ーセカンドオピニオン実施前のオンライン診療に対するイメージを教えてください。
廣岡先生:「オンライン診療」という言葉自体は2年前くらいに初めて聞きました。それ以前、他の大学病院にいた頃には聞いたことがなく、近隣の中部地方の大学病院でも実施しているという話は聞いたことがなかったように思います。
普段の診察は患者さんの話し方や表情から、本人の不安や心配ごとを読み取りながら行うのが基本です。これがオンラインでどこまでやれるのかは正直心配な部分がありました。
ー実際にご自身で実施されて、印象はどう変化しましたでしょうか。
廣岡先生:当院ではCLINICSを活用したオンラインセカンドオピニオンを実施する以前に、国際医療センターで海外の方向けに遠隔のオンライン医療相談を実施していました。
新型コロナの流行前は来院される方も多かったのですが、今はそれが困難な状況となっていますので、中国の北京や上海、韓国の方を中心に二年間で約10人程度が利用されています。
海外の方とコミュニケーションを取るにはどうしても通訳を介すことになるため、お互いの話が本当に伝わっているのか少し不安に思いましたが、想定以上に表情を読み取ることができる印象を受けました。
その後、国内向けのオンラインセカンドオピニオンを開始しましたが、同じ言語でコミュニケーションが直接取れることで、お互いにとってよりよく、よりわかりやすく実施できると感じました。オンラインといえど、リアルタイムでの通信状況や機器が発達して、患者さんもオンラインのコミュニケーションに慣れてきていることもあり、思ったよりスムーズにできているのだと感じます。
オンライン診療完全ガイドブック
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ー先生がセカンドオピニオンを実施する際に工夫している点について教えてください。
廣岡先生:お話を始める時、患者さんの表情が固い場合もあります。病気の状況がシリアスなこともあるので注意が必要ですが、極力緊張をほぐすことは意識しています。
私の専門は膵臓がんや肝臓がんなど厳しい状況の方が対象になり、解剖学的にもわかりにくいことが多いです。わからないものに対して患者さんは不安を覚えますので、導入の過程で図解するなど、極力わかりやすい説明を差し上げるようにしています。
また、出来る限り表情を読み取りつつも、しっかりと「今の説明でよろしいですか?」「このまま続けてもよろしいですか?」など都度確認して、話のスピードを調整します。心がほぐれたのを感じたら、本題に入っていくようにしています。
セカンドオピニオンでは、新しい治療法など今わかっていることは全てお話するということが大切だと思っています。こちらはゆっくりと話しているつもりでも、患者さんは急に新しい言葉が出てきてショックを受けることもありますから、もちろん紹介状は読んだ上で、改めてしっかり私のほうで患者さんの状況を噛み砕いて、ひとつひとつ伝えるようにしていきます。
ーそういったことはオンラインでも実施できていますか。
廣岡先生:オンラインでも同じようなことができると感じています。むしろ、患者さんは近くにいないがゆえに、遠慮なくYES・NOが言える部分もあるようにも思います。目の前にすると遠慮してしまう、日本人的なところがあるのかもしません。対面+オンラインの形式でセカンドオピニオンを実施した際、ご家族が実際に来院されて、患者さんご本人はオンラインで参加されたことがありました。どちらにどう目線を配るかなど、若干迷う部分があったのは正直なところです。
しかし、患者さんには物理的な制約があって、こういった選択肢を取らざるを得ないこともあります。ご家族に託すだけではなく、自分の命に関する大切な説明を自分の耳で聞くことができるようになります。
対面+オンラインは需要としてかなりあると思うので、我々も医療者として技術の発展に慣れていくことで、患者さんに納得のいく選択をしてもらえるように努力していきたいです。
ー大学病院という組織でオンラインを取り入れていくことに対してどう思われていますか。
廣岡先生:大学病院というのは地域医療の中核で、ある程度離れた場所を含めた地方全体の医療圏を担っています。そのため、かなり離れた場所から来る方や、その中に移動をするのも大変という状況の方もたくさんいらっしゃいます。そのような場所でオンラインという形態を取り入れることは、診療をする者としての義務だとも思っています。時間はかかるかもしれませんが。
ー貴重なお話、ありがとうございました。
後編では、実施検討から3ヶ月という異例のスピードでオンラインセカンドオピニオンの運用開始、さらに対面+オンラインでのセカンドオピニオン実施に至った経緯について、担当看護責任者をはじめ、担当スタッフのみなさんにお伺いしたいと思います。
後編はこちらから
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