情報を一元管理できるため、円滑に高齢者を支援できるようになります。
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診療報酬改定DXのデメリット
診療報酬改定DXのデメリットは次の2点です。
- 取り組みが失敗する可能性もある
- システム刷新直後は多大な労力がかかってしまう
現行の診療報酬点数は膨大なテキスト情報で構成されているため、プロジェクトの難易度は非常に高く、必ずしも共通算定モジュールの作成が成功するとは限りません。そのため、診療報酬改定DXを見据えたデジタル化やDX化も行ったにもかかわらず、診療報酬改定DXが実現しないという可能性もあります。
また、診療報酬改定DXが実現した場合でも、今までのシステムの運用方法を大きく刷新する必要があります。そのため、共通算定モジュールの導入には多大な労力がかかる可能性もあります。
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まとめ
少子高齢化によって社会保障制度の給付と負担のバランスが崩れている中で、保険者負担を軽減するためには医療保険制度全体の運営コスト削減が必須です。運営コストを削減するために国家戦略として推進されているのが「診療報酬改定DX」です。
診療報酬ロジックのシンプル化と、共通算定スケジュールの導入が実現すれば、診療報酬改定作業を効率化することができます。作業を効率化ができれば医療保険制度だけでなく医療現場のコスト削減ができる他、「エンジニア・医療現場・ベンダーの負担軽減」といったメリットを享受することが可能です。
診療報酬改定DXを政府が進める中、医療機関がこれらの取り組みに迅速に対応できるようにするには、医療業務のデジタル化や、医療DXを推進しておく必要があります。