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内科の開業医は過剰傾向?資金目安・年収・失敗しないためのポイントを解説

内科は開業医の数が多く、すでに過剰ともいわれる状況にあります。

しかし、地域ニーズに応じた診療体制や収益性の高い運営方針を明確にすれば、安定した経営を目指すことは十分可能です。

本記事では、内科開業に必要な資金や融資の考え方、平均年収、診療科別の収益差に加え、失敗を避けるための具体的な戦略までを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.内科の開業医は過剰傾向?
  2. 2.内科医院の開業資金について
    1. 2.1.開業資金の目安と内訳
    2. 2.2.融資はどれくらい受けるべきか
    3. 2.3.運転資金も確保しておこう
  3. 3.内科の開業医の平均年収は?
    1. 3.1.開業医と勤務医の年収差
    2. 3.2.【診療科別】年収比較
  4. 4.内科医院の開業で失敗しないための5つのポイント
    1. 4.1.1.何を診る・診ないのか、コンセプトを明確にしよう
    2. 4.2.2.既存クリニックを徹底的に調査する
    3. 4.3.3.専門特化であえてターゲットを絞るのも効果的
    4. 4.4.4.自院ならではの強み・特徴をしっかりアピールする
    5. 4.5.5.患者ニーズに合った診療体制で差別化を図る
  5. 5.まとめ

内科の開業医は過剰傾向?


地域医療の中核を担う存在として、多くの医師が開業を検討する内科。しかし近年、「内科はすでに開業医が飽和しているのではないか」といった声も聞かれます。果たしてその実態はどうなのでしょうか。

厚生労働省の「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、診療所に勤務する医師のうち、内科を主たる診療科とする医師は38,907人と、全体(107,348人)の36.2%を占めましたました。また、同省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、内科を標榜する診療所は全国に64,747施設あり、これは全体(104,894施設)の61.7%に相当します。

このように、内科は開業医の間で最も多い診療科の一つであり、地域によっては競合が集中しているケースも見られます。

ただし、「過剰」という状況は一律ではなく、一般内科のみを診るのか、循環器・消化器などの専門性を組み合わせるのかによって、開業のスタイルや戦略は変わってきます。

周囲の医療資源や地域ニーズを踏まえて、自院の方向性をどう定めるかが重要といえるでしょう。

内科医院の開業資金について

内科を開業するには、物件取得費や内装工事費、医療機器の導入費など、さまざまな初期費用が発生します。

資金計画を立てるうえでは、開業資金の総額だけでなく、その内訳や調達方法、開業後の運転資金まで視野に入れることが欠かせません。

ここでは、開業に必要な費用の実態と資金準備の考え方について解説します。

開業資金の目安と内訳

内科クリニックの開業資金は、診療内容や専門領域によって異なることから、5,000万円〜8,000万円程度と幅があります。

例えば、風邪や生活習慣病など、一般内科のみを標榜する場合は必要な医療機器が比較的限られており、開業資金も抑えやすい傾向です。

これに対し、消化器内科では上下部内視鏡やX線装置、脳神経内科ではMRIやCTなどが必要となり、設備投資額が一気に跳ね上がります。

また、循環器内科や脳神経内科のように高度な専門性を要する診療科では、開業後の認知・集患にやや時間がかかることもあり、初期の運転資金も多めに見積もっておく必要があります。

費用の内訳としては、
物件取得や内装工事などに3,000万円以上、医療機器や電子カルテ、受付・待合スペースの設備などに2,000万円以上かかるのが一般的です。

専門性を前面に出した診療体制を整える場合、開業資金がさらに高額になる可能性も考慮しておくべきでしょう。

融資はどれくらい受けるべきか

内科の開業では、多くの場合、5,000万円を超える初期費用が必要となるため、自己資金だけでまかなうのは現実的ではありません。

そのため、融資による資金調達が前提となりますが、借入額は開業形態や設備投資の規模によって大きく異なります。

一般的な目安は、開業資金の1割〜2割程度を自己資金として用意しておくことです。残りの資金は、金融機関や日本政策金融公庫などから借り入れるケースが多く見られます。

なかには自己資金ゼロで開業に臨む医師もいますが、クリニック開業では希望する融資額が多額になる傾向があるため、自己資金が極端に少ないと、融資審査において不利に働く可能性があることを十分に理解しておく必要があります。

開業準備段階から、金融機関と相談しながら無理のない資金構成を組み立てましょう。

以下の記事では、クリニックの開業資金調達に活用できる4つの融資を紹介しています。

運転資金も確保しておこう

開業準備では初期費用ばかりに目が行きがちですが、開業後の運転資金も忘れてはいけません。

診療が軌道に乗るまでには時間がかかることも多く、家賃や人件費、薬剤・消耗品の仕入れなど、毎月の固定費を安定してまかなう資金が必要です。

特に内科の場合は、地域に既存のクリニックが多く、患者が定着するまでに半年から1年ほどかかることもあり、その期間を乗り切る資金の見通しが重要となります。

したがって、最低でも6カ月分、可能であれば1年分程度の運転資金を確保しておくと安心でしょう。

内科の開業医の平均年収は?

開業には多額の初期投資が必要となる一方で、その分リターンも気になるところです。

ここでは、開業医と勤務医との年収差や、他の診療科との比較を通じて、内科での開業後にどれほどの収益が期待できるのかを見ていきましょう。

開業医と勤務医の年収差

まず、内科を開業した場合と勤務医の場合とで、年収にどれほどの差があるのかを確認していきましょう。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、内科勤務医の平均年収は約1,247万円です。

一方、厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、内科開業医の平均年収(損益差額)は約2,939万円に達しており、両者には倍以上の開きがあることが分かります。

ただし、この損益差額はあくまで経常的な収支上の利益であり、必ずしも医師個人の手取り額と一致するわけではありません。

また、実際の年収は、開業する地域や診療スタイル、患者層の違いによっても大きく左右されます。

したがって、開業すれば確実に上記の収入が得られるわけではなく、経営を軌道に乗せることが前提となる点には注意が必要です。

【診療科別】年収比較

開業医の年収は、診療科によっても差があります。以下の表は、厚生労働省の「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」をもとに、診療科別の損益差額をまとめたものです。

診療科
開業医(損益差額)
小児科
約4,460万円
産婦人科
約3,913万円
眼科
約3,673万円
整形外科
約3,633万円
外科
約3,199万円
耳鼻咽喉科
約3,116万円
内科
約2,939万円
精神科
約2,185万円

このように比較してみると、小児科や産婦人科、整形外科、眼科などの診療科では、内科よりも高い水準の年収が見られます。

最も年収が高い小児科と内科を比べると、その差は1,500万円以上にのぼります。

ただし、これらの数値はあくまで目安に過ぎません。1つの参考として捉えるのがよいでしょう。

内科医院の開業で失敗しないための5つのポイント

ここからは、内科の開業で失敗を避けるために意識しておきたい5つのポイントを解説します。

1.何を診る・診ないのか、コンセプトを明確にしよう

内科に限らず、開業時には「何を診るのか、診ないのか」という診療のコンセプトを明確にしておくことが大切です。

例えば、一般内科の外来診療を中心に据えるのか、循環器内科や消化器内科などの専門領域を加えるのかによって、必要な設備や人員、集患の方針が大きく変わってきます。

また、風邪や生活習慣病を幅広く診るのか、検査や健診に注力するのかによっても、患者層や立地の選定に影響します。

診療の方向性が曖昧なまま開業すると、集患やスタッフ配置で迷いが生じやすくなるため、標榜科目を含めたクリニックのコンセプトは、開業前の段階でしっかりと固めておきましょう。

2.既存クリニックを徹底的に調査する

開業地を決める際、「駅から近い」「人通りが多い」といった表面的な条件だけで判断してしまうのは危険です。

たとえ立地が良くても、周辺にすでに複数の内科クリニックが存在し、地域の医療ニーズが飽和していれば、思うように患者が集まらない可能性があります。

開業前には、既存クリニックの標榜科目や診療内容、診療時間、混雑状況などを詳細に調査し、地域内での役割をどのように担えるかを見極めることが重要です。

立地ありきで決めてしまうと、想定したポジションが取れず、経営に苦労することになりかねないので注意しましょう。

3.専門特化であえてターゲットを絞るのも効果的

競合が多い内科領域では、「何でも診る」スタンスでは他院との差別化が難しいこともあります。

そこで有効な方法は、循環器や消化器、糖尿病、感染症といった専門領域に特化し、あえてターゲットを絞る戦略です。

特定の疾患や症状にフォーカスすれば、情報発信や広告も明確になり、同じ悩みを持つ患者に届きやすくなります。

遠方からの来院や他院からの紹介につながる可能性もあり、患者の定着も期待できます。

4.自院ならではの強み・特徴をしっかりアピールする

競合が多いなかで埋もれないためには、「このクリニックならでは」と思ってもらえる明確な打ち出しが必要です。

例えば、内視鏡検査の即日対応、女性医師による診療、予約制を徹底した待ち時間の少ない診療体制など、他院では提供されていない価値を提示できると、患者の印象に残りやすくなります。

加えて、その強みを伝える方法も重要です。院内掲示やリーフレット、Webサイト、SNSなどを活用し、診療方針やこだわりを具体的に発信していきましょう。

サービスの差が見えづらい内科だからこそ、小さな違いの積み重ねが信頼や選ばれる理由につながります。

クリニックのマーケティングについて以下の記事で詳しく解説しています。

以下の記事では、集患対策をオンライン施策とオフライン施策に分けて解説しています。具体的な施策について知りたい場合にご確認ください。

5.患者ニーズに合った診療体制で差別化を図る

患者のライフスタイルや通院ニーズに合わせた診療体制を整えることも、差別化につながる重要なポイントです。

例えば、平日夜間や土日の診療枠設置、Web予約やオンライン診療の導入により、利便性を高める工夫が考えられます。

また、高齢者が多い地域では訪問診療や送迎サービスなどのニーズチェックが必要です。地域の住民が「このクリニックなら通いやすい」と感じる体制を整えることで、リピーターの確保や口コミの広がりが期待できます。

まとめ

本記事では、内科クリニックの開業に必要な資金の目安や年収の実態、失敗を避けるためのポイントについて解説しました。

内科は開業数が多く競争も激しい分野ですが、地域ニーズに合った診療体制や専門性の打ち出し方によっては、安定した経営が十分に可能です。

資金計画や診療方針をていねいに設計し、自院の特色を活かしたクリニックづくりを目指していきましょう。

執筆監修者:村田 卓也
執筆監修者:村田 卓也
(株式会社メドレー 医科診療所事業部 事業戦略室) メドレーでは、フィールドセールスマネージャーを務めチーム育成や営業戦略立案・実行に従事。診療所向けSaaS(診療システムCLINICS)の拡販を牽引し年間数百件の新規導入に関わる。現在は、「戦略推進室」にて、事業部の販売戦略とプロモーションを担うミッション担う。今後も現場と市場をつなぐ推進役として価値提供に努めてまいります。

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