
眼科クリニックの開業で失敗しないために|資金・年収・成功のコツを解説
眼科は専門性が高く、必要となる医療機器が比較的高額になる診療科目です。
初期投資は大きいものの、保険診療を中心とした安定した収益が見込めることから、開業を目指す医師が多くいます。
この記事では、眼科クリニックを開業するために必要な資金、想定される収益、成功するための工夫、そして実例を踏まえた経営戦略までを網羅的に解説します。
目次[非表示]
眼科開業に必要な資金と年収の実態

眼科開業は高額な医療機器投資が必要です。その分保険診療を中心とした安定した収益が見込める診療科でもあります。
ここでは、眼科開業時に必要な具体的な資金の目安と内訳、眼科医の平均年収、収益構造について分かりやすく解説します。
開業資金の目安と主な内訳
眼科クリニックを新規開業する場合、一般的な開業資金の目安は 5,000万円〜8,000万円です。
これは土地・建物の取得費用、医療機器・内装工事費用、運転資金を含めた総額であり、診療内容やクリニックの規模によって変動します。
まず大きな割合を占めるのが物件取得費用(敷金・仲介手数料含む)であり、約3,000万円の費用がかかります。
さらに眼科は診療に欠かせない医療機器が高額です。具体的にはOCT(光干渉断層計)や眼底カメラ、静的視野計、スリットランプ、眼圧計などの機器の導入が必須であり、手術対応を行う場合にはさらに高額な手術用顕微鏡や超音波白内障手術装置などが必要になります。
これら医療機器の導入だけでも約2,000万円〜4,500万円の投資が必要です。
また、電子カルテや診察用ベッド、椅子、ソファ、待合室の内装、検査室の設計、バリアフリー化などの資金も必要です。
眼科は往診や訪問診療を行いにくく通院診療が主体であるため、立地条件が集患に大きく影響します。駅近などの好立地を選ぶ場合は、物件費用が高くなる可能性も考慮しなければなりません。
加えて、開業直後は患者数が不安定になりがちなので、家賃および人件費、医薬品費、水道光熱費など運営コストを賄えるだけの運転資金の確保が重要です。
無理のない資金計画を立てるためには、リースの活用や中古医療機器の活用、医療モールや居抜き物件での開業なども検討材料となります。
眼科医の平均年収と収益構造
眼科クリニックの収益構造は保険診療が主体であるため、比較的安定した収入を確保しやすい点が特徴です。厚生労働省の「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、2022年時点で個人医院の眼科(全体)の損益差額は年間3,165万円程度とされており、小児科に次ぐ高収益科目となっています。
一般的に眼科開業医の年収は約2,000万円〜3,000万円が目安です。診療効率や手術件数によってはさらに高収入を実現できます。
眼科は視力検査や眼鏡、コンタクトレンズ処方、白内障術後管理、定期検診など、保険診療の範囲で診療報酬を積み重ねることができるため、安定したキャッシュフローを確保できるのが特徴です。
また、視能訓練士(ORT)を採用しスムーズな検査運営を行うことで、患者の回転率を高め、効率的な診療による収益アップが可能です。
特に高齢化社会の進行に伴い白内障・緑内障の診療ニーズは今後も増加が見込まれ、長期的な収益基盤を築きやすい環境があります。
ただし、高収益を目指すためには視能訓練士や看護師、医療事務スタッフの適切な配置、診療内容の差別化、地域の患者ニーズに合わせた戦略的運営が不可欠です。
近年ではホームページやSNSを活用したWebマーケティングも集患強化に重要な役割を果たすため、開業前から収益構造と診療内容の両面で戦略的な準備を行うことが成功への近道となるでしょう。
このように、眼科クリニックは高額な機器投資が必要である一方で、安定した保険診療主体の収益構造により、高収益経営を実現しやすい診療科です。
開業時は地域ニーズや診療方針に合わせた設備投資、資金計画、運営計画を綿密に立てることが、長期的な収益性の高いクリニック経営につながります。
成功する眼科開業のための5つの戦略

眼科クリニックは比較的高収益が期待できる一方で、競争も年々激化しています。
ここでは眼科開業を成功させるために「差別化」「回転率向上」「予約管理の最適化」「スタッフ体制の構築」「機器選定」の5つの戦略を解説します。
周囲と差別化する診療コンセプト
眼科は診療内容が幅広いため、開業時には自院のコンセプトを明確に設定し、周囲のクリニックとの差別化を図ることが重要です。例えば、小児眼科に力を入れて学校健診後の精密検査や近視進行抑制治療まで一貫して対応する、白内障手術後の継続的なフォロー体制を整備する、近年増加傾向にあるドライアイ診療に特化するなど、地域ニーズや院長自身の専門性を活かした診療コンセプトの打ち出しが有効です。
競合クリニックが多い地域であっても、患者が「ここで診てもらいたい」と感じる理由を提供することが来院に直結します。
加えて、コンタクトレンズ処方を主軸にする場合でも、単なる処方に留まらず適切な診断および定期検査と眼病予防啓発をセットで提供するなど、サービス価値の付加が継続的な来院につながります。
回転率と効率性の設計
眼科クリニックは検査数が多く、診療回転率が収益性に直結します。
そのため、開業前から効率的な動線設計や検査フローの構築が欠かせません。視力検査や眼圧検査、OCT撮影、視野検査といった検査の導線を短くし、患者が院内で無駄な移動をしなくて済む配置を心がけることが重要です。
また、来院時の受付混雑を軽減するために問診票の事前Web入力を導入し、来院後すぐに検査へ移行できる仕組みを整えることも効果的です。
検査スタッフや視能訓練士を適切に配置し、検査を迅速かつ正確に行う体制を整えることで患者待ち時間の短縮、回転率の向上、ひいては患者満足度の向上にもつながります。
検査・診察予約のオンライン化
患者満足度を高めつつキャンセル防止にも役立つのがWeb予約やLINE連携によるWeb予約システムの導入です。
スマートフォンで簡単に予約ができる環境を整えれば若年層から高齢者まで利用しやすくなり、院内の待ち時間短縮や予約枠管理の最適化につながります。
近年、高齢者のインターネット活用率が上昇しており、診療案内や予約ページの使いやすさが集患力において重要なポイントとなっています。
また、LINE公式アカウントとの連携により通院のリマインドを自動送信することで無断キャンセルを減らし、予約枠の有効活用を実現できます。
予約管理の最適化は眼科の安定経営に大きく貢献するポイントの一つです。
診察予約システムについて、以下の記事で詳しく解説しています。
スタッフ採用と教育体制
眼科クリニックの運営には視能訓練士(ORT)や検査スタッフ、医療事務スタッフ、看護師など多職種の協力が不可欠です。
特に視能訓練士の確保は眼科診療の効率化と質の維持に直結しますが、全国的に人材が不足しており、開業前から採用計画を立て、条件面や教育体制の整備を進めておくことが求められます。
また、接遇教育も重要であり、患者対応の質はクリニックの評判に直結します。
定期的なロールプレイングや接遇研修を行うことで、院内全体のサービスレベルを底上げし、患者満足度を向上させることが可能です。
スタッフが安心して長期勤務できる環境を整えることも安定した運営の鍵となります。
初期投資と機器選定のポイント
眼科には高額な医療機器投資が必要ですが、不要な高額機器を導入して資金繰りを圧迫しないよう、開業前に導入機器を慎重に選定する必要があります。
白内障手術を行うかどうかで必要機器や導入費用は大きく変わるため、自院の診療範囲を踏まえて取捨選択しましょう。
また、OCT(光干渉断層計)や視野計、眼底カメラなどの基本機器は必須です。機種によっては中古機器やリースの活用で初期費用を抑えられます。診療効率および診断精度、患者ニーズのバランスを考え、回収可能な範囲内で戦略的に機器投資を行うことが、長期的に安定した経営につながります。
眼科クリニックの成功事例

地域特性を踏まえた診療内容の差別化、効率的な診療体制の構築、スタッフの質の向上は、どの地域で開業する場合でも欠かせない要素です。
ここでは地域密着型から都市型の専門クリニックまで、実際に成功を収めている眼科クリニックの取り組みを紹介します。
白内障や緑内障に特化したクリニックというイメージを構築
高齢化社会において白内障や緑内障の治療はニーズが高く、定期的な受診が必要となることから安定した集患につながります。
そのため、眼科クリニック開業時にこれらの疾患管理や治療に特化した診療コンセプトを打ち出すことは有効です。
実際に、眼科クリニックのなかには、白内障や緑内障に関する情報をWebで発信し、安定した集患につなげているところがあります。
このような発信とともに視力管理プログラムや定期検査を提供すると、患者が安心して通院できるクリニックになるでしょう。治療内容の分かりやすい資料提供や生活指導は、患者からの信頼獲得につながるはずです。
このようにニーズの高い疾患に焦点を当てて、自院の強みを作ることができると安定した経営につながります。
予約システムを導入し診療効率化と待ち時間短縮を実現
予約システムを活用した診療体制の効率化は、高収益と患者満足度の両立を実現する重要な戦略です。
特に、眼科クリニックは検査数が多く患者滞在時間が長くなりやすいため、予約システムの導入と運用最適化は診療効率化と待ち時間短縮に直結します。
眼科クリニックのなかには、Web予約およびLINE予約、電話予約など複数チャネルを活用して各患者が予約しやすい体制を構築している例があります。
患者が院内にあるタッチパネル式の予約機を使えるように、スタッフによるレクチャーを続けると、さらに予約業務を効率化できるはずです。
待ち時間が長くなりやすい眼科だからこそ予約システムをはじめとするITツールを導入し、中長期的な業務効率化を目指す必要があります。
予約を効率化できると、再診率向上も期待でき、安定した経営につながるでしょう。
まとめ

眼科は、比較的高収益を見込める診療科である一方で、高度な医療機器投資や専門性の発揮が不可欠な分野です。
開業時にはOCTや眼底カメラ、視野計などの高額機器の導入が必要であり、診療効率を高めて回収計画を立てることが安定経営の土台となります。
さらに、地域で選ばれるためには白内障および緑内障管理、小児眼科、ドライアイ診療など診療コンセプトの差別化がポイントです。
差別化は周囲の競合との比較において優位性を示し、患者の来院動機を高め、口コミによる集患にもつながります。
また、検査や診療動線の設計、Web予約、LINE予約などIT活用による診療効率化は、回転率の向上、患者の待ち時間短縮、スタッフの負担軽減を実現し、収益性と患者満足度の両立を可能にします。
眼科開業は決して簡単ではありません。
しかし、専門性を活かした診療と効率的な運営体制、そして患者視点に立ったていねいな対応を重ねることで、地域に信頼され、持続的な成長が期待できます。
これから眼科開業を検討する際には、資金計画、機器選定、診療体制、差別化戦略を入念に検討し、長期的な視点で収益と地域貢献の両立を実現できるクリニック運営を目指しましょう。











