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泌尿器科開業の需要増!押さえるべきポイントと年収事情を解説

泌尿器科は、加齢や生活習慣が原因となる疾患を多く扱う診療科であり、高齢化が進む日本において、今後も安定した需要が見込まれています。

とはいえ、実際に開業するとなると、資金計画や収益性、集患対策など気になる点が多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、泌尿器科の需要動向をはじめ、年収の実態や開業資金の内訳、成功するためのポイントまで、わかりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.泌尿器科の開業は儲かる?需要が急増している理由
    1. 1.1.超高齢社会に伴い泌尿器疾患を抱える患者増
    2. 1.2.泌尿器科単体で標榜しているクリニックが少ない
    3. 1.3.生殖医療専門の泌尿器科医が不足している
    4. 1.4.女性泌尿器科医のニーズが高まっている
  2. 2.泌尿器科の開業医の年収は高い?低い?
  3. 3.泌尿器科の開業資金と内訳
  4. 4.泌尿器科の開業で押さえておきたい5つのポイント
    1. 4.1.1.絶対数が少ないとはいえエリア・物件選びは慎重に行う
    2. 4.2.2.内装は患者に寄り添った設計を意識する
    3. 4.3.3.「泌尿器科」をアピールしすぎない集患施策が重要
    4. 4.4.4.訪問診療を導入し、他院との差別化を図る
    5. 4.5.5.他の医療機関と連携する
  5. 5.まとめ

泌尿器科の開業は儲かる?需要が急増している理由

泌尿器科はここ数年で需要が高まっており、今後の成長も期待される診療科の一つです。

高齢化の進行だけでなく、クリニックの少なさや専門医の不足といった背景も影響しています。

ここではまず、泌尿器科の開業ニーズが急増している理由を4つの観点から詳しく見ていきましょう。

超高齢社会に伴い泌尿器疾患を抱える患者増

日本では高齢化が加速しており、65歳以上の人口は全体の約3割を占めています。加齢とともに排尿機能が低下傾向にあることから、前立腺肥大症や過活動膀胱、尿失禁といった泌尿器疾患の患者数は年々増加傾向にあります。

実際に、厚生労働省が公開している「令和5年患者調査傷病分類編(傷病別年次推移表)」によれば、過去40年ほどの間に前立腺の悪性新生物(前立腺がん)の患者数は約13倍増加しました。

加えて前立腺肥大症の患者数も約2.5倍に増加しており、今後も増加傾向が続くことが予想されます。

こうした疾患に対しては、早期発見・早期治療の重要性が認識されつつあるものの、「恥ずかしい」「受診しづらい」といった心理的ハードルから医療機関の受診が遅れがちです。

そのため、気軽に相談できる泌尿器科クリニックの存在が、地域医療においてますます重要になっています。

今後、外来診療を中心とした泌尿器科の役割はさらに高まり、開業のタイミングとしても好機を迎えているといえるでしょう。

泌尿器科単体で標榜しているクリニックが少ない

現在、泌尿器科を専門に掲げているクリニックは全国的に見ても多くはありません。

診療所レベルでは、内科や皮膚科と併設されているケースが大半で、「泌尿器科専門」として地域で広く認知されている医療機関はごく限られています。

一方で、排尿に関する悩みを抱える患者は年々増加しており、それに応じた医療提供体制が十分に整っていない地域では、潜在的な需要が取りこぼされているケースも見受けられます。

特に中高年層の男性患者や、女性特有の排尿トラブルに悩む方々にとっては、専門性を前面に打ち出したクリニックの存在は心強い味方です。

このように、供給が限定的である現状は、開業を目指す医師にとってはビジネス上の追い風となるでしょう。

生殖医療専門の泌尿器科医が不足している

男性不妊に関する診療ニーズの高まりに対し、生殖医療を専門とする泌尿器科医の数は依然として限られています。

女性側の不妊治療に比べ、男性側の診療体制は整備が遅れており、総合病院でも専門医が常駐していないケースは珍しくありません。

特に精索静脈瘤の手術や無精子症の精巣内採取など、外科的処置を必要とする場面では、高度な専門性が求められます。

こうしたなかで、生殖医療に精通した泌尿器科医が地域に根ざして診療を行うことは、大きな社会的意義を持つといえるでしょう。

今後、男性不妊に対応できるクリニックの存在価値は着実に高まっていくと見込まれます。

女性泌尿器科医のニーズが高まっている

近年、女性患者による泌尿器科受診が増えるなかで、女性医師へのニーズが顕著になっています。

尿漏れや膀胱炎、骨盤臓器脱といった疾患はデリケートな症状であり、男性医師への抵抗感から受診をためらうケースも少なくありません。

特に中高年層の女性では、「同性の医師に相談したい」という声が根強く、医療機関の選定理由にも直結しています。

しかし、泌尿器科全体における女性医師の割合は依然として低く、供給が追いついていないのが現状です。

そのため、女性医師が開業する場合は地域差別化の要素になり得るほか、潜在的な患者層の掘り起こしにもつながります。

時代のニーズに応じた診療体制の一翼を担うものとして、関心が寄せられています。

泌尿器科の開業医の年収は高い?低い?


では、実際に泌尿器科を開業した場合、どれほどの年収が見込めるのでしょうか。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、泌尿器科の勤務医の平均年収は約1,079万円となっています。

一方、泌尿器科単体の開業医の年収は公的データはないものの、各種民間調査では開業医の年収はおおむね2,500万円前後と見られています。

以下は他診療科の開業医の平均年収と比較した表です。

診療科

開業医(損益差額)

小児科
約4,460万円
産婦人科

約3,913万円

整形外科

約3,633万円

外科

約3,199万円

内科

約2,939万円

泌尿器科

約2,500万円

精神科

約2,185万円

参照:中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告

このように、泌尿器科は他の外科系や小児科・産婦人科に比べて年収がやや低めではあるものの、勤務医と比較すれば倍以上の収入が期待できます。

特に継続処方や検査ニーズが多いため、外来中心でも収益性を高めやすい点が特徴です。

集患や経営体制を工夫すれば、さらなる収入アップも見込めるでしょう。

泌尿器科の開業資金と内訳

泌尿器科クリニックの開業には、おおむね8,000万円以上の初期費用がかかるとされています。

これはビルの賃貸料や内装費に加え、専門性の高い医療機器の導入コストが影響しています。

例えば、エコー装置、膀胱鏡、膀胱ファイバースコープなどは診療の柱となるため、導入を前提にした設備投資が必要です。

内訳は、
内装・設備で2,000万〜2,500万円、
医療機器に3,000万円、
保証金(賃貸借契約)に約500万円、
医師会入会金に約400万円、
人件費や広告費、
開業準備費用を含めた運転資金で2,000万〜2,500万円程度が目安となります。

事業計画を立てる段階では、初期費用に加えて開業後半年分の運転資金も含めて資金を確保しておくことが重要です。

泌尿器科の開業で押さえておきたい5つのポイント

泌尿器科の需要が高まるなかで、開業後に安定した経営を築くには、地域ニーズを踏まえた戦略が欠かせません。

ここでは、物件選びや内装設計、集患施策など、開業前に押さえておきたい5つのポイントを詳しく解説します。

1.絶対数が少ないとはいえエリア・物件選びは慎重に行う

泌尿器科を標榜するクリニックは全体として数が少ないものの、だからといってどこでも成功するとは限りません。

競合状況や地域の人口構成、周辺医療機関の診療内容などをていねいに分析し、ターゲットとする患者層が十分に存在するエリアを選定することが重要です。

また、物件はアクセス性や視認性、駐車場の有無なども含めて総合的に判断する必要があります。

診療内容がデリケートであるため、人目が気になりにくい立地や動線の工夫も求められるでしょう。

地域密着型の経営を目指すのであれば、地元住民の日常生活で利用しやすい場所を選ぶことがポイントです。

2.内装は患者に寄り添った設計を意識する

泌尿器科の診療は、患者にとってプライバシー性の高い内容を含むため、内装設計でも慎重な配慮が求められます。

例えば、受付と待合室の距離が近すぎると、症状に関する会話が他の患者に聞こえてしまい、不安や恥ずかしさにつながることがあります。

診察室からの会話漏れを防ぐためには、防音性の高い構造やドアの設計が不可欠です。

また、同じ疾患を抱える患者同士であっても顔を合わせたくないというケースは多く、患者同士が極力接触しないよう動線を分ける工夫も求められます。

特に女性患者への配慮としては、男女別の待合室を設けるなど、受診の心理的ハードルを下げる設計が効果的です。

さらに、泌尿器科では初診時にほぼ必ず尿検査を行うため、トイレは最低2室を設け、可能であれば尿流量測定装置と採尿提出が個室内で完結する設計を検討するとよいでしょう。

内装で注意すべき点について以下の記事でも解説しています。

3.「泌尿器科」をアピールしすぎない集患施策が重要

泌尿器科はデリケートな症状を扱う診療科であるため、過度な露出や専門性の押し出し方には注意が必要です。

特に、患者が来院をためらう一因になりやすい「泌尿器」という言葉を前面に出しすぎると、かえって逆効果になる可能性もあります。

集患施策としては、「健康相談」や「生活習慣病管理」など、やや広い切り口で情報を発信する方が入り口としては受け入れられやすいでしょう。

また、Webサイトやチラシなどの媒体では、症状別のページを設けて「頻尿」「夜間のトイレ」など具体的な悩みに応じた案内を加えることも効果的です。

4.訪問診療を導入し、他院との差別化を図る

現代の医療ニーズはますます多様化しており、特に高齢化社会の進展に伴い、通院が困難な患者層への対応は喫緊の課題となっています。

泌尿器科領域でも、前立腺肥大症、過活動膀胱、慢性腎臓病、あるいは終末期における排泄管理など、定期的な医療ケアを要するものの、身体的制約や移動の困難さから通院が難しい患者は少なくありません。

そうしたなかで、自宅や高齢者施設でのカテーテル管理や排尿トラブルへの対応といった泌尿器科特有の在宅医療を提供できれば、地域における信頼の構築につながります。

また、訪問診療の実施により診療報酬上の加算も見込めるため、経営面でのメリットも期待できます。

競合が少ないなかで訪問診療に対応している泌尿器科はまだ限られており、導入することで他院との差別化にもつながるでしょう。

地域包括ケアの一端を担う視点に立てば、検討したい取り組みであると考えられます。

訪問診療のスケジュール管理サービスについて、以下の記事で紹介しています。

5.他の医療機関と連携する

泌尿器科で対応すべき症状であっても、患者のなかには「どこに相談すればいいのか分からない」と感じ、まずは内科や他の診療科を受診するケースが一定数見受けられます。

そのため、地域の医療機関とあらかじめ情報共有を進め、紹介を受けられる関係づくりを行っておくことが重要です。

また、前立腺がんなどの悪性腫瘍では、外科手術や化学療法が必要となる場合もあります。

こうしたケースに備えて、基幹病院や専門施設との連携体制を整えておくことも欠かせません。

ほかにも、介護事業所や福祉施設と日頃からつながりを持っておくことで、異変が起きた際にスムーズに受診につなげやすくなります。

地域のクリニックや病院、介護施設と互いに紹介し合えるネットワークを築いておくことが、患者の受け入れ体制を広げることにもつながります。

まとめ


本記事では、泌尿器科の開業を検討する医師に向けて、需要増加の背景や開業資金の目安、年収の傾向、成功のためのポイントを詳しく解説しました。

泌尿器科は高齢化の進行や専門医不足といった背景から、今後も安定した需要が見込まれる分野です。

開業には一定の資金と準備が必要ですが、診療単価や継続性のある処方を背景に、収益面での見通しも立てやすい診療科といえるでしょう。

開業にあたっては、地域特性を踏まえた物件選定や、プライバシーに配慮した院内設計、他院との連携などを意識することで、持続的な経営が実現しやすくなります。

長期的な視点で地域に根ざした医療を提供していきましょう。

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執筆監修者:村田 卓也
執筆監修者:村田 卓也
(株式会社メドレー 医科診療所事業部 事業戦略室) メドレーでは、フィールドセールスマネージャーを務めチーム育成や営業戦略立案・実行に従事。診療所向けSaaS(診療システムCLINICS)の拡販を牽引し年間数百件の新規導入に関わる。現在は、「戦略推進室」にて、事業部の販売戦略とプロモーションを担うミッション担う。今後も現場と市場をつなぐ推進役として価値提供に努めてまいります。

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