
クリニックの内装(デザイン)をどう作る?工夫すべきポイント
クリニックの開業準備を進めているものの、内装をどのようにすれば良いか迷っている方もいるでしょう。
内装の良し悪しは、クリニックの評価にもつながる要素の一つです。
この記事では、クリニックの内装をどのように作るのが望ましいかを解説します。
工事する際の注意点にも触れるので、開業を考えている方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.クリニックの内装(デザイン)が重要な理由
- 1.1.患者の不安が軽減される
- 1.2.さまざまな患者が利用しやすくなる
- 1.3.従業員がはたらきやすい環境を作る
- 1.4.クリニックとしての機能を高める
- 2.【照明】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?
- 2.1.自然光に近い色を取り入れる
- 2.2.人工照明で夜間診療に対処する
- 2.3.照明器具を入念に選ぶ
- 3.【待合室】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?
- 3.1.待ち時間のストレス軽減のための工夫をする
- 3.2.人と人が近づきすぎないようにする
- 3.3.待合室に観葉植物を置く
- 4.【診察室】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?
- 4.1.プライバシーに配慮する
- 4.2.待合室から診察室までの動線を工夫する
- 4.3.ベッドの素材やレイアウトに注意する
- 5.【機能性】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?
- 5.1.バリアフリーに対応する
- 5.2.ゾーニングを行う
- 5.3.トイレの設備にも目を向ける
- 5.4.システムの電子化・最新化を進める
- 6.クリニックの内装工事の進め方
- 7.診療科別の内装のポイント
- 8.クリニックの内装(デザイン)を考える際の注意点
- 9.まとめ
クリニックの内装(デザイン)が重要な理由

クリニックの運営において内装が重要とされている理由は、内装が患者とスタッフの双方に影響を与えるためです。
デザインや衛生面を重視することで、より適切な診察ができるようになります。
その理由について患者やスタッフ、クリニックの機能の観点から説明します。
患者の不安が軽減される
体調不良でクリニックを訪れる方は、少なからず不安を抱いているものです。
クリニックは、まず患者の不安を軽減させる役割を果たさないといけません。
そこで内装を上手く工夫して、患者がリラックスできる空間を作る必要があります。
緊張感が和らげば、診察もスムーズに進むでしょう。
加えてクリニックに求められるのは、清潔感や安心感です。
第一印象が良いと、患者のクリニックに対する信頼度も高まります。
さまざまな患者が利用しやすくなる
診療科目によって異なるものの、一般的にクリニックは老若男女さまざまな患者が訪れます。
どんな患者にとっても、利用しやすい空間を目指さないといけません。
例えば高齢者がクリニックを利用する際に、段差があちこちにあったら移動に不便を感じるでしょう。
段差をできる限り減らし、手すりを設置するといった工夫が必要です。
ほかにも乳幼児の利用を想定するなら、感染症対策を考慮した内装材と動線設計が求められます。
内装の素材やデザインに力を入れれば、多くの患者にとって快適な空間となり、満足度の向上につながります。集患にも良い影響を与えるでしょう。
従業員がはたらきやすい環境を作る
クリニックの内装を工夫することで、従業員にとってはたらきやすい環境が実現します。
特に重要となるのが、適切な動線の確保です。
レイアウトは、一度工事が完了してしまうと簡単には直せません。
事前にしっかりと計画を立てなければ、完成後に後悔してしまいます。
工事に取りかかる前から、できる限り具体的にレイアウトをイメージしておきましょう。
クリニックとしての機能を高める
患者の不安を解消しつつ、従業員のはたらきやすさを向上させる内装はクリニックの機能を高めます。
例えば、優れた動線設計は単に移動しやすくなるだけではなく、クリニック内の感染拡大を防げます。
バリアフリー化を意識すれば、患者のケガ防止にもつながるでしょう。
併せて医療機器を設置できるスペースの確保も重要です。
必要な医療機器の導入によりクリニックの機能を高めることで、クリニックの評価も高まり、さらなる集患が期待できます。
【照明】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?

クリニックの内装において、照明は無視できない要素の一つです。
照明を工夫するだけでも、患者の不安が緩和される可能性があります。ここでは、照明について詳しく解説します。
自然光に近い色を取り入れる
照明を選ぶうえで、まず押さえたいポイントは自然光に近い色を取り入れることです。
自然光とは太陽光に近い自然な光を指し、人が心地良さを感じやすいことから、気分向上やリラックス効果があると考えられています。
加えて色温度(光の色を数値で表したもの。色温度が高いほど青みがかった光になり、色温度が低いほど赤みがかった光になる)が高いと、診察に支障をきたす恐れがあります。
正確な診察を提供するには、3,500K〜4,000K程度の色温度を選ぶと良いでしょう。
クリニック内に直接自然光を取り入れるためには、大きめの窓を待合室に設置しましょう。
待合室に光が入りやすくなれば、明るい空間を実現することが可能です。
一方で、診察室では白に近い色を採用することをおすすめします。
室内に清潔感を与えるほか、患者の表情および肌の違いが区別しやすくなるためです。
人工照明で夜間診療に対処する
自然光に頼るだけでは、夜間診療に対応するのが難しくなります。
昼夜や天候に左右されず、一定の光を取り入れるには人工照明も併せて用いることが大切です。
特に診察時には、患者の状態を正しく検査するためにタスクライト(作業用の照明)が使われます。天井に照明を設置するだけでは、口内や体内を調べるには暗すぎます。
タスクライトも併用すれば、見えにくい部分の状態を細かく確認することが可能です。
とはいえ光の量が多すぎると、患者に不快感を与えてしまいます。
人工照明を用いるときは、光の量を自由に調節できるものを選びましょう。
診察室だけではなく、待合室の照明も明るさを切り替えられれば、より良い空間づくりが可能になります。
照明器具を入念に選ぶ
照明を選ぶときは、器具の種類にも目を向けましょう。
例えば待合室に吊り下げ式の照明を使うと、万が一地震が起きたときに落下する恐れがあります。
安全性を確保するにはシーリングライトなど、比較的落下しにくいものを選ぶと良いでしょう。
ほかにもLED照明を採用すると、消費電力が少なく節電にも有効といったメリットがあります。
除菌機能が付いている「除菌LED照明」を導入すれば、ウイルスやカビの抑制効果をもたらします。
各クリニックの用途に合わせ、適切な照明器具を選ぶことが大切です。
【待合室】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?

患者にとって、待合室は不安を感じやすい空間の一つです。
治療に対する不安もありますが、複数の人々が集まるので菌やウイルスによる感染を心配する人もいます。
こうした患者を安心させるべく、どのような内装(デザイン)が求められるかを解説します。
待ち時間のストレス軽減のための工夫をする
診察を待っている患者にとって、待ち時間はストレスを感じやすいものです。
クリニックが混雑していれば、名前を呼ばれるまで長時間待合室で待機しなければなりません。
こうした患者のストレスを軽減するべく、充実した設備が求められます。
具体例として挙げられるのが、テレビや本棚(雑誌コーナー)の設置です。
小児科であれば、子ども向けのアニメをテレビで流すこともおすすめです。
ほかにも待合室で音楽を流し、患者をリラックスさせるといった方法もあります。
ただし選曲には注意が必要であり、リラックス効果を与えるには静かに鳴り響くオルゴールなどが望ましいといえます。
人と人が近づきすぎないようにする
待合室のレイアウトを作るうえでは、人との距離を近づけすぎないようにする配慮が必要です。
特に内科の場合、人との距離が近すぎると菌やウイルスが感染してしまう恐れがあります。
そのためイスやソファーを設置するときは、なるべく間隔を広く取ってください。
L字型やコの字型に置いたり、円型のソファで患者同士が向き合わないようにしたりする方法があります。
隣や前後との距離を空けておけば、患者のストレス緩和にもつながります。
待合室に観葉植物を置く
待合室のデザインを高めるうえで、観葉植物の設置も検討すると良いでしょう。
緑色は目に優しいと考えられていますが、ここで注目したいのが光合成です。
植物は光合成により、室内の二酸化炭素を取り入れます。その際に新鮮な酸素を放出するため、空気清浄の効果も期待できます。
観葉植物を配置する際には、クリニック内のレイアウトとのバランスをしっかりと考慮しましょう。
加えて適切に管理しないと虫が湧いてしまい、むしろ待合室の環境を悪くする恐れもあります。種類選びだけではなく、正しい管理方法を押さえることも重要です。
【診察室】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?

診察室は、医師と看護師が患者と接する空間です。
医師が診察しやすい環境を作るとともに、患者側も安心して診察を受けられる環境を整えなければなりません。
動線確保も含めて、どういった内装が望ましいかを解説します。
プライバシーに配慮する
内科であれば、診察する際に衣服を脱ぐケースも少なくありません。
たとえ衣服を脱がない診察においても、周りから診察を受けている様子を見られることに、多くの方は嫌悪感を抱くでしょう。
そのため診察室は、プライバシーに配慮した設計にする必要があります。
さらに視線を遮るだけではなく、声が周りに聞こえてしまう状況も望ましくありません。
防音対策も十分整え、医師と患者の会話が筒抜けにならないようにしましょう。
プライバシー保護は、患者からの信頼を得るためにも重要です。
待合室から診察室までの動線を工夫する
内装を設計するにあたっては、待合室から診察室までの動線も工夫することが大切です。
クリニックを訪問する患者は、基本的に何かしらの体調不良を抱えています。
高熱が出ていたり、どこかケガしたりする場合は少しの移動もつらく感じるかもしれません。
待合室から診察室までの距離が遠く、移動しにくい状態では患者に負担をかけてしまいます。
患者への負担を軽減し、スムーズに診察するための動線確保を意識しましょう。
また、クリニック内で、患者とスタッフが接触するのは望ましくありません。
菌やウイルスによる感染拡大や接触による事故を防ぐためです。
できる限り患者とスタッフは、別の通路を使うように設計しましょう。
ベッドの素材やレイアウトに注意する
有床クリニックであれば、ベッドで診察することもあるでしょう。診察に使用するベッドを選ぶうえでは、素材に配慮しなければなりません。
寝心地が悪いと、診察を受けている患者は気分が悪くなる恐れもあります。
素材以外にもキャスターで移動できたり、転落防止の柵や手すりが付いていたりするものを選ぶなど、機能にも目を向けましょう。
またサイズがあまりにも大きすぎると、医師用のデスクと距離が近くなりすぎることもあります。診察室のレイアウトを考慮しつつ、バランスの取れたサイズを選ぶのがおすすめです。
【機能性】クリニックの内装(デザイン)をどう工夫する?

内装を考えるうえでは、クリニック全体の機能性も考慮しましょう。
誰もが利用しやすく、安全に過ごせる空間を目指すことが求められます。
クリニックの機能性を高める内装について紹介します。
バリアフリーに対応する
クリニックの機能性を高める要素の一つとして挙げられるのが、バリアフリーへの対応です。
バリアフリー法の改正により、原則として有床クリニックの新築・増改築時にはバリアフリー化が義務づけられています。
具体的にはスロープや手すりの設置、段差の解消、車いすユーザー用の駐車スペースの確保などが求められます。無床クリニックでも、条例によっては義務化の対象となるので注意しましょう。
仮に義務化の対象でなくとも、バリアフリー化に力を入れることで多くの患者が利用しやすくなります。
快適に過ごせるクリニックにすれば、患者からの信頼度も高まるでしょう。
ゾーニングを行う
クリニックの機能を高める内装として、ゾーニングを行うのも効果的です。
ゾーニングとは、患者のニーズに合わせて専用エリアやスペースを設けることを指します。
例えば小さい子どもを連れた患者に向けてキッズスペースを設けたり、高齢者のための椅子を設置したりする方法があります。
ゾーニングを工夫することで、どの患者も安心してクリニックを利用できるようにしましょう。
またクリニック内では、患者とスタッフの空間をできる限り離すようにしましょう。
ウイルスなどによる感染症の拡大を防ぐ必要があるためです。
トイレの設備にも目を向ける
待合室や診察室だけではなく、トイレの設備にも目を向けなければなりません。
特にトイレは、衛生面や清潔感が重視されます。
感染症対策にもつながるため、入念な掃除を心がけましょう。
トイレの音が待合室まで聞こえてしまうと、体調の優れない患者のなかには不快に感じる人もいるかもしれません。できる限り待合室との距離を離し、防音に配慮しましょう。
システムの電子化・最新化を進める
クリニックの利便性を高めるうえで、システムの電子化や最新化も検討しましょう。
現代においては、電子カルテや自動精算機など便利な機器が普及しています。
これらを導入し、使いこなせるようになれば業務の効率化が期待できます。
一方で、高度な機能を持つ医療機器や設備の導入が望ましいものの、機能に比例して高額になりがちです。予算と機能のバランスを考慮して、慎重に機器を選びましょう。
クリニックの内装工事の進め方

クリニックの内装工事を進めるには、以下の手順を踏むのが一般的です。
- どのようなデザインにしたいかイメージする
- イメージに合ったデザインを事例から探す
- 費用相場を確認し予算を確保する
- 工事の発注〜引き渡しを受ける
どのようなポイントに注意すべきか、手順ごとに解説します。
どのようなデザインにしたいかイメージする
内装工事を進める前に、まずはどのようなデザインにしたいかをイメージしましょう。
クリニックのコンセプトを踏まえ、具体的に計画を練っていきます。
ここで押さえておきたいのが、どの診療科目なのかで必要となる医療機器や設備も異なることです。
大型の機器を多数取り入れるのであれば、室内の広さも必要となるでしょう。
イメージに合ったデザインを事例から探す
デザインを考える際には、頭のなかでイメージするだけではなく、写真や画像でイメージを具体化することも重要です。
事前に施工会社の実績ページを確認し、デザインの参考にしましょう。
費用相場を確認しつつ予算を確保する
内装のイメージをある程度つかめたら、施工会社から見積もりをもらいます。
まずは内装工事にかかる費用相場をあらかじめ確認しておきましょう。
費用相場さえ確認しておけば、施工会社の提示する見積もりが妥当かどうかを判断できます。
施工会社から見積もりを提示されたら、次は予算を確保します。
場合によっては、融資を検討することもあるでしょう。
日本政策金融公庫であれば比較的低金利で融資してもらえますが、審査期間が長いといったデメリットもあります。
工事の発注〜引き渡しを受ける
依頼する施工業者が確定し、金額も定まったら工事契約を結びましょう。
作成した平面図や立面図をもとに、設備や造作の工事が進みます。
テナント工事・居抜き工事を依頼するときは、施工会社にカギを渡し忘れないように注意が必要です。
無事に工事が完了したら、引き渡しとなります。
内装の仕上がりを確認し、追加で工事してほしい部分があったら、担当者に相談してみるとよいでしょう。
以下の記事では、内装工事業者の選び方を紹介しています。
診療科別の内装のポイント
クリニックの内装を設計するには、診療科別のポイントも押さえる必要があります。
訪れる患者を考慮したうえで、どのようなレイアウトにするかを決めましょう。
例えば整形外科の場合、リハビリをする患者のための動線を確保することが大切です。
ほかにも小児科であれば、子ども同士でぶつかって怪我するのを防ぐべく、安全性に配慮しなければなりません。
診療科別の内装の詳しい内容については、以下の記事で説明しています。こちらも併せて参考にしてください。
クリニックの内装(デザイン)を考える際の注意点

クリニックの内装を考える際には、注意点がいくつかあります。
これらの注意点を守れていないと、医療に悪影響を及ぼしかねません。
ここでは、特に押さえておきたいポイントを4点紹介します。
多少コストが高くても信頼できる施工会社を選ぶ
施工会社を選ぶ際には、多少コストが高くても信頼できる会社を選びましょう。
見積もりをもらうと、どうしても費用の安さに目が行きがちです。
リーズナブルな費用を提示した会社に決めることが悪いわけではありませんが、工事の質を無視してはいけません。
むしろ費用相場から見て、あまりにも安すぎる金額を設定している施工会社には注意が必要です。
頼んでいない追加工事で、あとから多額の費用を請求されるケースもあります。
見積もりをもらうときは、必ず複数の施工会社に相談しましょう。そのなかで、最も信頼できると感じた施工会社に依頼してください。
電気・空調・水道に異常が出ないようにする
クリニックを管理するうえでは、電気・空調・水道にも目を向けましょう。
これらの管理の良し悪しが、患者の健康に影響が及ぶ可能性も少なからずあります。
特に夏場や冬場の、冷房や暖房の状態もチェックしましょう。室内を適切な温度に保てないと、患者の体調がさらに悪化してしまいます。
工事のスケジュールを入念に確認する
クリニックの内装を設計するには、工事のスケジュールを入念に確認することが大切です。
開業を決めたら、なるべく早い段階で計画策定に着手しましょう。
さまざまな理想を掲げていても、実現するのが難しいケースもあります。
内装を設計する際には、専門家や施工会社の意見を求めるのも良いでしょう。
遅くとも開業から約3カ月前には工事をスタートし、あわせてスタッフの募集や機器の準備を進めてください。
法規制をあらかじめ確認する
クリニックの内装を決めるうえでは、法律によってさまざまな規制が生じます。
例えば有床クリニックに該当する場合、法律上は特殊建築物として扱われます。
そのため防火戸や防火設備は、原則として必ず設ける必要があります。
ほかにもバリアフリー法や医療法、都道府県条例などによる規制も存在します。
法律や条例に違反していると、都道府県知事からの開設許可が下りない場合もあるので注意しましょう。
まとめ

クリニックの内装に力を入れると、患者のストレス軽減やスムーズな診察につながります。
あらゆる要素に着目し、ストレスなく診察を受けられる環境を作ることが大切です。
内装のデザインを決めるには、専門家や施工会社からの意見を参考にしながら、法規制にも配慮し、クリニックの開業に関わる法律をしっかりと確認しましょう。











