Case
カルテ切替で駐車場渋滞も解消。待たせない診療の秘訣
滋賀県東近江市。田畑の広がる地域に泌尿器科・内科を掲げる「やましたクリニック」があります。院長の山下寛人先生は、泌尿器科の専門研鑽に加えて総合内科で2年学んだうえで2018年に開業。外来から在宅まで「最後まで責任を持って診る」ことを掲げ、内科疾患も幅広く引き受けています。開業から数年、患者数は着実に伸び、いまや1日約60名。それでも院長は、患者一人ひとりの次回計画を立てる丁寧な診療スタイルを崩していません。それを支えるのが、2021年にオンプレ型から切り替えたクラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」と、完全予約制を実現した「CLINICS予約」です。「会計待ちは5分もかかっていない」そう語る山下先生に、切替の経緯と、少人数で高効率を実現する運営の工夫を伺いました。

生まれ育った滋賀で地域医療へ
Q.まず、開業しようと思われたきっかけから教えてください。
山下先生:滋賀の田舎で生まれ育って、祖母が腰を悪くして医療にかかっていたのを見ていたこともあって、もともと医療には興味がありました。一方で、ものづくりや研究も好きで、研究者にも憧れていたんです。最終的には『地域医療をやりたい』『生まれ育った滋賀で働きたい』という気持ちが強くて、医師の道を選びました。
Q.比較的お若くして開業されていますよね。
山下先生:総合内科で2年研鑽を積むなかで、『自分で責任を持って、患者さんを最後まで診られる場をつくりたい』という思いが強くなったんです。もともと生まれ育った滋賀で地域医療をやりたい気持ちがありましたし、それなら早く独立して経験を重ねていこうと考えました。研鑽の2年は本当に楽しくて、いまも当時の仲間とつながっています。
Q.診療の特徴についても教えてください。
山下先生:泌尿器科が専門ですが、総合内科をやってきたので一般内科も診られます。そこに在宅医療をつないで、最後まで責任を持って診ます。病院では『治療がない』となると行き場がなくなることもありますが、そういうときに『家で診る』という選択肢を出せるのが大きいですね。田舎は在宅をやってくれる医療機関が少ないので、患者さんにもご家族にも喜んでいただけます。
オンプレの限界。
予約一体を条件に切替へ
Q.以前はオンプレ型の電子カルテをお使いでした。何に困っていましたか。
山下先生:診療報酬改定のたびに、院内でデータの更新作業をしないといけない。改定は6月などに重なるんですが、アップデートの案内が直前に届いたりして、めちゃくちゃ大変でした。サポートに聞いても返事が今ひとつで……。しかも終わりの頃は、製品のアップデート自体がほとんど入らなくなって、コロナ禍で次々に変わる制度に追いつけない。これはまずいな、と思いました。患者さんが増えて忙しくなるほど『家でも仕事をしたい』とも思うようになって、これは耐えられないな、と。
Q.切替の直接のきっかけは何でしたか。
山下先生:コロナ禍ですね。順番予約だと混む時間に患者さんが集中して、精神的にも潰れそうになったので完全予約制にしたかったんです。予約システムだけ別で入れる手もありましたが、どうせなら電子カルテ自体を変えたい、と考えました。当時、予約と電子カルテが一体で動く製品は、ごく限られていました。
CLINICSカルテで何が変わったか。
「自分でレセプトをやるから、見やすさと使いやすさで選んだ」
Q.最終的にCLINICSを選んだ決め手を教えてください。
山下先生:クラウド型の電子カルテを数社で比較しました。私は自分でレセプト点検までやるので、自分が使うことを前提に、画面の見やすさ・使いやすさで選びました。そこが一番だったのがCLINICSです。予約と一画面で全部見られるのもありがたかったです。
Q. 院長自らレセプトまで担われているとのことですが、事務スタッフの負担を抑えるために、どのような工夫をされていますか。
山下先生:診療に必要なレセプト入力は、すべて私自身が診察中に行っています。事務スタッフがレセプト業務に携わらなくてもよい体制にすることで、事務スタッフの負担を軽減するとともに、レセプト業務を習得してもらうための教育コストも抑えています。一方、患者さんを会計でお待たせしないため、カルテの入力はすべて診療後に行っています。後から一人ひとりの診療内容を振り返り、「次回はこれを確認しよう」「次はこの検査をしよう」といった今後の診療計画まで記載しています。正直なところ大変な作業ではありますが、患者さんの状態を改めて整理することで、私自身の理解も深まります。診療の質を高めるうえでも意味のある作業だと考え、続けています。
Q.クラウドに切り替えて、業務面で一番大きかった変化は何ですか。
山下先生:自宅でも作業ができること。これが最大のメリットです。アップデートも勝手にやってくれるので、自分で何かする必要がない。サポートのチャットも返信が早い。他社だと一日待ちが普通だったりするので、全然違います。
Q.機能のアップデートも頻繁ですよね。
山下先生:結構アップデートが入りますよ、本当に。前のカルテは終わりの頃には更新が止まって、置いていかれる不安があった。いまは新しい機能が次々に入って、勝手に最新の状態になっていく。自分で何もしなくても制度改定に置いていかれないのは、地味ですが本当に安心感が違います。

時間帯予約で院内も駐車場も待たせない
「会計待ちは5分もかかっていない」
Q.時間帯予約にして、いちばん変わったと感じることは何ですか。
山下先生:患者さんを待たせなくなったことです。時間帯予約なので、その時間に来てくれる。経営分析で見ても、時間帯あたりの患者数が一定なんですよ。順番予約の頃は、忙しい時間はありえないくらい忙しく、暇な時間は暇、という波があった。それがなくなったので、こちらも余計に疲れない。両方を体験しているから、この良さがよく分かります。
【補足】「順番予約」と「時間帯予約」は何が違う? |
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順番予約:来院・受付の順番に番号を取り、その順で呼ばれる方式。患者さんは受診する"時刻"を指定できないため、開院直後や混みやすい時間帯に来院が集中しやすく、待合や駐車場が一時的に溢れやすい。 時間帯予約:「○時〜○時の枠」をあらかじめ予約する方式。来院が一日を通して分散するため、時間帯あたりの患者数が平準化し、待ち時間や混雑が起きにくい。 やましたクリニックは、他社の順番予約からCLINICS予約での時間帯予約へ移行。これにより待ち時間と駐車場の混雑をまとめて解消しました。 |
Q.受付から帰るまではどのくらいですか。
山下先生:平均で30分くらいですね。診察内容が複雑な方はもう少しかかりますが、会計待ちは5分もかかっていないと思います。カルテをその場で完成させずに後から書くので、会計で待たせないんです。
混雑時には最大17台分の駐車場が溢れてしまうこともあったそうですが、時間予約制への移行で解消されたといいます。
経営分析はリアルタイムへ。
オンライン診療は売上の約1割に
Q.経営の数字の見え方は変わりましたか。
山下先生:これが本当に大きい。前のカルテは経営データをCSVでしか出せなくて、振り返るのも分析するのも手間だったんです。それがCLINICSだとパッと出る。しかも10年以上さかのぼって振り返られる。リアルタイムで経営が分かるのは、正直大きいです。
Q.オンライン診療はどのように活用されていますか。
山下先生:再診の患者さんに、ED薬やAGA薬といった自費診療をオンラインで提供しています。枠の時間を短くして入りやすくしているので、いまでは月の売上の約1割を占めるまでになりました。薬は院内処方に変えて、患者さんの好きな時間に取りに来てもらっています。説明もすぐ終わるので、非常に助かっています。
少人数でも事務が回る仕組みづくり
Q.院長お一人で、レセプトを含む主要な事務まで担われています。少人数で回すための工夫を教えてください。
山下先生:とにかく、仕組みで事務作業を減らすことです。CLINICSカルテはよく使う入力項目をセットで登録できるので、自分の診療に合わせて組んでおいて、診察しながらすぐ呼び出せる。画面も見やすいので、一人で算定入力までやっても滞りません。事務に残る作業はほぼ最小限で、あとは自分で完結できています。
Q.スタッフが操作で迷ったときはどうされていますか。
山下先生:ヘルプページが充実しているので、分からないことは現場でその場で検索して自己解決できるんです。だから操作を一から教え込まなくてもよく、教育の負担も人件費も抑えられている。少人数でも回せているのは、この「自分で調べて解決できる」環境が大きいですね。
田舎でも最先端。RPA・AIで業務改善
Q.先生は、RPAやAIを使った業務の自動化にも取り組まれていますね。
山下先生:半分趣味のようなものですが(笑)。勤怠や労働時間の集計表など、手作業だと骨が折れるものは、RPAやAIで自動化する仕組みを自分で作っているんです。CLINICSから出せるデータを土台にして、その先の集計や書類づくりを効率化する、という使い方ですね。田舎でも最先端のクリニックでありたいので、こういう工夫は楽しみながらやっています。
Q.そうした院長自身の工夫も、少人数の高効率運営を支えているんですね。
山下先生:そうですね。仕組みで巻き取れるところは巻き取って、スタッフには気持ちよく働いてもらう。空いた力を、患者さん一人ひとりの診療に向けたいんです。
これから。地域への思いと、切替を考える先生へ
Q.最後に、今後の展望を聞かせてください。
山下先生:どれだけ周りに貢献できるかを考えてやっています。相手にマイナスになることはできるだけしたくない。地域で頑張って、貢献し続けたい。田舎でも最先端のクリニックを目指して、いろいろ工夫しています。
Q.オンプレからクラウドへの切替を考えている先生へ、メッセージをいただけますか。
山下先生:どの先生も、カルテは後から書いていると思うんです。オンプレだと院内でしか作業できないから、夜遅くまで残ることになる。クラウドなら家に帰ってご飯を食べて、ゆっくり書ける。BCP(事業継続計画)の面でも、セキュリティをしっかり管理してもらえるクラウドのほうが、自分で管理するより安全だと私は思います。パソコンの台数を増やすときに追加費用がかからないのも、地味に大きいですよ。
※所属・体制は取材時点(2026年6月)のものです。