
皮膚科開業は儲からないって本当?年収・開業資金・ポイントを解説
皮膚科医として経験を積むなかで、「いつかは自分のクリニックを持ちたい」と開業を検討される先生方も多いのではないでしょうか。
しかし、「皮膚科は儲からない」といった話を聞き、開業に踏み切るべきか悩んでいる方もいるかもしれません。
本記事では、そのような疑問や不安を解消するため、皮膚科開業医の年収のリアル、開業に必要な資金、成功のための具体的な戦略までを徹底解説します。
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皮膚科の開業は儲からないって本当?

「皮膚科で開業しても稼げない」「やめたほうがいい」
といった声を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
確かに、皮膚科はほかの診療科と比べて、収益構造が厳しいと感じられる側面があるのは事実です。
しかし実際には、皮膚科で高い収入を得ている医師も数多く存在しています。
では、なぜ「儲からない」というイメージが広まったのでしょうか。その背景を以下で詳しく見ていきましょう。
他科に比べてレセプト点数の平均単価が低い
皮膚科は、内科や整形外科などと比べて、診療報酬(レセプト点数)の平均単価が低くなる傾向があります。
これは主にアトピーや湿疹、ニキビなど、比較的軽度な疾患が多く、入院や手術を伴う高額な診療が少ないためです。
実際、地域差はあるものの、東京都の令和7年度データでは、皮膚科の平均診療点数は705点と、主要12診療科のなかで最も低い水準となっています。
医業収入は「レセプト枚数(患者数)×レセプト単価」で決まるため、
単価が低い皮膚科では、より多くの患者を効率よく診察する必要があります。つまり、「数」で稼ぐ構造です。
安定した収入を確保するためには、診療体制の効率化、スタッフの役割分担の見直し、待ち時間の短縮など、現場運営の工夫が欠かせません。
施設数が多く、競争が激化
皮膚科が直面しているもう一つの背景は、クリニック数の多さによる競争の激化です。
高額な医療機器を必要としないケースが多いため、初期投資が比較的少なくて済み、他の科目よりも開業しやすいという特徴があります。
そのため、全国的に皮膚科クリニックの数が多く、特に都市部では競合が密集しています。
人口あたりの皮膚科医も年々増えており、地域によっては患者の取り合いになることも珍しくありません。
こうしたなかで選ばれるクリニックを目指すには、他院との差別化が重要です。
例えば、ニキビや脱毛症など特定の分野に特化する、美容皮膚科のメニューを強化する、あるいは予約のしやすさや接遇レベルなど、患者満足度を高める取り組みが求められています。
皮膚科開業医の年収事情について

皮膚科開業医の年収は、クリニックの経営状況や診療内容、導入している自由診療の割合によって大きく変動します。
「儲からない」という一般的なイメージとは裏腹に、戦略的な経営と適切な集患対策を行うことで、勤務医時代を大きく上回る高収入を実現している開業医も少なくありません。
ここでは、具体的な年収の比較と、年収を大幅にアップさせるための有効な手段について詳しく解説します。
開業医と勤務医の年収はどれくらい違うのか
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、皮膚科勤務医の平均年収は約1,078万円です。
一方で、「第24回 医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」では、皮膚科開業医の損益差額は平均で約2,805万円にのぼり、数字だけ見ればその差は約3倍近くにもおよびます。
ただし、この金額はクリニックの売上から人件費や家賃、備品費、医療機器のリース料、ローン返済などを引いた「利益」に基づいて算出されたものです。売上が高くても経費がかさめば、そのぶん収益は圧迫されます。
また、開業初期は設備投資や借入の返済が重なるため、手元に残る金額が勤務医時代と変わらない、あるいは一時的に下回るケースも十分に考えられます。
自由診療の導入で大幅な年収アップも可能
皮膚科開業医が年収を大幅にアップさせるための最も有効な手段の一つが、「自由診療」の導入です。
保険診療は、その診療報酬が国によって厳しく定められているため、クリニック側が自由に単価を上げることはできません。
しかし、自由診療は、クリニックが独自に料金を設定できるため、高付加価値なサービスを提供すれば、大幅に診療単価を高めることが可能です。
例えば、シミ取りレーザー、ヒアルロン酸注射、ボトックス、美容点滴、ニキビの自費治療、さらにはAGA(男性型脱毛症)治療などの領域は、需要が年々増えています。
保険が適用されない分、自己負担での診療となりますが、それでも受けたいと考える患者が多く、安定した収益につながりやすいのが特徴です。
こうした自由診療を効果的に取り入れることで、皮膚科クリニックの収益構造は大きく変わる可能性があります。
皮膚科の開業にはいくらかかる?

一般的に、美容皮膚科を導入しない場合、開業にかかる費用は約5,000万円から7,000万円です。
一方、美容皮膚科の診療を行う場合、追加で1,000万円以上の資金が必要となるケースが多くなります。
これは、美容系の医療機器が高額であることが主な要因で、導入する機器の種類や規模によって、総費用は大きく変動します。
主な費用項目は以下の通りです。
- 内装工事費
- 医療機器導入費
- その他設備費(ホームページ制作費、コピー機など)
- 物件取得費(賃貸の場合)
- 広告宣伝費
- 運転資金
これらの費用は自己資金で賄いきれない部分がほとんどであるため、日本政策金融公庫や民間金融機関からの融資を活用することになります。
開業時に活用できる融資について以下の記事にまとめています。
皮膚科開業ではまずクリニックの方針を決めよう

皮膚科クリニックを開業する際、まず決めるべきなのは、クリニックの方針です。
保険診療をメインにして幅広い疾患に対応するのか、それとも美容皮膚科として自由診療を中心にするのか。あるいは、両方を組み合わせるのか。
この方針によって、内装や設備、さらにはマーケティング戦略まで大きく変わります。
もし自由診療を取り入れるのであれば、特に女性を意識した内装やアメニティが重要です。
例えば、清潔感のあるパウダールームや、メイク・ヘアセットのための設備を整えることで、患者の満足度が向上します。
また、近年は男性の美容意識も高まっているため、男性向けの施術を提供するのも一つの方法です。
いずれにしても、開業前に診療の方向性をしっかりと決めておくことで、その後の経営がスムーズに進みやすくなります。患者層に合ったクリニック方針を決め、戦略的に経営を進めましょう。
皮膚科開業を成功させるためのポイント

皮膚科を開業し、持続的に安定した経営を実現するには、医療サービスの質だけでなく、経営視点での戦略的な取り組みが欠かせません。ここからは、皮膚科の開業を成功させるために押さえておきたいポイントを5つ解説します。
立地を徹底的に調査する
皮膚科クリニックの成功を左右する重要な要素の一つが立地選びです。
単に人通りが多い場所を選ぶのではなく、ターゲットとする患者層が、アクセスしやすいかどうかを徹底的に調査する必要があります。
例えば、お子様連れが多いエリアであれば、ベビーカーでの来院がしやすいように駅やバス停からの距離、周辺の駐車場なども考慮しなければなりません。
また、競合クリニックの有無や診療内容、周辺の医療機関との連携可能性なども把握しておくことで、自院の強みを生かせる立地を見つけられます。
患者の通いやすさが、継続的な来院につながるため、開業地の選定は時間をかけて慎重に行うようにしましょう。
内装デザインは診療内容に応じて調整
皮膚科クリニックの内装は、提供する診療内容によって考え方が変わります。
保険診療を中心とする場合、患者の不安を和らげる落ち着いた雰囲気作りが重要です。
病気で来院される患者は、心に不安や緊張を抱えています。そうした患者の気持ちに配慮した環境を整えることが大切です。清潔感のある空間作りは大前提として、パステルカラーなどの優しい色合いや木目調などの自然な素材感を取り入れると良いでしょう。
一方、自由診療、特に美容医療を中心とする場合は、来院する患者の期待に応える上質な雰囲気作りが大切です。
高級感のある内装材を使用し、シックで上質なソファを配置したり、間接照明やシャンデリアなどで照明演出を工夫したりすることが効果的です。
設計会社との打ち合わせでは、理想のイメージをしっかりと伝えるようにしましょう。
過大な設備投資を避ける
クリニックを開業するときは、診療方針に合わせた機器や設備の準備が不可欠です。
しかし、よくあるのが過剰な設備投資です。はじめから高額な機器を揃えすぎると、その分初期費用が跳ね上がります。
資金を借り入れている場合、返済が重荷になって経営を圧迫しかねません。
無駄な出費を抑えるためには、まず診療に直結しない専門的な検査機器などは思い切って外部の検査機関に委託し、最低限の設備に絞る判断が重要です。
その際、リースやレンタルを活用することも検討しましょう。
また、クリニック運営では想定通りに患者数が伸びず、開業後しばらくは収支が安定しないケースも多々あります。
万が一に備えて、最低でも半年分の運転資金は手元に確保しておくと安心です。
効率的な診療フローを確立する
皮膚科は、比較的多くの患者が来院する診療科です。
だからこそ、診察の流れをいかにスムーズにするかが非常に重要になります。患者が受付から診察、そして会計を終えるまでの間に、無駄な時間を極力なくす工夫が必要です。
例えば、電子カルテを最大限に活用して診察スピードを向上させたり、来院前にWeb上で問診票を事前入力してもらうシステムを導入したりすることで、患者の待ち時間を大幅に削減できます。
また、スタッフ一人ひとりの動きや役割分担を常に確認し、チーム全員がスムーズに連携できるような体制を整えることも大切です。
こうした取り組みによって診療効率は大きく向上し、患者の満足度を高めながら、クリニック経営をより円滑に進めることが可能になります。
多角的なマーケティング施策を検討する
皮膚科を開業しても、ただ待っているだけでは集患にはつながりません。
現代では、数あるクリニックの中から患者に「選ばれる」時代になっているため、マーケティングを駆使したさまざまな集患施策が不可欠です。
なかでも最も効果的とされているのが、クリニックのホームページやブログです。
「皮膚科 ○○市」や「皮膚科 近く」といったキーワードで検索する患者が非常に多いため、検索結果に上位表示されれば、すでに受診を考えている意欲の高い患者層に直接アプローチできる可能性が高まります。
また、保険診療の場合、患者層は年齢や性別を問わず幅広いため、Webマーケティングだけでなく、地域に密着したオフラインでの施策も併せて考えることが重要です。
以下の記事では、クリニックの集患対策に効果的な方法を分かりやすく紹介しています。
まとめ
本記事では、皮膚科開業に関する年収、開業資金、成功のためのポイントを解説しました。
皮膚科開業は「儲からない」との声もありますが、戦略的な経営や自由診療の導入で、高い収益を得ることも可能です。成功するためには、タイミングや立地、スタッフの体制など、綿密な準備が欠かせません。
後悔のない選択をするために、早期の情報収集と計画が重要です。必要に応じて、専門家のサポートを受けることも検討しましょう












