Case
システム構築を優先した 「つながる」が支える少数精鋭の診療
大阪・梅田から地下鉄で約5分、証券会社や銀行が並ぶ金融街、北浜。近年はタワーマンションの開発が相次ぎ、若い世帯が増えるエリアへと変わりつつあります。その一角に開業した「みらいクリニック大阪北浜」は、受付にスタッフを置かず、常勤の医師1名と看護師4名で診療をしています。しかも、看護師長は九州の自宅からフルリモートで現場を指揮。この体制は、comacaグループ代表の待鳥さんが「医療従事者の偏在に、仕組みで向き合いたい」という思いから開業前に設計したもの。仕組みを先につくり、クリニックはその実証の場。予約から会計まですべてをつなぐCLINICSとともに、少数精鋭のチームがどのように日々の診療を動かしているのか、代表の待鳥さん・院長の上田先生・看護師長の日高さんの3名に伺いました。

北浜で、この体制にたどり着くまで
Q. 開業理由とこだわりを教えてください。
上田先生: 「時間が読めること」にこだわりたい、というのが始まりです。有給を使って朝から病院に行ったのに、終わったのは昼過ぎだった、というのは社会人にとってつらい体験だと思います。だから、検査がなければ「30分で帰れるクリニック」があってもいいんじゃないかと考えました。あと、北浜を選んだ理由は、タワーマンションが増えているのに小児科も内科も少なくて、若い社会人やお子さん連れの方のニーズが高いと考えたからです。
Q. なぜ受付に人を置かないのでしょうか。
みらいクリニック大阪北浜の受付には、スタッフが立っていません。患者さんは入口のタブレットで自ら受付を済ませ、診察後はスマート決済で会計まで完了します。予約や変更もLINE上で行えるため、電話窓口もありません。こうした医師と看護師だけで成り立つ体制は、開業前から意図して設計されたものです。
待鳥さん: 私たちは医師と看護師だけで運営する体制をこの先もずっと維持するつもりです。受付をなくしておかないと、その体制が成り立たなくなります。ただし、無人受付は、患者さんが自分でできることは自分で進め、医療従事者は診察に集中するという「セミセルフ」の考え方があって初めて成立します。お互いの協力なしには機能しません。
Q. このような体制になった背景とは。
待鳥さん: 医療従事者の偏在に、遠隔で働ける仕組みで向き合うためです。在宅で働ける医師や看護師が、医療従事者不足の地域を支えられる土台をつくれたらと。そのために仕組みをつくることを優先させて、クリニックはその仕組みの実践場としようと思ったんです。本来とは順番が逆なんですけどね。地方の医院支援の仕事で、「条件では解決できない人手不足」という現実をずっと見てきました。人手が足りないというのが、本当に都市部の比ではない。条件をどれだけつり上げようと、そもそも人がいないから採用ができない、という次元のことが多いんです。
こうした背景から生まれたのが、このクリニックの無人受付です。コスト削減のための省人化でも、採用できないことを嘆くのでもなく、採用しなくても医療が成り立つ形を先に証明しにいくという、逆転の発想です。実際に看護師長は九州で採用し、在宅で働くという形をまず自分たちで実践し、少数精鋭でも医療が届くことを日々証明しています。
遠隔で、無人で、時間通りに診るために
Q. 九州からの遠隔はどのようにしていますか。
上田先生: 最初から遠隔でしか話したことがなくて、看護師長の日高さんにクリニックで初めてお会いしたのは開業後です(笑)。でも違和感はありませんでしたね。
日高さん: 採用面接もリモートで、5か月間一度もクリニックに行かないまま開業準備を進めました。そもそも会ったことがない状態からのスタートでしたね。遠隔のやり方は、院長側と看護師側、2つのGoogle Meetに同時に入りながら、クリニック全体が見えるモニター、カルテ、受付機の画面を九州から確認して、次の動きを調整しています。みんなが一斉に話しかけてきても、「少し待ってくださいね」と声をかけながら、ひとりずつ順番に返しています。
Q. 時間通りに診るための工夫はなんですか。
日高さん: 検査が必要な患者さんがいれば先に検査を始めておいて、その間に先生が次の患者さんを診る、という順番の組み替えをGoogle Meetで声をかけながらコントロールしています。先生は、話を聞いてあれもこれもと答えたくなるタイプなので(笑)、そこをうまく組み替えていくのが腕の見せどころです。待ち時間の短縮が進み、今は1枠を20分から15分に組み直している最中です。
上田先生: 医師側も同じです。前から順番に処理していけばいいという発想から、先に検査を始めてその間に話を聞くという流れへの転換を、今まさに進めています。

Q. 無人受付で見えてきた課題はなんですか。
日高さん: 初診の方はほぼ全員が戸惑いますし、中には途中で帰ってしまう患者さんもおられました。ただ、LINEの案内文を改善し続けることで、自分で最後まで完了できる患者さんは着実に増えてきました。
待鳥さん: 運用面での反省でいうと、最初から完全な無人を前提に設計すべきでした。中途半端に人が対応しても成立しません。システムごと入れ替えるくらいの覚悟が必要だと感じました。
システムの選定基準と現場の声
Q. システムを選ぶとき譲れなかった条件とは。
待鳥さん: オンライン診療のしやすさ、キャッシュレス対応、スマートフォンだけで完結することなどですね。受付も電話もなくす前提だったので、人が目の前で対応しなければならない場面をできるだけ減らしたかったんです。
Q. CLINICSを選んだ決め手はなんですか。
待鳥さん: 仕事柄、メドレーのシステムの品質はもともと知っていました。加えて、コロナ禍でのCLINICSの開発速度ですね。あの機動力に、新しい会社だからこその技術力の強さを感じました。実際に使い始めてからも、要望を出すと事業部長と開発のトップが現場まで来て、スモールリリースで対応してくれました。そのフットワークの軽さは今も感じています。
Q. 実際に使ってみて印象はいかがですか。
上田先生: 予約・受付・カルテ・オンライン診療・会計まですべてがつながる一気通貫が一番の強みです。サポートも大体30分以内には返答があり、2〜3営業日かかる他社と比べると大きな差がありますね。スマート決済は、患者さんに帰っていただいたあとから点数計算ができる点が、うちのコンセプトに合っています。
日高さん: カルテのなかでオンライン診療が直接つながるので、患者さんへの案内が「アプリをインストールして、アカウント登録してください」の一言で済みます。レセプトチェックもエラーを検出してヘルプページで解説してくれるので、医療事務がいなくても対応できています。チャットや電話のサポートについても頻繁に問い合わせて迷惑じゃないかなと思うくらい使っているんですが(笑)、本当にレスポンスが早く、6月の診療報酬改定も、初日からヘルプが稼働していて安心でした。
Q. 経営データはどう活用していますか。
上田先生: 来院エリアと保険点数の単価を日々確認しています。前のクリニックではデータが1か月後にしか上がってこなかったので、当日分がダッシュボードですぐ見られることには驚きました。
日高さん: スタッフも全員が見ています。数字が見えると運営への意識が生まれて、「今日はあと何人お受けできそうか」という話題がスタッフから自然に上がるようになりました。

CLINICSとのこれから
Q. 今後の展望を聞かせてください。
待鳥さん: 複数拠点に展開しながら、大阪の医師が別の地域の患者さんを診て、その逆もある「バーチャル医療モール」を目指しています。このクリニックが、まさに最初の実証実験の場です。これから開業を考える方が出てきたときに、応用しやすい形で残していければと思っています。
Q. 開業を考えている方へメッセージを。
待鳥さん: まず「できない理由」を探さないことです。その発想を続けている限り、人手不足は止まりません。システムは1つの機能ではなく、総合で選ぶこと。手数料が気になるなら、現金管理のコストと比較するくらいの視点で考えてほしいと思います。
※所属・体制は取材時点(2026年6月)のものです。