
オンライン診療のメリットと普及への課題 | 医療関係者向けに解説します
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、多くの注目を集めた「オンライン診療」。
どんなメリットがあるかよくわかっていない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、オンライン診療のメリットを患者側・医療機関側に分けてわかりやすく解説します。
また、オンライン診療が普及する上で解決すべき課題についてもまとめています。
「オンライン診療を受診したい」と考えている方も、オンライン診療の導入を検討中の方もぜひ参考にしてください。
関連記事:【医療機関必見!】オンライン診療の特徴から導入方法までわかりやすく徹底解説!
目次[非表示]
- 1.オンライン診療とは
- 1.1.オンライン診療に必要な機器・環境
- 2.オンライン診療のメリット
- 2.1.患者側のメリット
- 2.1.1.時間や交通費を節約できる
- 2.1.2.感染リスクを抑えられる
- 2.1.3.24時間いつでも予約ができる
- 2.1.4.自宅でリラックスして診察を受けることができる
- 2.2.医療機関・医師側のメリット
- 2.2.1.再診率の向上
- 2.2.2.事前問診により診療方針を立てやすい
- 2.2.3.患者さまの日常の様子がわかる
- 2.2.4.遠方の患者さまへのフォローが可能になる
- 3.オンライン診療の課題
- 3.1.通信不良により診察を行えない場合がある
- 3.2.対面診療に比べ収益性が悪い
- 3.3.オンライン診療に適さない病気もある
- 3.4.診断のための情報が十分に得られない場合がある
- 3.5.高齢者など機器の扱いに不慣れな人は受診が難しい
- 4.まとめ オンライン診療の今後
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オンライン診療とは
最近耳にする機会が多くなった「オンライン診療」とは、どんなものなのでしょうか。オンライン診療とは、実際に対面して診察する代わりに、スマートフォンやパソコンを用いて医師と患者さまが遠隔(オンライン)で診察を行う方法です。
最初に遠隔(オンライン)診療ガイドラインが策定されたのは1997年のことでした。当初は離島、へき地、在宅糖尿病患者の方が医療を受けられるようにというのが、制定のきっかけでした。
その後オンライン診療に関する制度が整えられ、、都心部においても多くの疾病のオンライン診療が受けられるようになっていきました。コロナ禍において、オンライン診療が注目されたことも記憶に新しいでしょう。
オンライン診療に必要な機器・環境
オンライン診療を行うには、診療に必要な環境を整える必要があります。
- オンライン診療システム
- パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器(カメラ・マイク付き)
- インターネット環境
主に上記が揃っていれば、オンライン診療を受けることができます。
ワイヤレスイヤホンやPC備え付けのマイクだと、音声が不安定な場合があるので、2,000円程度のヘッドセットがあると安心です。
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オンライン診療のメリット
オンライン診療に必要なものがわかったところで、オンライン診療を受けるメリットを理解するところからスタートしましょう。患者さま側、医療機関・医師側両方の視点に立ち、それぞれのポイントを解説していきます。
患者側のメリット
オンライン診療は、病院が近くにない地域に住んでいる方、仕事が忙しくて病院が空いている時間に休めないという方にとても便利な診療方法です。
ここでは、オンライン診療のメリットについて、以下の4つのポイントごとに解説していきます。
【患者さま側のメリット】
- 時間や交通費を節約できる
- 感染リスクや病状が悪化するリスクを抑えられる
- 24時間いつでも予約ができる
- 自宅でリラックスして診察を受けることができる
それでは、詳しく見ていきましょう!
時間や交通費を節約できる
通院の手間がかからないことは、オンライン診療を受ける大きなメリットと言えるでしょう。
遠方居住者にとっては、高い交通費や長い時間を費やして医療機関に通うことはストレスになってしまいます。オンライン診療はスマートフォンなどで手軽に受けられるので、家にいながら受診ができます。長期的な通院が難しい方にとっても嬉しいサービスといえるでしょう。
感染リスクを抑えられる
新型コロナウィルス感染リスクを避けるために一時的に規制緩和されたオンライン診療。
実際に病院に行かずに済むため、新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザや風邪などの感染症に罹患するリスクを下げることができます。
24時間いつでも予約ができる
オンライン診療は、24時間予約を受け付けているサービスが多いのがメリットです。営業時間外でも予約受付が可能ですので、忙しい方でも予約が可能です。
クリニックによって違いはありますが、希望の診療時間を選び、個人情報や問診表を記入すれば予約完了です。数分で予約をすることができますので、受診を後回しにしてしまう方は、ぜひオンライン診療を活用してみてください。
自宅でリラックスして診察を受けることができる
オンライン診療は、自分の都合に合わせて診察を受けることができます。それだけでなく、高齢の方は家族に付き添ってもらう必要もありませんから、ストレスを感じずにリラックスして受診することができるのです。
受診するためのハードルが下がると、継続的な治療につながります。結果的に病状の悪化を予防することになるため、継続的な治療は、医療側のメリットとも言えます。
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医療機関・医師側のメリット
患者さま側のオンライン診療のメリットが理解できたところで、ここからは、医療機関・医師側のオンライン診療のメリットについて、以下の6つのポイントごとに解説していきます。
【医療機関・医師側のメリット】
- 再診率の向上
- 事前問診により診療方針を立てやすい
- 患者さまの日常の様子がわかる
- 遠方の患者さまへのフォローが可能になる
それぞれ詳しく確認していきます。
再診率の向上
「仕事が毎日忙しくて、病院による暇がない……」
「土日は家族サービスでなかなか時間がとれない……」
こういった理由から、実際に通院・治療を継続できない患者さまは一定数います。
オンライン診療の場合、患者さまは自宅や外出先から診察が受けられるため、診療を受けやすくなります。結果として通院する負担から解放され、通院や治療の継続率が高まるのでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症が蔓延している昨今、院内感染リスクを恐れて通院をためらう人も多くなっています。オンライン診療なら自宅にいながら治療を継続できるため、病院側・患者さま双方に大きなメリットがあると言えるのです。
事前問診により診療方針を立てやすい
オンライン診療には、事前問診により診療方針を立てやすいというメリットもあります。
患者さまとの対面治療の場合、診察と問診は同じタイミングで行うのが一般的であり、混み合っている場合などは問診だけで時間がかかってしまうこともあります。オンライン診療では、オンラインで事前に問診を行いますから、データをもとに診察までに診療方針を立てやすいのです。
患者さまの日常の様子がわかる
オンライン診療では、患者さまの日常の様子がわかるメリットもあります。
慢性疾患の場合、医療が本来介入するべきフィールドは患者さまの日常生活と言われています。対面診察でも日々の生活の問診をし、生活リズムなどについて指導をしていますが、それだけでは不十分な点も多いのです。
対面診療は診察室で行われますが、オンライン診療は自宅で行われます。患者さまの実際の生活の様子をビデオ通話を通じてありのまま診られるので、患者さまの日常に沿った医療を提供しやすくなるでしょう。
遠方の患者さまへのフォローが可能になる
オンライン診療は本来、医療にアクセスにしくい地域の人々を救うために始まったものです。オンライン診療を活用することによる距離的な負担の軽減というニーズは、依然として大きいと言えるでしょう。
「引っ越しで、かかりつけの医院に通えなくなってしまった…」
「自分の症状を診られる医師近くにいない…」
このような悩みを抱える患者さまは実に多いのです。実際、改めて信頼できるかかりつけ医を探すことは大変ですし、人口の少ない地域の場合は医師が近くにいないことも往々にしてあります。
オンライン診療を利用すれば、医療機関から離れた場所にいても、医療サービスを受けられます。医療機関としても、今まで診ていた患者さまを失うことはなくなりますし、継続して治療を行えます。
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オンライン診療の課題
メリットの多いオンライン治療ですが、普及するためには解決しなければならない課題もあります。
ここからは、オンライン治療の課題についてもチェックしていきましょう。
以下のポイントごとにオンライン診療の課題を解説していきます。
- 通信不良により診察を行えない場合がある
- 対面診療に比べ収益性が悪い
- オンラインでは診療できない病気もある
- 診断のための情報が十分に得られない場合がある
- 高齢者など機器の扱いに不慣れな人は受診が難しい
メリットと比較しながら、それぞれチェックしてみてください。
通信不良により診察を行えない場合がある
通信環境の不良により、十分な情報のやり取りができないケースも多々あります。騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れるというのは、よくあるトラブルです。
実際にオンライン診療を取り入れた医院からは、オンライン診療に関するアンケートで、「オンライン診療の実施に当たって経験したトラブルがあれば選択してください(複数回答)」という質問に対し、以下のような点がデメリットとして挙がっています。
- 「通信不良により、診療が行えなかった」:36件
- 「通信不良により、コミュニケーションが十分取れなかった」:32件
参考:オンライン診療に関するアンケート集計結果 | 日本オンライン診療研究会
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対面診療に比べ収益性が悪い
対面診療に比べ収益性が悪いのも、オンライン診療の課題です。現状、オンライン診療は対面診察よりも診療報酬が低く設定されています。
システム導入や維持運用のための費用もかかりますので、対面診療から移行した際の報酬差が大きくなってしまうという現状があります。
オンライン診療に適さない病気もある
対面診療では実際に医師が症状を視診や触診・聴診することで病状を判断できますが、オンライン診療では問診に沿って自覚症状を確認することになります。そのため、オンライン診療は対面診療に比べると詳細な診察が難しく、病気によってはオンライン診療に適さないケースもあります。
【オンライン診療に適している例】
- 生活習慣病の継続治療
- 内科では病態が安定している花粉症・高血圧症
- 新規の症状の中でも軽度の咳嗽や湿疹等
【オンライン初診に適さない例】
- 定期的な対面診察・実際の検査が必要な疾患
- レントゲンや呼吸機能検査が必要な疾患
- 腹痛・胸痛・頭痛などの新規の急性症状
厚生労働省が都道府県ごとにオンライン診療を実施している医療機関のリストを作っているので、初めてオンライン診療を受ける方は、リストを確認してから医療機関にヒアリングしましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html
診断のための情報が十分に得られない場合がある
オンライン診療の場合、患者さまが医師と直接コミュニケーションを取れないため、対面診療で行う下記のような確認は難しいとされています。
- 患者さまの話とそれに伴う実際の様子のリサーチ
- 検査結果などから薬の効果が出ているか
- 薬の副作用が生じていないか
また、モニター越しに患者さまの状態を確認することになるため、触診はできませんし、直接見るよりも視診も難しくなります。尿、血液検査やレントゲン撮影などの各種検査もできないため診断ができないケースもあります。そのため、対面診療に比べると、患者さまの状態を正確に把握しにくいのです。
オンラインでも医師とのヒアリングの時間は取りますし、なにか不安なことがあれば質問も可能です。ただ、ひとつ前のデメリットと同じように、やはり継続的にはオンライン診療を希望するとしても、一度は対面診療を受診するのが良いでしょう。
高齢者など機器の扱いに不慣れな人は受診が難しい
オンライン診療にはビデオ通話を利用します。保険証確認やクレジット決済の登録なども行えることから便利だというメリットがありますが、オンライン機器を使い慣れていない人には操作が難しいでしょう。
- スマートフォンやパソコンなどオンライン機器の操作に不安がある高齢者
- ビデオ通話を使ってのやりとりに不安がある方
このような方は、オンライン診療を受診するのはまだまだハードルが高いと言えます。オンライン診療の操作が難しい方に向けて、電話診療サービスを提供してくれるクリニックもあります。不安がある場合は、一度相談してみてもいいでしょう。
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まとめ オンライン診療の今後
2022年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論が、9月22日の社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)で始まりました。
その中で「オンライン診療の活用の意義が一層高まっている」とされ、オンライン診療の診療報酬が見直される見込みです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21180.html
オンライン診療という新しい医療形態は、診察にとどまらず、人々の健康を支える予防医療の上でも期待できそうです。
「新たな生活様式」が求められる今後は、医療サービス提供の幅が広がることが予想されます。より一層、オンライン診療という新たな診療形態が浸透していくことになるでしょう。