前編「オンライン診療だからこそ 遠慮なく話ができる患者も」では、消化器内科教授の廣岡 芳樹 先生にオンライン診療を活用された感想やご意見を伺った。
引き続き、後編ではオンライン診療導入から医療機関での院内準備や活用のポイントについてお話を伺う。
ーここからは、オンラインでのセカンドオピニオンの実施検討から3ヶ月という異例のスピードで運用開始となり、さらに対面+オンラインでのセカンドオピニオン実施に至った経緯について、担当看護責任者をはじめ、担当スタッフのみなさんにお伺いしたいと思います。
ーまずはCLINICSを導入した経緯についてお聞かせください。
事務責任者:新型コロナの影響で全国的に受診控えが発生し、大学病院へも来院患者が減っていました。患者さんからも来院への不安や、オンライン診療を取り入れないのかといったご意見をいただいたこともあり、学園全体でオンライン診療を導入しようと決定したのが背景です。
実際に体制を構築していくにあたり、スピード感は重要なポイントでした。早急に立ち上げることを目標として、検討から3ヶ月で運用開始に至っています。
導入検討の段階で色々と調べたところ、すでに全国の多くの病院で導入実績のある評判や、他の医療機関の導入事例についてもお聞きできたので、メドレーのCLINICS導入を決めました。
ー大学病院の規模で3ヶ月という短期間での運用開始は、本当に類を見ないスピード感です。どうしてそのようなことが実施できたのでしょうか。
看護責任者:当院では新しいことを始める際、多職種で構成されたプロジェクトチームで議論を重ねて実行していきます。様々なシーンでチーム医療が尊重されるので、違う職種の人とよく顔を合わせる機会があります。
それがチーム力の所以かと思いますが、なによりも病院トップの考えが、私たちにもしっかり伝わってくるよう、指示命令系統がしっかりしていることですね。ミッションに向かって進みやすい環境があります。
ー普段の積み重ねが、コロナ禍でも実行力を発揮するきっかけになったのですね。具体的にはどのように準備を進めましたか。
事務責任者:前述の国際医療センターで実施していた海外向けのオンライン医療相談では、汎用的なウェブ会議ツールを利用していました。今回CLINICSを導入したのは、他院での評判もよく、画質が安定しており、独自でメニューが作成できること、何よりも決済が可能だったからです。CLINICSでは診療のフローに沿って必要な機能がシステム化されていますので、それに合わせるかたちでオンラインセカンドオピニオンの運用を整備しました。
ーシステムに合わせて運用を変えたことで、不都合はなかったのでしょうか。
看護責任者:対面のセカンドオピニオンでは患者さんが当日来院された際、看護師から注意事項等を直接説明できます。しかし、オンラインでは事前に説明が必要ですし、診療情報も取り寄せる必要があります。その他、どうしてもITリテラシーが高くない方もいらっしゃるので、このあたりをどうクリアしていくかは課題でした。
チームで相談し、事務スタッフが事前にお電話でご説明する際、Webサイトも使って説明ができるようにしました。CLINICSの登録方法はもちろん、対面時に看護師が口頭で行っていた説明を文字起こしして、web上でもわかりやすいように記載しています。
CLINICSは事前に登録したクレジットカードでの支払いとなるため、来院されない遠方の方からのお支払い方法が確立できたことは、逆にシステムを入れた大きなメリットでしたね。
オンライン診療完全ガイドブック
【完全ガイドブックの収録内容】
ーオンラインセカンドオピニオンを始めてまもなく、対面とオンラインのハイブリッド形式で実施できないか弊社へご相談をいただきました。
事務責任者:「患者さんのニーズを拾い上げたかった」という背景にあります。
CLINICSを導入することで、対面だけでなくオンラインという選択肢が提供できるようになりました。ですが、「対面かオンラインか」という患者さんに選択をしていただく状況では、既にどなたかが諦めている状況が発生している可能性があるとわかりました。
ご家族が遠方にお住まいのためオンラインで受ける場合、実は患者さんは対面で医師の話を聞きたいかもしれない。また、入院中の患者さん自身は来院できずご家族が来院する場合は、患者さんは自分の体に関することを自分自身で聞きたくても、家族に託して諦めるしかありませんでした。対面orオンラインの時点で、患者さんの選択肢を限定してしまっているのではないか、ということに気が付いたのです。
コロナ禍ということもあり県を越えた移動もしにくい状況のなか、対面andオンラインでセカンドオピニオンを実施することで満たせる患者さんのニーズがあるのではないかと考えました。
患者さんに対面とオンラインのハイブリッドで実施することのヒアリングをしたところ、ぜひやりたいというお声をいただきました。特に県外からで参加が難しい方がいる場合や、先程あげたようなケースです。患者さんのニーズがあるとわかり、早速プロジェクトチームから病院や学園側に提案をしました。
ーここもプロジェクトチーム発案なのですね。複数の院内のオペレーションを両立させるコツはあるのでしょうか
事務責任者:メドレーからの導入研修を受け、自分たちでも相当ロールプレイを入念に行い、事前準備も工夫しました。まずは、患者さんに自分たちが説明できるよう、しっかりと操作等を理解するところからはじめました。マニュアル化して誰が話しても同じように説明ができるようにしています。スムーズに進めるコツとしては、電話説明の時点でパソコン操作ができる方となるべく早く接触できるようにすることです。ご年配の方も多いので、わからないまま話を続けても、患者さんに不安が募ってしまいます。また、セカンドオピニオンの担当者と繋がる直通の番号をお伝えして、すぐに連絡がとれるようにすることで安心していただけるようにしています。
もう一つの大きなポイントは事務を担当制にしていることです。患者さんからお電話があった時に「担当の●●です」と対応できるようにしています。大きな病院では担当部署はあれど、毎回イチから説明したり、家族同士で言い分が違ったりすることもあります。専任担当が付くことで、全ての会話を集約することができ、円滑に物事を進めることができるのです。
ー対面+オンラインのセカンドオピニオンの場合、当日はどのようなフローになるのですか
事務責任者:事務の担当スタッフが二人いますので、一人が対面でいらっしゃった方の対応を、もう一人がオンラインの対応を行います。セカンドオピニオンには看護師が立ち合いますので、対面の方がいらっしゃったら担当看護師にバトンタッチをする。もう一人は事前にオンラインの準備をして、接続などのナビゲートを行います。単純に人手は2倍かかっている状況です。
ーそれでも実施する判断になったのですね
看護責任者:10月にオンラインセカンドオピニオンをはじめて、いくつか事例を経験したことに加え、なによりも患者さんからの声が大きな後押しとなりました。当院で治療を受けたい、話を聞きたいと思ってくれている人が、それを受けられない状況はできるだけ無くしたい、という病院としての想いがあります。もちろん人件費がかかっているので、料金設定の変更を検討する話もありました。ですが、我々は医療を提供しているのです。
患者さんは相談先を探し、不安を抱え、自分の治療選択に自信を持つためにセカンドオピニオンを受けます。我々が気付かないまま、患者さんの選択の幅を狭めるようなことはしたくありませんでした。患者さんから必要とされていることを、あくまでサービスとして実施することに対して、病院の理解があったことで実施できています。
患者さんに寄り添い、医療の満足度をあげる
ー実際に患者さんからはどのような反応をいただきますか
看護責任者:「遠方に住む家族がコロナ禍でもオンラインで参加できてよかった」「最初は対面希望だったが、オンラインで説明を受けることができ、移動の手間や費用が節約できた」といったお声をいただきます。なにより、対面、オンライン、対面+オンラインという選択肢があることで、自分の耳で先生の話を聞き、納得して治療に進むことができる環境をご提供できていると感じます。
事務責任者:対面+オンラインの場合、先生からのご説明が難しいのもまた事実です。当院では対面でいらっしゃった方を中心にお話することをベースとして了承いただいています。どちらの方にも完璧に満足いただくようにお話するのは難しい部分もありますが、選択肢が広がったことで確実に患者さんには喜んでいただけているようです。
1月からハイブリッド形式を開始しましたが、順調に実績もではじめています。毎月1〜2件のニーズがありますね。さらに、担当事務スタッフの説明を聞いて検討した結果、来院を選択される患者さんも増えました。現在はセカンドオピニオン全体のお申込みが増加しています。
ーまさに患者さんのためのチーム医療が実現できていますね
看護責任者:やはり県外からの患者さんは多いので、どこでも誰でも参加する機会を得ることができるのは大きなメリットがあることだと感じます。セカンドオピニオン後の患者さんの選択により、当院の治療をご希望いただいた場合でも、万全の体制で受け入れることができるため、画期的な仕組みになっています。
当初は不安な面もありましたが、こうやって患者さんの満足度が上がることで、“オンライン”セカンドオピニオンの導入は大きな意味があったと実感しました。
ー貴重なお話、ありがとうございました。
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