【最新版】リフィル処方箋とは?日本の現状や導入メリットやデメリットについて解説します!
2022年の診療報酬改定に伴い「リフィル処方箋」が日本でも導入されました。欧米ではすでに導入・運用されているシステムで、患者の健康維持が難しくなるとの懸念もあり、医療業界において大きな注目を集めています。
当記事では、リフィル処方箋の概要や現状、メリット・デメリットについて解説します。
目次[非表示]
- 1.リフィル処方箋とは?
- 1.1.分割調剤との違い
- 1.2.リフィル処方箋の対象となる薬品
- 1.3.リフィル処方箋の回数・期間
- 1.4.リフィル処方箋の現状
- 2.リフィル処方箋の3つのメリット
- 3.リフィル処方箋のデメリット
- 3.1.1.医療事故・健康被害の懸念
- 3.2.2.収入の低下
- 3.3.3.医薬品転売の恐れ
- 4.リフィル処方箋の導入による影響
- 5.リフィル処方箋の課題
- 6.まとめ
リフィル処方箋とは?
「リフィル」とは、補充用物品という意味です。これまで薬を処方する場合、医師が必ず患者を診察したうえで、決められた日数分しか処方できませんでした。
しかしリフィル処方箋では、一定期間内あるいは一定回数内であれば、医師は診察なしで薬を処方することができます。
したがって、処方のためだけの診察が不要となるため、来院する患者が少なくなるでしょう。処方のためだけに来院する患者が減れば、診察が必要な患者の予約枠を増やすことができます。
また、患者の通院頻度が減れば、窓口業務や医師業務の負担を軽減、医療費の抑制につながります。
分割調剤との違い
2016年に導入されている「分割調剤」ですが、リフィル処方箋とは導入されている目的そのものが異なります。分割調剤とは、処方期間を分割するシステムです。
具体的に、分割調剤の回数は3回までが上限となっています。また以下に該当する場合、分割調剤が可能です。
- 長期保存が難しい薬剤の場合
- ジェネリック(後発医薬品)を初めて使用する場合
- 医師の指示がある場合
したがって、診察なしで処方可能な「リフィル処方箋」とは、目的が大きく異なります。
リフィル処方箋の対象となる薬品
現在のところ、リフィル処方箋の対象となる薬品の詳細なリストは公表されていません。
しかし、厚生労働省が公表した「令和4年度診療報酬改定の個別改定項目について」の中で、リフィル処方箋は以下のように定義されています。
「保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない。」
引用:厚生労働省-令和4年度診療報酬改定の個別改定項目について
簡単にいえば、明確に対象外となっている薬品でなければ、医師の判断で処方可能ということです。
リフィル処方箋の回数・期間
リフィル処方箋は最大3回までという上限があり、薬剤師は医師の処方指示に基づいて、リフィル処方薬を患者に渡します。
リフィル処方箋の期間については、患者の症状を踏まえて医師が判断するため、明確な期間はありません。
リフィル処方箋発行後、1回目の調剤にかかる有効期間は通常の処方箋と同じです。しかし、2回目以降の調剤に関しては、前回の調剤日を起点とし投薬が終わる日を次回調剤日として計算するようになっているため、次回調剤日の前後7日以内に調剤する必要があります。
リフィル処方箋の現状
リフィル処方箋の現状を、日本と海外に分けて解説しましょう。具体的な内容については以下のとおりです。
日本の現状
日本では長らく検討された結果、2022年にようやくリフィル処方箋が導入されましたが、現状あまり普及していません。検討から導入までに時間を要したり普及率が増加しなかったりする背景には、薬局の責任が大きく関係しているともいわれています。
リフィル処方箋を導入すれば、処方に必要な診察が減るため、必要な時に必要な分だけ小分けにして処方することになります。したがって、診察回数が減れば処方する薬の量も少なくなるため、残薬問題が解消するかもしれません。
ただし、医師の診察なしで処方された薬を調剤しないといけないため、薬局の責任が大きくなってしまいます。そのため、これまで以上に優秀な薬剤師の確保が必要となるのです。
以上のことから、リフィル処方箋についてはまだまだ課題や改善点が多く、関係者の間でも意見が割れています。
海外の現状
アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランスといった海外ではすでにリフィル処方箋が導入・運用されています。
アメリカは1951年から開始されており、4カ国の中で最も古い歴史があります。対象の制限は特にありませんが、一般的に2年を超えての処方はできないようです。
アメリカは州により制度が異なりますが、カリフォルニア州のみ有効期限はありません。その他の国では、慢性疾患の症状が落ち着いている患者に対象を絞っています。
リフィル処方箋の3つのメリット
リフィル処方箋のメリットは、主に以下の3つです。
- 業務負担の軽減
- 医療費の削減
- 患者の負担軽減
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.業務負担の軽減
リフィル処方箋を導入すれば、処方薬をもらうためだけの診察患者を減らせるため、医師の業務負担軽減につながります。
業務負担が軽減すれば、他の患者への対応に時間を割くことができたり、高度な医療や治療時間の確保にもつなげたりすることができるでしょう。
2.医療費の削減
処方薬をもらうためだけに受診することがなくなれば、患者が負担する医療費が削減できます。
また、医師が薬を処方する回数が減るのに伴って薬を調剤する回数も減少し、薬剤師が薬の管理をしやすくなるため、残薬問題の解消にもつなげることができるでしょう。
3.患者の負担軽減
リフィル処方箋にすれば、患者はこれまでのように毎回医師の診察を受ける必要がなくなります。そのため、医療機関に出向いたり長い待ち時間に耐えたりするという負担が減ります。
特に高齢者や障害のある人にとっては、医療機関に出向くだけで労力と時間を要しますが、リフィル処方箋であれば負担なく処方薬の受け取りが可能です。
リフィル処方箋のデメリット
リフィル処方箋のデメリットは、主に以下の3つです。
- 医療事故・健康被害の懸念
- 収入の低下
- 医薬品転売の恐れ
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.医療事故・健康被害の懸念
これまでは医師が処方し、薬剤師が実際に処方薬を確認して交付することで、医師と薬剤師のダブルでチェックができていました。
しかし、リフィル処方箋は薬剤師のチェックのみとなるため、医療事故が発生するのではないかと懸念されています。というのも、医師の診察がなくなれば、患者の病状や健康把握が難しくなり、万が一病状が悪化していた場合、発見が遅れてしまうかもしれないからです。
また、診察しなくても処方してくれることに慣れてしまうと、必要な診察でさえも患者が受けに来なくなるケースもあるため、患者の健康が維持しづらくなる可能性があります。
2.収入の低下
リフィル処方箋を導入すれば、薬を処方してもらうための診察が不要であるため、医師および患者の負担軽減が可能です。一方で患者の診察回数が減少すれば、医療機関の収入が低下する恐れがあります。
高齢者や慢性的な疾患で通院されている患者が多い医療機関の場合、注意しなければなりません。
3.医薬品転売の恐れ
リフィル処方箋の場合、繰り返し同じ処方箋を使用できることから、医薬品交付までのハードルが低くなり医薬品が転売される恐れがあります。
処方のたびに医師が診察する必要がないため、患者は本当に必要な薬かどうかの判断ができません。健康相談や直接指導の機会が減り、自己判断による医薬品の使用によって、健康被害や病状悪化の危険性が考えられます。
リフィル処方箋の導入による影響
リフィル処方箋の導入は、慢性疾患で症状が落ち着いている患者にとっては、処方薬をもらうためだけに診察を受ける必要がなくなり、効率良く治療に望めるシステムです。
しかし、長期間診察を受けなくなると、病状の悪化や健康被害といったリスクが高まります。医療機関にとっても、診察を受けに来る患者の減少から、医療費の減少や経営に大きな影響が出てしまうかもしれません。
また、処方薬を調剤する薬局においては、薬剤師の患者状況を把握する精度を高める必要があります。薬剤師のさまざまな状況判断によって患者の健康維持に大きく関わるからです。
よってリフィル処方箋を導入する場合、医療機関への影響と患者への影響の双方について、十分に理解しておくことが大切です。
リフィル処方箋の課題
リフィル処方箋は、日本ではまだまだ普及していないのが現状です。リフィル処方箋を導入するにあたっては、患者と医師、薬剤師の信頼関係の構築や安全管理といった整備が欠かせません。
患者にとってメリットの多いリフィル処方箋ですが、患者の安全や健康を守るためには、一定回数医師の診察が必要です。利便性だけを追及するのではなく、患者や医療機関双方にとって有意義なシステムになるような努力が求められています。
まとめ
リフィル処方箋の概要や現状、リフィル処方箋のメリット・デメリットについて解説してきました。リフィル処方箋は毎回診察を受けずに済む点や医療費の削減につながる点から利便性の高いシステムです。
一方で、医療事故につながる可能性があったり患者の健康維持に悪影響を及ぼしたりする点がデメリットでもあります。リフィル処方箋をすでに運用している国もありますが、制度が異なる日本において、安心・安全に運用できると明確に答えられないのが現状です。
したがって、まだまだ改善すべき点が多いシステムといえます。