Case
呼吸器内科の「断らない外来」。 承継と同時に選んだクラウドカルテ
静岡の中心市街地から静岡鉄道で8分、スーパーや商店が並ぶ住宅地に、「ふかだ内科・呼吸器内科」はあります。院長の深田充輝先生は、浜松医科大学の大学院で学位を取り、磐田市立総合病院や静岡赤十字病院などで診療にあたってきた呼吸器専門医。2026年4月、先代の滝澤明憲院長から古庄わかばクリニックを受け継ぎ、リニューアルして開業しました。長引く咳を診てもらえる場所が少ないこの地域で、初診の患者さんを断らずに診ています。その結果、開業から5ヶ月で、1日あたりの診察数は約1.5倍に。承継と同時に踏み切ったCLINICSカルテ・CLINICS予約への入れ替えと、日々の診療の組み立てについて、深田院長に伺いました。

入院した1ヶ月が、街のお医者さんの原点に
Q. 医師を目指したきっかけは。
「最初はサッカー選手になりたいと思っていました。医師を目指すきっかけになったのは、小学4年生の夏休みに、病気で1ヶ月ほど入院したことです。それまで病院にかかる機会もあまりなく、初めての入院だったので、とても不安でした。ただ、そのときの担当の先生がとても親身な方で、何度も病室に顔を出して、いろいろな話をしてくださいました。そのおかげで、長い入院期間も比較的楽しく過ごすことができました。その経験から、『自分もこういうふうに患者さんに寄り添える人になりたい』と思ったのが、医師を目指したきっかけです。」
Q. 呼吸器内科を選び、開業を考えた理由は。
「呼吸器内科は、一般的な肺炎だけでなく、喘息のようなアレルギー疾患から膠原病、間質性肺炎、肺がん、カビ(真菌症)など、扱う疾患の幅がとても広い科だと思っています。全身を診ながら診断を組み立てていくところが、考えることが好きな自分にとっては凄く惹かれました。以前は総合病院で勤務医をしており、勤務医は重症の患者さんや入院が必要な方を診療する大きなやりがいがあります。一方で、自分自身は外来で患者さんと直接話ししながら診療することにも魅力を感じていました。総合病院で診るような重い病気ではなかったとしても、症状が続いて困っていたり、『何か病気があるのではないか』と不安を感じていたりする方はたくさんいらっしゃいます。患者さんの話をしっかり伺って相談に乗っていきたいという思いが、開業を考えるようになった理由です」
Q. 承継というかたちを選んだ経緯は。
「先代の院長が高齢で引退を考えていらっしゃったとき、医院の隣にあるデイサービスとのご縁で、話をいただいたんです。この紹介がなかったら、新規で開業していたかもしれません。引き継ぐ前の1年間は、週に1日、前身のクリニックで外来を担当させてもらっていたので、患者さんのことも場所のことも、ある程度わかったうえで始められました」
オンプレから、どこでもつながるカルテへ
Q. 開業にあたって、まず決めたことは。
「まず決めたのが、電子カルテの入れ替えでした。以前から、さまざまな場所からアクセスできるクラウド型の電子カルテを導入したいと考えていたんです。診察室のパソコンだけでなく、別の場所からでも事前にカルテを確認したり、診療の準備をしたりできるのは大きなメリットです。以前の電子カルテはインターネットに接続していなかったため、予約システムとの連携などにも使いにくさを感じていました。現在はインターネットにつながった環境で電子カルテを利用できるので、必要な情報にすぐアクセスできるようになり、診療の効率は良くなったと感じています」
Q. 開業前に使っていたオンプレミス型は。
「オンプレミス型には、細かな設定ができるという良さがありました。診療内容に合わせたセットもかなり細かく作り込むことができます。ただ、自由度が高い分、設定が複雑になりすぎる面もありました。現在は外勤の先生にも診療をお願いしていることもあり、自分だけが使いやすいように細かな設定を作り込んでしまうと、ほかの医師やスタッフにとって使いにくくなってしまいます。できるだけシンプルな仕組みにして、みんなが同じように使える、そこはクラウド型の大きなメリットだと思っています」
Q. CLINICSを選んだ決め手は。
「費用面も理由の一つですが、担当してくださった方の対応がとても丁寧だったことも大きかったです。また、予約システムが使いやすかったことも決め手になりました。電子カルテと予約システムをそれぞれ別の会社のサービスにすると、費用もかかりますし、運用も複雑になります。それよりも、一つのサービスの中でさまざまな機能を利用できるほうが、クリニックとしては使いやすいと考えました。また、AIをはじめとした新しい技術の活用にも力を入れている印象があり、今後の発展性を感じられたことも魅力でした」
Q. 「未来カルテ」の使い勝手は。
「未来カルテは、とても使いやすいと思います。もともと診療前に患者さんの情報を確認して準備しておきたいタイプなので、この機能を使えることは非常に大きかったです。だいたい1週間ほど前から、予約されている患者さんのカルテを確認しています。例えば、『次回は1ヶ月後に来てください』となった場合、その日に予定している血液検査やレントゲン検査をあらかじめ入力しておくことができます。当日は受付後に必要な検査を受けていただき、その結果がそろった状態で診察に入る、という流れを作れます。以前は、患者さんが来院してから一人ひとりオーダーを入力し、検査へご案内する必要がありました。今は未来カルテにあらかじめオーダーを入れ、当日のメモに『採血・レントゲン』などと記載しておけば、事務さん・看護師さんが確認して対応してくれます。診察室に入っていただく前に必要な検査を進められるため、診療全体がとてもスムーズになりました。以前と比べると、同じ時間でも診察できる患者さんの数は増えていると思います」

頑張ればいいのは、最初の1ヶ月半だけ
Q. 移行で不安だったことは。
「一番不安だったのは、以前の電子カルテに入っていた情報を、どこまでスムーズに引き継げるかという点でした。実際、最初の1ヶ月半ほどは大変でした。ただ、ある程度の期間を乗り越えれば運用が落ち着くことも見えていたので、『まずはここを頑張ろう』と思っていました。1ヶ月半を過ぎた頃から徐々に慣れて、その後はだいぶ楽になってきました」
Q. スタッフが慣れるまでの支えは。
「スタッフが新しいシステムに慣れるまでには、3ヶ月ほどかかりましたが、それを理由に離職したスタッフはいませんでした。稼働初日と翌日は導入支援の担当の方に立ち会っていただき、その後も2回ほど、有償で訪問サポートをお願いしました。スタッフからも『直接聞きたい』という希望がありましたし、導入時のサポートに必要な費用をかけることは大切だと考えていました。来ていただいた日には、日頃困っていることや疑問点をまとめて質問し、その場でできるだけ解決するようにしました。普段のサポートにはチャットを利用しています。質問を送っておけば回答をいただけるので、現在は問題なく運用できています」
Q. クラウドにしてよかった点は。
「診療以外の部分でも、業務負担はかなり減りました。以前のオンプレミス型では定期的なアップデートがあり、そのたびに読み込みに時間がかかっていました。また、毎日の診療終了後にはバックアップ作業が必要で、20〜30分ほどかかることもありました。会計を担当するスタッフは、診療後の業務をすべて終えたあとにバックアップを開始し、それが終わるまで待ってから帰宅していました。クラウド型にしてからは、そうした待ち時間がなくなりました。会計業務が終われば、そのまま業務を終了できます。スタッフからも、負担が減ったという声がありました」
Q. 経営分析はどう使っていますか。
「かなり活用しています。経営分析は非常に便利ですね。スタッフも確認できるので、『今日はこれくらいの診療実績だった』と院内で共有できるところも良いと思います。特に、診療単価は普段の診療だけではなかなかイメージしにくい数字なので、それを可視化できるのはありがたいです。また、特定の疾患の患者さんを1ヶ月に何人診療したかといったデータも確認でき、診療内容を客観的に振り返る材料になります。
来院エリアを確認できるのも興味深いですね。実際にどの地域から患者さんが来院されているのかがわかるので、地域におけるクリニックの役割を考えるうえでも参考になります」
「急に診てほしい」に応えるために
Q. 診察数が伸びた理由は。
「まだまだ発展途上のクリニックであり大変恐縮ですが、地域に呼吸器を専門的に診療するクリニックがそれほど多くないことがあると思います。また、咳は『今日急に始まった』『1週間続いているけれど原因がわからない』など、急に困ることの多い症状です。受診したいと思ったときに診てもらえる場所が見つからず、困っている方も少なくありません。そのため当院では、初診の方もできる限りお断りしないようにしています。混雑時にはお待たせする可能性があることをご説明したうえで、なるべく当日に診察できるようにしています。また、初診の方が当日にmelmo(メルモ)から予約する場合も、診療終了の30分前まで予約できるようにしています。こうした取り組みが重なって、受診してくださる方が増えているのではないかと思います」
Q. キャンセルが少ない理由は。
「あまり意識したことはないのですが、次回の受診時期が決まっている方には、できるだけ診察時に次の予約を取っていただくようにしています。また、患者さんにご負担をかけないよう、できるだけ丁寧に接し、混雑して待ち時間が長くなってしまった場合には、『お待たせして申し訳ありません』と必ずお声がけするようにしています。必要な検査がある場合は先に済ませていただくなど、ただ待っていただく時間をできるだけ減らすことも意識しています。
同院の予約キャンセル率は5〜6%程度です。次回の予約が決まると、検査の有無や食事の注意を記した案内とあわせて、予約表を紙で手渡しています。
この地域に、呼吸器内科を根づかせる
Q. 地域に知ってもらうための工夫は。
「比較的情報発信をする努力をしています。Googleビジネスプロフィールの更新、Instagramも自分で運用しています。現在はGoogle検索をきっかけに受診される方も多いので、Googleとの連携機能はとても役立っています。他社のサービスでは追加費用が必要になることもある機能が、標準で利用できるのはありがたいと思っております。一方で、電柱看板などの従来型の広告は必要最小限にして、地域の情報誌などにも掲載していただいています。実際に『情報誌を見て来ました』と言ってくださる患者さんもいらっしゃいました。オンラインだけに偏るのではなく、地域の方に届く方法をいろいろ試しながら、クリニックを知っていただければと思っています」
CLINICS予約には、Googleビジネスプロフィールから直接予約につながる「Google Map連携」があります。
Q. これからどんな医院にしたいですか。
「クリニックの名称も診療体制も変わったので、まずは地域の方々に、当院が呼吸器内科を専門的に診療しているクリニックだと知っていただくことが大切だと考えています。まずは、地域の中に『咳や呼吸器の症状で困ったときに相談できるクリニックがある』ということを定着させたいと思っています。この地域の患者さん一人ひとりを、しっかり診ていくことを大切にしていきたいです。」
※所属・体制は取材時点(2026年9月)のものです。