2019.8.27

患者さんとの適度な距離感は、オンライン診療だからこそ

精神科・心療内科

医療法人瑞枝会クリニック|小椋 哲 院長

一歩早く導入したことで、いまも治療を継続できている患者さんが多い

ー はじめに、オンライン診療導入のきっかけ、背景を教えていただけますか。

小椋先生: 当院はオンライン診療の導入前から、うつ病に対する磁気刺激療法(以下TMS)を行っていたのですが、開始当初から患者層を徒歩圏内だけでなく、近畿地方や、願わくば全国レベルに広げたいという思惑がありました。また、TMSは今年の6月から一部保険適用されていますが、CLINICSを導入した2017年5月頃は、まだ自費診療だったんです。ですから、本当にうつ病でお薬も効かなくて困っている患者さんが、九州や四国、東京から、自分にTMSが効くかどうかを聞くために、わざわざマンスリーマンションなどを借りて診察にくる場合があったのですが、そのためだけに患者さんに来ていただくのはあまり現実的ではなくて。そこで、TMSの初診カウンセリングは対面でなく、自費の事前相談としてオンラインでお話を伺って、「あなたはマンスリーマンションを借りてでも、京都にきてTMSの治療を受ける価値があります」といった判断を行っていこうと考えたんです。だから、導入のきっかけは「自費診療の集患」ということになりますね。

ー 最初は自費診療からスタートしていったということですね。いまは保険診療でもご活用いただいていると思うのですが、どういった変化があったのでしょうか。

小椋先生: 先ほど言ったようなケースはもちろんあるんですが、正直TMSの集客にはあまり結びつかなかったんです(笑)そこで、保険診療で当院にかかっている患者さんに、オンライン診療についてのアンケートをとってみたところ、意外とニーズがあることが分かりました。結果として、いまでは保険診療での活用が圧倒的に多くなっています。ただ、昨年の4月にあった診療報酬改定以降は、なかなか新規の患者さんに案内をすることが難しいという点はあります。当院の場合、改定前にオンライン診療を使っていた患者さんが比較的多くいらっしゃったので、その方々への治療が継続できているというのが大きいですね。

オンラインならではの、適度な距離感

ー ありがとうございます。次に、具体的にどんな患者さんにオンライン診療を使っていただいているのか、また、精神科ならではのエピソードがあればお伺いさせてください。

小椋先生: いくつかエピソードはありますが、多いのは働いている方のうつ病のケースです。例えば、京都でお仕事をしていてうつ病になってしまい、療養生活に入ったけれど、療養の場が実家であるとか。遠方の実家で療養する場合、多くの場合は地元の医院さんにかかることが多いので、一度そこで私の治療が中断しちゃうんですよね。その患者さんの一番しんどい時期を知っているこちらから地元の医院さんにバトンタッチするとなると、もちろん治療がうまくいく場合もありますが、相性の問題や、診療のレベルなどで治療が続かないこともあるんです。そこで、療養中に実家に帰った際も、私がオンライン診療で様子を診ていきながら、お仕事に復帰されるときに、対面診療に戻ってもらっています。また、遠方でお仕事をしていたけれど、療養先の実家が京都にあるというケースもあります。京都で対面診療を行い、遠方に戻った後の経過観察をオンラインで行うという事例ですね。このように、療養の間、滞在先が変わるケースでも、同じ医師が継続して診療ができるということがオンライン診療の強みだと思います。あとは、どうしても体の調子が悪くて対面での受診ができないという患者さんが活用することもあります。基本は対面で診察を受けるんだけれど、調子の悪いときのために、お守りとしてオンライン診療用のアカウントを持ってるということですね。特に精神科ならではという診療だと、引きこもりの患者さんのケースでしょうか。

ー 引きこもりの患者さんだと、外に出るのが難しいからこそオンライン診療を実施しているというケースが多いと思うのですが、ビデオチャットでの診療と対面診療を比較した際、患者さんの様子に何か違いはありますか?

小椋先生: 精神科の患者さんは基本問診ベースで診ているため、自宅などでリラックスして受けている患者さんのお顔や、ご自宅内の様子が見られるなど、ビデオチャットだからこそ得られる情報はたくさんありますね。患者さんからも「対面診療とオンライン診療は別々の良さがあるんだ」と言われることがあるくらいです。対面診療だと、どうしても私と同じ空気を共有することになるので、ビデオチャットを挟むことによっていい意味で距離ができ、私から受け取る情報量が少なくなることで、自分の空間を保ちながら診療に臨めている患者さんがいらっしゃるようです。

現場の声をあげ続けることが、オンライン診療を発展させていく一助になる

ー なるほど、オンライン診療ならではの情報がたくさんあるということですね。貴院では、オンライン診療を実施されていることをホームページでも紹介されていますが、患者さんからオンライン診療の問い合わせを受けることも多いのでしょうか。

小椋先生: そうですね、患者さん自身から「私もオンライン診療を受けることはできますか?」といった問い合わせをいただくことも多いです。ただ、診療報酬改定以降、オンライン診療を行う上での要件が厳しくなっていることもあり、なかなか新規の患者さんに積極的な案内を行えていないということもありまして…。疾患上、オンライン診療料は算定できませんし、せっかく患者さんからお問い合わせをいただいても、定期的な医学管理にはあたらない患者さんのみを限定して、オンライン診療を案内しているというのが現状です。いまはガイドライン上、自費診療であっても初診は対面診療という原則があるので、保険診療にせよ、自費診療にせよ、新規でどんどんオンライン診療の患者さんを増やすということには少しやりづらさを感じています。

ー ありがとうございます。ちょうどいまオンライン診療に対しての課題感をお話いただきましたが、今後、オンライン診療の展望や期待していることなどはありますか?

小椋先生: 現状のオンライン診療の算定要件やガイドラインには、現場の感覚や運用とはずれてしまっている部分もあるので、オンライン診療に実際に取り組んでいる現場から、もっとプラスの声をあげていかなければいけないと思っています。私は普段から当たり前のように、CLINICSを使ってオンライン診療を行っていますし、オンライン診療がないと治療の継続が難しい、と思っている患者さんもいらっしゃいます。だから、対面診療は原則としつつ、オンライン診療を対面診療よりも劣位なものとしてではなく、新しい選択肢の一つとして患者さんに提示できるよう、今後も育てていければと思っています。

ー 今日は貴重なお話ありがとうございました!

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