
電子カルテの市場規模や今後の展望は?普及率や導入手順も徹底解説!

電子カルテは、診療の効率化や医療情報の一元管理に役立つツールとして、全国の医療機関で導入が進んでいます。
国による医療DX推進の後押しもあり、市場規模は拡大を続け、2025年度には電子カルテの運用を前提とした電子カルテ情報共有サービスの本格運用も予定されています。
本記事では、電子カルテの市場規模動向や今後の展望に加え、導入時の手順や注意点まで、クリニック経営者が押さえておきたい情報をわかりやすく解説します。
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電子カルテ市場の動向と今後の展望
日本においても電子カルテを導入するクリニックが増えてきました。とはいえ、電子カルテ市場の今後の動向はどのように予測されているのでしょうか。
ここでは、世界、日本それぞれにおける電子カルテの市場規模や、その成長背景について解説します。
世界の電子カルテ市場規模と成長背景
世界の電子カルテ市場は、急速な成長を続けており、今後も市場は拡大する見込みです。株式会社グローバルインフォメーションのレポートには以下のような記載があります。
世界の電子カルテの市場規模は、2035年までの予測期間中に8.89%のCAGRで拡大し、現在の360億米ドルから2035年までに930億米ドルに成長すると予測されています。 |
世界的な市場拡大を後押ししているのは、各国政府による医療DX推進のための取り組みです。
例えば、アメリカやスウェーデンでは、国が主体となって医療情報を共有するためのプラットフォームの整備が進められてきました。
さらに、情報を集約するだけでなく、そのデータを分析・活用する動きも見られます。
各国は、医療DXを通じて医療の質向上や業務効率化といった共通課題の解決を目指しており、この流れは今後も変わらないでしょう。
電子カルテは今後もより高度な機能を備え、その市場を一層拡大していくと考えられます。
日本の電子カルテ市場規模と普及状況
日本の電子カルテ市場もまた、着実に拡大しています。株式会社グローバルインフォメーションの別のレポートには次のような報告があります。
日本の電子カルテ市場の市場規模は2024年に9億1,760万米ドルに達しました。今後、IMARC Groupは、市場は2033年までに17億2,250万米ドルに達し、2025-2033年の成長率(CAGR)は6.5%になると予測しています。 |
事実、厚生労働省の調査によると、電子カルテの普及率は年々上昇しています。
政府は2030年までにすべての医療機関に電子カルテを導入する方針を掲げており、今後も市場の拡大と普及の加速が予想されます。
日本で電子カルテの普及がすすむ背景とは

日本で電子カルテの普及が進んでいる背景には、政府の後押しと、社会構造の変化に伴う医療ニーズの多様化があります。
クリニック経営者にとって、電子カルテの導入は必須と言っても過言ではありません。
政府による医療DX推進施策
政府は医療DXを重要政策と位置づけ、電子カルテの普及を推進しています。
2030年までにすべての医療機関での電子カルテ導入を目指し、導入費用に対する補助金制度や、電子情報活用を評価する診療報酬加算などを設けています。
実際、病院に比べて、電子カルテの導入が遅れているクリニックでも、電子カルテの導入が進み、2023年の調査では初めて普及率が5割を超えました。
コスト面での負担が大きい医療機関への配慮として、低コストな「標準型電子カルテ」の運用も予定されています。
地域包括ケア実現の必要性
少子高齢化が加速する日本では、在宅医療や介護との連携が不可欠となっており、医療と介護を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が急がれています。
地域包括ケアシステムを機能させるうえで、患者情報のスムーズな共有は欠かせません。
電子カルテを活用すれば、医療機関はもちろん、薬局や介護施設など他の関連機関ともリアルタイムで情報を共有できるようになります。
患者一人ひとりに対して、継続的かつ質の高いケアを提供できる体制が整います。
電子カルテの特徴と種類をおさらい

電子カルテは、紙カルテよりも業務効率が良く、医療の質を向上させてくれるツールです。導入形態によって機能性やコスト面に差があるため、特徴を理解したうえで、自院に適した製品を導入するようにしましょう。
電子カルテ導入のメリットとは?
電子カルテを導入する大きなメリットは、情報共有が円滑になることです。
診療所内はもちろん、病院や薬局など他の医療機関とも迅速に情報をやり取りできるため、患者に対して質の高い医療を提供しやすくなります。また、過去の診療記録や検査結果もすぐに参照できるため、診断や治療の精度も高まります。
そして、紙カルテ運用に比べて、業務にかかる時間を圧縮できるため、医療従事者の負担も軽減できるでしょう。患者と向き合う時間を増やすことで、患者満足度の向上も期待できます。
さらに、ペーパーレス化による保管スペースの削減や、災害時のデータ保全性の高さも、今後のクリニック運営において見逃せないポイントです。
電子カルテの種類
電子カルテには、大きく分けてオンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
オンプレミス型は、院内にサーバーを設置してシステムを構築・管理するタイプで、カスタマイズ性が高い反面、初期費用や保守管理の負担が大きい傾向があります。
一方、クラウド型は、インターネット経由でサービスを利用するタイプで、初期費用を抑えやすく、サーバー管理の手間もかかりません。
近年では、導入の手軽さや運用の柔軟性から、クラウド型の電子カルテが主流となりつつあります。サポート体制が充実している製品を選べば、トラブルの際も安心です。
電子カルテ導入の4つのステップ
初めて電子カルテを導入する際は、何から始めるべきか迷うこともあるでしょう。
まずは、導入時の大まかな流れを押さえておくことが大切です。具体的には、以下の4つのステップがあります。
1.自院に必要な機能と予算を明確にする
2.複数の製品を比較する
3.電子カルテを選定し、機材の準備や各種設定を行う
4.マニュアルを作成し、スタッフに操作手順を指導する
難しく感じるかもしれませんが、不明点はベンダーに確認すれば丁寧に対応してくれます。
初期設定や、運用前の研修までサポートしてくれる製品を選べば、スムーズに導入できるでしょう。
電子カルテを導入する際のコツ
ここでは、電子カルテを導入する際に抑えたいコツを3つ紹介します。
導入後のミスマッチを防ぐためにも、ぜひ参考にしてください。
標準規格(HL7FHIR)への対応について確認しておく
国は、異なる医療情報システム間でのデータ交換を可能にするため、電子カルテの標準規格化を推進しており、特にFHIR(ファイア)への対応を重視しています。
2025年度中には、FHIRに基づいた電子カルテ情報共有サービスの本格運用が開始される見込みです。
将来的な制度対応を見越し、新たに電子カルテを導入する際は、製品が標準規格(FHIR)に対応しているか、あるいは今後対応可能かをベンダーに確認しておくと安心です。
複数のカルテを比較する
電子カルテは製品によって機能や操作性、費用が大きく異なります。
そのため、最初から一つの製品に絞らず、複数の製品を比較検討することが重要です。
各製品のパンフレットやウェブサイトで情報を集めるだけでなく、可能であれば無料トライアルやデモ版を実際に利用し、実際の使用感や自院の診療スタイルとの相性を確認しましょう。
例えば、「CLINICSカルテ」でも、操作感を試せるデモ環境を用意しています。
補助金の活用を検討する
電子カルテの導入には、初期費用や月額利用料などのコストがかかります。負担を軽減するためには、国や地方自治体による補助金制度の活用が有効です。
例えば、中小企業や小規模事業者向けの「IT導入補助金」は、電子カルテの導入時にも申請できる場合があります。
補助金の対象となる条件や申請期間、補助額などは年度ごとに異なるため、最新情報を確認してみましょう。
詳細については、以下の関連記事の中でも触れていますので、あわせてご確認ください。
まとめ
電子カルテ市場は、医療DXの進展とともに国内外で拡大を続けています。
日本においても2030年には全医療機関での導入が目標とされるなど、その重要性はますます高まっています。
電子カルテの導入は、業務効率化や医療の質の向上に貢献する一方で、計画的な準備や適切な製品選定が不可欠です。とくに今後は標準規格への対応がポイントとなります。
本記事で解説した市場動向や導入ステップ、選定時のコツを踏まえ、自院に最適な電子カルテシステムを選びましょう。












