
クリニック開業を成功させるには?流れ・費用・失敗回避まで徹底解説
クリニックの開業は、医師にとって新たな挑戦であり、大きな決断でもあります。
準備不足のまま進めてしまうと、開業後に思わぬ壁に直面し、後悔を抱えることにもなりかねません。
成功をつかむためには、正しい情報をもとに、社会環境の変化や最新の制度を踏まえた計画的な準備が求められます。
本記事では、クリニック開業までの流れや必要な費用、失敗や後悔しないためのポイントまで詳しく解説します。
これから開業を検討している医師の方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.クリニック開業を取り巻く社会環境の変化とは?
- 2.クリニック開業の流れを把握しよう
- 2.1.クリニックの構想の策定(開業の18カ月から12カ月前)
- 2.1.1.コンセプト決定
- 2.1.2.事業計画の策定
- 2.1.3.開業スケジュールの策定
- 2.2.場所・物件の選定(開業の12カ月から7カ月前)
- 2.3.設備の準備(開業の6カ月から4カ月前)
- 2.3.1.内装工事
- 2.3.2.医療機器の選定
- 2.3.3.各種システムの選定(電子カルテ、オンライン診療システムなど)
- 2.4.開業の準備(開業の3カ月から1カ月前)
- 2.4.1.行政機関への申請・届出
- 2.4.2.スタッフ・専門家の選定
- 2.4.3.集客施策の実施
- 3.クリニック開業に必要な自己資金はいくら?
- 4.クリニック開業で失敗・後悔しないためのポイント
- 5.まとめ
クリニック開業を取り巻く社会環境の変化とは?

クリニック開業をめぐる環境は、これまでと大きく変わりつつあります。開業医シフトの抑制や医師の地域偏在への対策が進み、従来よりも慎重な計画が求められる時代に入りました。
まず、最新の制度動向や規制強化の背景を確認していきましょう。
診療報酬制度の見直しによる「開業医シフト抑制」
近年、社会保障費の抑制に向けた動きが活発化するなか、政府は診療報酬制度の抜本的な見直しを進めています。
特に財務省は、病院勤務医から開業医へ人材が過剰に流れている現状に強い危機感を抱いており、開業につながるインセンティブを抑制する方向での制度改定を提案しています。
具体的には、特定の診療科や診療時間帯に対する報酬設定の見直し、医療機関の経営実態に応じた新たな評価基準の導入が議論されている状況です。
また、薬剤費を含む医療費全体の伸びが高止まりしていることを踏まえ、診療報酬単価の上昇にはこれまで以上に厳しい目が向けられており、実質的には報酬水準が横ばいまたは抑制される見込みです。
これにより、「患者数を確保すれば自然に利益が出る」時代は終わりつつあり、今後は診療効率やサービスの質、さらには自費診療などの経営的視点を組み込んだ収益設計が求められるようになっています。
地域偏在に対応する新たな開業規制の動き
医師の地域偏在は、長年にわたり日本の医療課題として取り上げられてきました。
特に近年は、都市部への医師集中と地方の医師不足が一層深刻化し、国は医療資源の偏在を是正するため、クリニック開業に関する制度の見直しを進めています。
これまで日本では、施設基準を満たせば原則として全国どこでもクリニック開業が可能な「届出制」が採用されてきました。
しかし、都市部での過剰な開業が問題視され、実質的に開業を抑える方向へと動き始めています。
具体的には、医師が過剰な「外来医師多数区域」では、地域で不足している診療機能の提供を要請され、それに応じない場合は保険医療機関としての指定期間が短縮される可能性があります。
一方、医師が少ない「医師少数区域」では、補助金や診療報酬加算、全国的なマッチング支援など、積極的な開業支援策が講じられる見通しです。
このような政策動向を踏まえると、今後は「どの地域で・どの診療科を・どのように運営するか」を地域ニーズや制度の方向性と照らし合わせて慎重に設計することが、持続可能なクリニック経営の鍵になるといえるでしょう。
クリニック開業の流れを把握しよう

クリニック開業を成功させるには、準備の流れを事前に把握し、計画的に進めることが重要です。開業までに必要な期間は一般的に1年半ほどとされ、段階ごとに行うべき準備があります。
ここでは、開業までの一般的な流れと各段階で必要な準備について詳しく解説します。
クリニックの構想の策定(開業の18カ月から12カ月前)
クリニック開業に向けた準備は、開業の18カ月から12カ月前を目安に始めるのが一般的です。この時期に取り組むべき準備は、次の3つです。
- コンセプトの決定
- 事業計画の策定
- 開業スケジュールの検討
それぞれの内容について、順番に詳しく解説します。
コンセプト決定
クリニック開業の出発点となるのが、コンセプトの明確化です。どの診療科に注力し、どのような患者層にサービスを提供するのかを、この段階で具体的に整理しておきましょう。
診療対象や診療時間、提供したい医療のスタイルを明確にすることで、物件選びや設備投資、スタッフ採用の方針にも一貫性を持たせることができます。
たとえば、高齢者向けの地域密着型クリニックを目指すのか、働く世代をターゲットとした利便性の高い診療所にするのかで、必要な設備や立地条件も変わってきます。
周辺地域の人口構成や競合状況を踏まえ、長く地域に求められるクリニック像を検討しましょう。
なお、ここで定めたコンセプトは、今後の事業計画や開業準備の軸となります。
事業計画の策定
クリニックのコンセプトが明確になったら、次はその内容を具体的な事業計画に落とし込んでいきましょう。
クリニックの理想像を実現するための設計図として、事業計画では必要な資金、収益の見込み、設備や人材の確保方針を整理します。
開業後の収支予測を立てる際は、初期投資やランニングコストを正確に把握し、来院が見込める患者数に基づいて現実的なシミュレーションを行うことが重要です。
周辺の診療圏調査や競合クリニックの分析も、このタイミングで進めておくとよいでしょう。
事業計画は金融機関からの融資を受ける際にも提出が求められるため、信頼性の高い数字と具体的な根拠を示す必要があります。
曖昧なままでは資金調達にも支障をきたすおそれがありますので、綿密に作成しておきたいところです。
なお、必要事項を漏れなく記載するためには、事業計画書のテンプレートを活用するのも効果的です。構成の参考にもなりますので、積極的に活用しましょう。
開業スケジュールの策定
事業計画と並行して、開業スケジュール(時期)の検討も必要です。
クリニックの開業スケジュールは、資金調達や物件確保の進捗、工事期間、行政手続きなどにも影響するため、早い段階で決めておきましょう。
季節によって患者の動きや診療ニーズが変わることも踏まえ、できるだけスムーズにスタートできる時期を見極めたいところです。
たとえば、春は新生活のタイミングと重なり、患者の流動性が高まる傾向があります。
一方、年末年始は工事や各種手続きが進みにくく、準備に時間がかかることも考えられます。
無理に早い開業を目指すのではなく、しっかりと準備期間を確保しながら、適切な開業時期を設定しましょう。
場所・物件の選定(開業の12カ月から7カ月前)
開業の約12カ月から7カ月前には、主に次の3つの準備に取り組みます。
- 開業場所の検討と決定
- クリニック物件の選定
- 資金の調達
開業場所の選定
クリニックの開業場所の選定は、経営の成否を分けるといっても過言ではありません。
ただ立地条件が良いという理由だけで決めてしまうのではなく、自院のコンセプトに合った地域性や患者層を慎重に見極める必要があります。
たとえば、住宅街であればファミリー層が多いかもしれませんし、オフィス街であればビジネスパーソンが多いといった特徴があります。
周辺にどのような医療機関があるか、競合の有無やその診療科も事前に調査しておくべき点です。
また、駅からのアクセス、駐車場や駐輪場の有無、近隣施設(スーパーや薬局など)の状況も患者の利便性に直結します。
このほか、人通りの多さや視認性の高さも、集患に大きく影響するでしょう。
こうした条件を総合的に判断するためには、診療圏調査を実施し、人口構成・年齢層・所得水準などを分析することで、ターゲットとする患者がどれくらい見込めるのかを具体的に把握することが重要です。
時間をかけて複数の候補地を比較検討しましょう。特に、長く地域に根差した運営ができるかどうかを慎重に判断してください。
物件の選定
開業場所が決まったら、次はいよいよ物件選びです。
物件には、戸建て、ビルテナント、医療モールなど複数の種類があり、診療科目や開業規模、予算に応じて最適なタイプを選ぶ必要があります。
戸建ての場合は、土地の購入費用も資金計画に含める必要があり、まとまった初期投資が必要です。
一方、賃貸物件であれば初期費用を比較的抑えられ、医療モールやビルテナントの活用も視野に入ります。
物件選定の際には、フリーレント(一定期間の家賃免除)の可否も事前に確認しておきましょう。
開業準備中は内装工事や医療機器の導入、各種手続きに時間を要するため、この期間の家賃支払いが発生しないかどうかは、資金計画に大きく影響します。
なお、医療物件に詳しい不動産会社や開業支援の専門家に相談すると、条件に合う物件を効率よく見つけやすくなり、契約上のトラブルも防ぎやすくなるため、専門家のサポートを活用しながら進めることをおすすめします。
資金調達
物件がある程度固まった段階で、資金調達を本格的に進めます。
クリニック開業に必要な資金は、数千万円規模になることが多く、自己資金だけでまかなうのは難しいケースがほとんどなので、金融機関からの融資を適切に活用することが重要です。
資金調達では、まず必要な資金総額を明確にしましょう。
主な費用には、物件取得費、内装工事費、医療機器の導入費、広告宣伝費、運転資金などが挙げられます。
自己資金は全体の1割〜2割程度を目安に用意し、不足分を日本政策金融公庫や民間金融機関、医師専門の融資制度を活用して借り入れるのが一般的な流れです。
金融機関との融資交渉では、収支計画や市場環境の根拠を具体的に説明できることが求められます。
特に開業後の運転資金が不足すると、安定した経営が難しくなるため、余裕を持った資金計画を立てておくことが大切です。
また、融資にあたっては保証人や担保の要否、返済期間、金利条件などもしっかりと確認しましょう。
医師専門の金融機関や開業支援実績のある銀行を選ぶことで、スムーズに融資が進む可能性が高まります。
以下の記事では、開業資金調達で活用できる融資4選を解説しています。借り入れのステップやローンの注意点にも触れているので、確認してみてください。
設備の準備(開業の6カ月から4カ月前)
開業の6カ月から4カ月前には、クリニックで使用する設備や環境の準備を本格的に進めます。
この時期に取り組む主な準備項目は、以下の3つです。
- 内装工事の実施
- 医療機器の選定・導入
- 各種システムの導入(電子カルテやオンライン診療など)
内装工事
クリニックの内装工事は、開業準備のなかでも特に重要です。
これは、患者に与える第一印象を大きく左右するからです。快適な空間づくりはもちろん、スムーズな診療動線やスタッフの働きやすさを考慮した設計が求められます。
診察室、待合室、受付、処置室など、各スペースの配置は事前にしっかり検討しましょう。
動線が複雑だと患者が戸惑ったり、スタッフの移動時間が無駄に増えたりする可能性があるため、使いやすく、分かりやすいレイアウトを意識することが大切です。
また、患者の滞在時間が長くなる場合には、照明や色使い、座席の間隔などにも配慮したいところです。
小児科や婦人科など、診療科目によって求められる雰囲気は異なるため、自院のコンセプトに合わせた空間設計を心がけましょう。
内装業者を選ぶ際には、クリニックや医療施設の施工経験が豊富な業者を選ぶことをおすすめします。
内装の設計段階から医療の現場を理解した提案を受けられるため、使いやすさにも配慮した仕上がりを実現しやすくなります。
開業までの限られた期間で、施工の質とスピードを両立するためにも、施工会社の選定は慎重に進めましょう。
医療機器の選定
クリニックで使用する医療機器は、診療の質と日々の業務効率に直結します。
物件の広さや診療科目に合わせて、導入する機器の種類や台数を計画しましょう。
開業時は、必要最低限の設備に絞り、段階的に導入を拡大する方がリスクを抑えやすくなります。
たとえば、CTやMRIといった高額な医療機器は、近隣の医療機関と連携することで、自院での購入を避けることも可能です。
無理にすべてを揃えようとせず、地域の医療体制とのバランスを考えた設備選定が大切です。
また、医療機器の選定は、複数のメーカーに見積もりを依頼し、価格や保守サポートの内容を比較することをおすすめします。
診療スタイルに合った使いやすい機種を選ぶために、メーカー担当者や医師仲間からの情報収集も役立つでしょう。
各種システムの選定(電子カルテ、オンライン診療システムなど)
クリニックの運営を円滑に進めるためには、電子カルテをはじめとした各種業務システムの導入が欠かせません。
紙カルテを使用する方法もありますが、業務の効率化や情報の一元管理を考えると、電子カルテの活用は今や一般的になりつつあります。
電子カルテは、予約管理やレセプト作成、診療履歴の確認など、日常業務を幅広く支える基幹システムです。
操作性やサポート体制、他システムとの連携可否など、細かいポイントを比較し、自院の診療スタイルに合うものを慎重に選びましょう。
近年はオンライン診療システムを導入するクリニックも増えています。
特に、この仕組みは、慢性疾患の患者の継続診療や、移動が難しい患者への対応に役立ちます。診療効率の向上や患者の利便性を考えるうえでも、検討しておきたい選択肢の一つです。
加えて、予約システムやWeb問診、キャッシュレス決済なども導入すると、受付業務の負担軽減やスムーズな診療につながります。
開業準備の段階で各システムの仕様やサポート内容をしっかり確認し、必要な環境を整えていきましょう。
開業の準備(開業の3カ月から1カ月前)
クリニック開業の3カ月から1カ月前は、最終調整の時期です。このフェーズでやるべき準備としては次の3つが挙げられます。
- 行政機関への申請・届出
- スタッフ・専門家の選定
- 集客施策の実施
行政機関への申請・届出
クリニック開業にあたっては、保健所や厚生局、消防署、税務署などへの各種申請が必要です。
開業日までにすべての手続きを完了しないと、保険診療の開始や医療機器の使用が認められない場合もあるため、注意が必要です。
代表的な手続きとしては、保健所への「診療所開設届」の提出が挙げられます。これは開業後10日以内に届け出ることが定められており、受理されなければ診療行為を始めることはできません。
そのほか、厚生局への「保険医療機関指定申請書」や、消防署への「防火対象物使用開始届出書」、税務署への「個人事業の開業届出書」など、複数の行政手続きがあります。
申請内容に不備があると開業が遅れる可能性もあるため、早めに準備を進めましょう。
スタッフ・専門家の選定
クリニック開業に向けて、スタッフや各分野の専門家を選ぶ準備も進めておきましょう。
特に、医療事務や看護師は日々の診療を円滑に行ううえで欠かせない存在です。必要な人数や業務範囲を事前に整理し、スムーズに採用活動へ移れるようにしておきたいところです。
採用の際には、経験や資格だけでなく、クリニックの診療方針や雰囲気に合う人材かどうかもていねいに見極めましょう。
開業後のトラブルを防ぐためにも、事前の十分な面談や業務内容のすり合わせが役立ちます。
また、クリニックの運営には、医療専門の税理士や労務管理を担当する社会保険労務士など、医療業界に詳しい専門家の協力も欠かせません。
給与計算や労働契約の整備、資金繰りの相談まで幅広く関わることになるため、相性や対応力をよく見極めて依頼先を決めましょう。
集客施策の実施
開業準備の最終段階では、クリニックの存在を広く知ってもらい、患者に来院してもらうための集客施策を具体的に実行します。
いくら質の高い医療を提供しても、その情報が患者に届かなければ来院は期待できません。
開業前のこの時期に、しっかりと種まきをしておくことが、スムーズな立ち上がりにつながります。
まず、クリニックの顔となるホームページの作成は必須でしょう。診療内容、医師のプロフィール、アクセス情報、診療時間など、患者が知りたい情報を網羅するように心がけてください。
最近では、オンライン予約システムをホームページに組み込むケースも増えています。
SEO(検索エンジン最適化)も意識し、地域名や診療科名で検索された際に上位表示されるよう工夫することも大切です。
加えて、Web施策だけでなく、チラシの配布や看板設置、地域に向けた内覧会の開催といったリアル施策も行いましょう。ターゲットとする患者層に応じて、複数の集客施策をバランスよく検討しましょう。
以下の記事でも開業スケジュールや、開業をスケジュールどおりに進める方法を解説しているので参考にしてみてください。
クリニック開業に必要な自己資金はいくら?

クリニックを開業するには、総額で数千万円規模の資金が必要になるのが一般的です。
このうち、自己資金として準備したい金額は、開業費用の1割〜2割が目安とされています。
仮に総額8,000万円を想定した場合、自己資金は800万〜1,600万円程度を準備するのが望ましいでしょう。
主な支出項目としては、物件取得費、内装工事費、医療機器の購入費、広告宣伝費、運転資金などが挙げられます。
これらを含めた総額を事前にしっかり見積もり、融資額と自己資金のバランスを具体的に計画しておくことが重要です。
金融機関との交渉では、自己資金の有無が融資審査に影響することもあるため、早めの資金準備を意識しましょう。
開業資金の費用内訳や診療科目別の開業資金について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
クリニック開業で失敗・後悔しないためのポイント

理想とする医療を提供し、安定した経営を継続していくためには、開業前の段階で押さえておくべき要素がいくつかあります。
ここでは、開業後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、特に注意したいポイントを詳しく解説します。
診療圏分析と競合調査を徹底する
診療圏分析や競合調査は、クリニックの安定した経営を目指すうえで欠かせない工程です。
適切な分析・調査を行わずに開業してしまうと、「患者が思うように集まらない」「競合との差別化が図れない」といった事態に陥り、経営が立ち行かなくなるリスクが高まるので注意してください。
診療圏分析の主な流れは以下の通りです。
- 診療圏の範囲を決める
- エリア人口を収集し、年齢層・世帯構成・所得水準を確認する
- 駅やバス停からの徒歩圏、駐車場の有無など、実際の来院可能エリアを明確にする
- 地域の医療ニーズや患者数の見込みを算出する
あわせて、競合調査もていねいに行いましょう。主に以下のポイントを整理します。
- 診療内容の確認
- 医師・スタッフ体制の把握
- 施設の設備・規模
- 診療時間・休診日の確認
- Webサイト・口コミの分析
これらの分析と調査を徹底することで、開業地の潜在的なニーズと競合の状況を正確に理解し、自院がどのような立ち位置で、どのような医療を提供すべきかという差別化の方向性を見出せるでしょう。
開業後を見据えた運転資金を準備しておく
クリニック開業にあたっては、初期投資だけでなく、開業後しばらくの運転資金も確保しておく必要があります。
開業直後は、患者数が安定するまで時間がかかることが多く、売上が想定より伸びない時期も想定しておかなければなりません。
運転資金として準備したいのは、最低でも6カ月〜1年分の固定費です。主に以下の支出を見込んでおきましょう。
- スタッフの給与
- 賃料
- 光熱費
- 医薬品・消耗品の仕入れ費用
- 医療機器のリース代
余裕のない資金計画では、開業直後に資金繰りに苦しむリスクが高まります。
金融機関との融資相談の段階で、運転資金も含めた計画をしっかり説明できるよう準備しておきましょう。
内装や設備は利便性・効率性を重視する
クリニックの内装や設備は、患者にとっての通いやすさと、スタッフが働きやすい環境の両方に大きく関わります。
デザインを優先しすぎると、日々の診療で不便が生じることもあるため、実際の業務フローを具体的にイメージしながら計画を進めることが大切です。
特に意識したいポイントは以下の通りです。
- 受付から待合室、診察室までの動線がスムーズであること
- 高齢者や車いす利用者に配慮したバリアフリー設計
- 医療機器や備品が効率的に配置されていること
診療科によって求められる動線やスペースは異なります。
内装工事を依頼する段階で、医療施設の設計経験が豊富な業者に相談し、使いやすい環境を細かく検討しましょう。
まとめ

クリニックの開業は、事前の準備をどれだけていねいに積み重ねられるかが、その後の経営を大きく左右します。開業スケジュールの策定から資金計画、物件・設備の選定、スタッフ採用、集客施策に至るまで、すべてが密接につながっていることを理解し、一つひとつ確実に進めていくことが重要です。
今回ご紹介したポイントを押さえ、地に足のついた開業準備を積み重ねていけば、地域に根差した信頼されるクリニックを実現できるはずです。しっかりと準備を進め、ご自身が目指す医療を形にしていきましょう。












