Case
三代続く医院を、現役世代のクリニックへ。 承継を支えたCLINICS
愛媛県松山市の中心部、松山市駅から徒歩5分の場所にある「すがクリニック消化器内科・婦人科」。その前身となる須賀医院は、1949年に須賀義文院長の祖父・清次郎氏が開院しました。
2023年、三代目となる義文院長が医院を承継。建物を大規模にリノベーションし、1階に消化器内科、2階に婦人科を設け、夫婦それぞれの専門性を活かした新たなクリニックとしてスタートしました。
先代から通院する患者さんを大切にしながら、現在では10代から40代の患者さんも数多く訪れています。
承継に伴うリノベーションから電子カルテの選定、院内の運用づくりまで中心となって取り組んだのが、婦人科を担当する妻の真美先生です。三代続く医院をどのように次の世代へつなぎ、新しい診療体制をつくってきたのか。開業から3年、その歩みを伺いました。

夫が受け継いだ医院を、現役世代も通う場所に
Q. 三代続く医院を継承したそうですね。
「夫の祖父が須賀医院を開いたのが1949年です。1986年からは義父が院長となり、内科と神経内科を中心に30年以上診療を続けてきました。
もともとは有床診療所で、1階が外来、2階が病棟でした。その後、コロナ禍前に病床を廃止して無床診療所へ移行したため、2階は長い間、十分に活用されていない状態でした。
私たちが医院を継承するにあたって、これからの診療に合った環境にするには大幅なリノベーションが必要だと考えました。義父には半年ほど仮診療所で診療を続けてもらい、その間に1階と2階を全面的に改修して、2023年4月に新しい体制でスタートしました」
Q. リノベーションでは、どのようなクリニックを目指したのでしょうか。
「準備を始めた当時は、紙カルテや院内調剤など、昔ながらの診療所のかたちが残っていました。2階には病棟だった頃のベッドも残っていて、設備も診療の仕組みも、これからに合わせて整えていく必要がありました。
そこで考えたのが、夫婦それぞれの専門性を活かしたクリニックにすることでした。夫は消化器内科、私は婦人科です。それぞれの強みを活かしながら、『おなかの不調』に幅広く対応できるクリニックにしたいと考えました。
また、ここは県庁や市役所に近く、周辺には企業や学校も多い市街地です。これまで通ってくださっている患者さんを大切にすることはもちろん、仕事や学校に通う現役世代の方にも気軽に受診していただけるクリニックにしたいという思いがありました」
予約から経営まで、ひとつのシステムで先を読む
Q. 電子カルテにCLINICSを選んだ理由を教えてください。
「まず条件として外せなかったのが、それまでレセプトで使用していたORCAを引き継げることでした。
勤務医時代の経験から、院内にサーバーを置いて自分たちで管理するのは負担が大きいと感じていたので、クラウド型にすることも早い段階から決めていました。院外からでもカルテを確認できることに加えて、WEB予約、WEB問診、電子カルテがひとつにつながっている点も魅力でした。
最終的な決め手のひとつは、インターフェースです。見た目に親しみやすく、直感的に操作できそうだと感じました」
Q. 長く勤務されているスタッフの反応はいかがでしたか。
「以前から勤務していたスタッフは全員60代でした。電子カルテへの移行をきっかけに退職した人もいましたが、『やってみよう』と残ってくれたスタッフもいました。
最初は不安もあったと思います。でも、ガラケーからスマートフォンに変わって、多くの人が使えるようになったのと同じように、電子カルテもこれから当たり前になっていくものだから、と話しました。
実際に使い始めてみると、『紙カルテを探さなくてよくなった』『内容を確認しやすくなった』という声も聞かれるようになりました」
Q. WEB予約やWEB問診は、日々の診療でどのように活用していますか。
「学生さんや会社員など、現役世代の患者さんにも利用していただきやすくするため、開業当初からWEBで予約や問診ができることを重視していました。
当院ではCLINICSの予約・問診システムを利用しているので、患者さんがWEBで予約して問診に回答すると、その情報がカルテにつながります。診察前に必要な情報を確認したうえで診療を始められるので、患者さんにとっても私たちにとってもスムーズです」
Q. 診察前に問診を確認することで、診療にも変化がありますか。
「予約時の問診内容は、1週間前から前日までにできるだけ目を通しています。
事前に確認しておくと、『この方は少し時間が必要そうだな』『この内容なら比較的短時間で診察できそうだな』と予測できます。時間が必要な相談にはきちんと時間を確保しながら、その後の患者さんをなるべくお待たせしないよう、診療全体を組み立てやすくなりました」
Q. AI要約アシストも導入されていますね。
「婦人科は完全予約制で、初診の際には看護師が患者さんと対面してお話を伺います。以前は、その内容を看護師があらためて整理して、カルテに入力していました。
この作業にかかる時間を少しでも減らしたいと考えていたところ、2026年7月にAI要約アシストを導入しました。聞き取った内容をワンクリックで要約して、カルテの記録にできる仕組みです。
導入時にはサポートの方と相談しながら、私たちが使いやすい表現形式にカスタマイズしていただきました。今では看護師だけでなく医師も活用しています。カルテを書くための時間を減らすことで、その分、患者さんの話を聞くことに集中できるようになったと感じています」
Q. 経営面でもシステムを活用されていますか。
「細かな経営分析をしているわけではありませんが、『今日はどうだった』『先月と比べてどうだった』『去年より増えたね』と、夫とはよく話しています。
数字をすぐ確認できるので、税理士さんなど外部の方に説明するときにも便利です。最近では、外来ベースアップ評価料の試算をするときにも、初診や再診の数をすぐに確認できたので、必要な資料を短時間で作ることができました」

診察室の外へ、広がる患者さんとの接点
Q. オンライン診療はどのように活用していますか。
「主に婦人科で利用しています。多いのは月経困難症など、長期的、継続的に処方が必要な患者さんです。
松山市周辺には婦人科のない地域もあり、『初診には来られたけれど、その後も定期的に通院するのは難しい』という方もいらっしゃいます。
症状が安定している方にはオンライン診療も活用していただくことで、無理なく治療を継続できます。通院の負担を減らしながら日常生活を送れるという点で、患者さんからも好評です」
Q. melmoを使い始めたきっかけは何だったのでしょうか。。
「きっかけは検査結果の通知です。婦人科では、子宮頸がん検診や性感染症の検査など、患者さんに結果をお伝えする機会が多くあります。
郵送では届くまでに時間がかかりますし、紛失の可能性もあります。アプリ内で結果を確認できるのは便利ですし、婦人科ではプライベートな内容の検査結果も多いので、その点でもメリットを感じています。
今では患者さんにも積極的にアプリをご案内しています。melmoから再診予約を入れてくださる患者さんも多く、電話での再診予約は少なくなっています」
Q. 地域の検診施設との連携にもWEB予約を活用しているそうですね。
「地域の検診施設の中には、バリウム検査はできても内視鏡検査はできない、あるいは婦人科医がいないため子宮頸がん検診ができない、という施設があります。そうした検査を当院に依頼していただくことがあります。
以前は予約枠の調整を電話で行っていたため、双方にとって負担になっていました。そこで仕組みを工夫し、現在は連携施設から直接WEBで予約を取っていただけるようにしています。
最初は、WEB予約でそこまでできるとは思っていませんでした。実際に使ってみると、工夫次第でいろいろな活用方法があると感じています」
Q. 2階ではヨガ教室なども開催されていますね。
「2階にはスタジオを設けていて、ヨガ教室やバランスボール教室を定期的に開催しています。こちらも診察と同じWEB予約のページから申し込めるようにしています。
始めたのは個人的な理由もあったのですが、続けていくうちに、地域の方が運動を始めるきっかけになったり、気軽に集まれる場所になったりすればいいなと思うようになりました。
クリニックは病気になったときだけ来る場所ではなく、健康なときにも地域の方とつながれる場所にしていきたいと思っています」
クリニックを支える、院外の専門家たち
Q. 新しい診療体制をつくるうえで、支えてくれた方々もいたそうですね。
「CLINICSの導入では、地元の医療機器販売会社、サンメディカルの担当の方に全面的にサポートしていただきました。ICTや医療情報管理、サイバーセキュリティーについて専門的な知識を持っている方なので、必要な対策を一つひとつ確認しながら環境を整えてくださいました。
画像システムとの連携では、富士フイルムの担当の方にも協力していただきました。
私たちは医師ですが、電子機器やシステムの専門家ではありません。それぞれの分野に詳しい方々に支えていただけたことは、とても心強かったです。
電子カルテは、導入して終わりではありません。安定して使い続けるためにも、こうした方々の力が欠かせないと思っています。診療を支える環境をつくってくださる方々にも、もっと光が当たればいいなと思います」
Q. これから、どのようなクリニックを目指していきますか。
「婦人科も消化器内科も、定期的な処方や慢性疾患で継続して通院される方が多くいらっしゃいます。症状が落ち着いている方にはオンライン診療もご案内するなど、できるだけ治療を続けやすい環境をつくっていきたいと思っています。
一方で、患者さんが増えても、一人ひとりと向き合う時間は大切にしたい。効率化すること自体が目的ではなく、カルテ入力などの負担を減らすことで、患者さんの話を聞く時間を確保することが大切だと思っています。
AI要約アシストのようなツールも、そのために活用していきたいですね。患者さんの満足度を落とさず、無理なく診療を続けていくにはどうしたらいいのか。それをこれからも考えていきたいと思っています」
※所属・体制は取材時点(2026年7月)のものです。