医療情報を電子的に扱う際の安全管理の観点から、厚生労働省、経済産業省、総務省の3省が策定した3つのガイドラインを、まとめて3省3ガイドラインといいます。3省3ガイドラインは以下の3つで構成されています。
厚生労働省のガイドラインは、病院、一般診療所、薬局など医療機関向けのガイドラインです。
経済産業省と総務省のガイドラインは、医療情報を取り扱うクラウドサービス事業者・情報処理事業者を対象としています。
2010年に厚生労働省によって「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正が通知されるまで、電子化された診療録は、医療機関や医師会・自治体など医療機関に準ずる場所に設置されたサーバで管理されていました。
しかし、この改正により、一定の基準を満たした民間業者が運用するサーバで管理することが認められました。
医療分野のクラウドサービス利用が解禁された一方で、「要配慮個人情報」である医療情報を取り扱うクラウドサービスは、非常に高い品質のセキュリティが求められます。
そのため、厚生労働省、経済産業省、総務省の3省が、医療機関および医療情報を取り扱うクラウドサービス事業者・情報処理事業者に対するガイドラインをそれぞれで策定し、医療分野においてクラウドサービスを利用する際のルール・守るべき規範を公開しています。
3省3ガイドラインは医療分野における安全・安心なクラウドサービスの利用の促進を目的とし、3省がガイドラインを定めて協力して監督を行っています。
医療情報システムを運用する医療機関などの管理者は善管注意義務を果たす必要があるため、3省3ガイドラインについて把握しておくことが推奨されます。
医療機関においてクラウドサービス導入を検討したり、クラウドサービス業者を選定したりする際は、候補となる業者が3つのガイドラインに対し、それぞれどのように対応しているかを確認されることをおすすめします。
なぜなら、ガイドライン自体に罰則はありませんが、ガイドラインに違背した状態は、法令を遵守していないとみなされる可能性が十分にあるためです。
「ORCA」を提供している日本医師会ORCA管理機構では、ORCAと連携する電子カルテについて3省3ガイドラインを満たしているかどうかを評価できる体制を整備しており、そうした第三者機関の評価を参考にするのもいいでしょう。
株式会社メドレーのCLINICSカルテは、3省3ガイドラインに準拠しています。それぞれのガイドラインにどのように対応しているかについては、次項をご確認ください。
善管注意義務
善管注意義務とは、民法第644条【受任者の注意義務】で定められた、「善良な管理者の注意義務」のこと。医師は善良な管理者として、患者に対して最善の注意をもって診療をする義務を負う。 |
要配慮個人情報
要配慮個人情報とは、不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要する個人情報のこと。診療・調剤情報、健康診断の結果、障害、ゲノム情報などの医療情報は、2017年の改正個人情報保護法で要配慮個人情報に定義された。 |
ORCA
日本医師会が提供する、日医標準レセプトソフト(日レセ)のこと。 |
3省3ガイドラインの詳細を個別に解説し、それぞれのガイドラインにCLINICSカルテがどのように対応しているのかについても説明します。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第5版)」は、病院、一般診療所、薬局など医療機関が遵守すべきガイドラインです。
本ガイドラインは、医療情報システムの安全管理やe-文書法に適切に対応するためのセキュリティ対策を提示しています。
医療情報システムを運営するための組織体制や設置基準、外部委託時に事業者と定める内容などが示されていますが、中にはシステムの通信方式や利用者の認証方式などについて詳細に記載されている部分もあり、実際には医療機関にシステムを納入する民間業者が対応するべき内容も含まれています。
電子カルテが守らなくてはならない3つの基準として有名な「電子保存の三原則」についても、本ガイドラインに明記されています。
e-文書法
e-文書法とは、従来法令により書面(紙)での保存が義務付けられていた法定保存文書を、電子データで保存することを容認する法律のこと。 |
電子保存の三原則
電子保存の三原則とは、電子的にカルテを保存・管理する場合に満たさなければならない、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの基準のこと。 |
株式会社メドレーのCLNICSカルテにおいては、e-文書法で要求されている事項を列挙した「最低限のガイドライン」だけでなく、「推奨されるガイドライン」にも対応しています。
「最低限のガイドライン」
「推奨されるガイドライン」では、電子カルテとして満たすべき事項が多数記載されています。
「推奨されるガイドライン」
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「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の第1版は2005年3月に発出されました。2013年10月に公表された第4.2版に至るまでは基本的な部分は変わらず、医療を取り巻くIT環境の変化に合わせた項目の追加・改変が行われています。
2016年3月に「電子処方せんの運用ガイドライン」が発出されたことを受け、本ガイドラインにおける関連項目が改正されて第4.3版が公表されました。
2017年5月に公表された第5版では、同年施行された改正個人情報保護法や、それに伴い定められた「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」への対応、地域医療連携、在宅医療、地域包括ケアの普及に伴う多職種連携システムへの対応などから大幅に改定されています。
また、医療機関などを対象とするサイバー攻撃の多様化・巧妙化やIoT(モノのインターネット)の普及などの技術の進展を踏まえ、スマートフォンなどのモバイル端末で医療情報を取り扱う際のセキュリティ対策が整理されました。
2020年3月時点では第5版が最新版となりますが、2020年度には「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6版)」が公表される方針です。
株式会社メドレーのCLNICSカルテにおいては、Amazon Web Services(AWS、アマゾン ウェブ サービス)を採用しています。 |
「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」は2012年に第2版が公表されました。
この改定では、2009年の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第4版)」「ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」、2010年の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第4.1版)」「ASP・SaaS 事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1.1版)」への対応と、IT技術の進歩への対応として、全般的な内容の見直し・最新化が行われました。
2020年3月時点では第2版が最新版となりますが、今後、総務省・経済産業省の共催会議において、事業者向けガイドラインの整理・統合が検討されています。
ASP
ASPとは、「Application Service Provider(アプリケーション サービス プロバイダ)」の略で、インターネット経由でソフトウェアやソフトウェア稼働環境を提供する事業者のこと。 |
SaaS
SaaSとは、「Software as a Service(ソフトウェア アズ ア サービス)」の略で、インターネット経由で必要な機能を必要な分だけ選択して利用できるソフトウェア、もしくはその提供形態のこと。 |
PHR
PHRとは、「Personal Health Record(パーソナル ヘルス レコード)」の略で、複数の医療機関に散らばる個人の健康情報を1カ所に集めて管理する仕組みのこと。「生涯電子カルテ」とも呼ばれる。 |
株式会社メドレーのCLINICSカルテにおいては、個人情報保護の認証マークである「TRUSTe」だけでなく、ISMSクラウドセキュリティ認証「ISO/IEC 27017:2015」、ISMS認証「ISO/IEC 20770:2013」を取得しています。 当社が提供するクラウドサービスの情報セキュリティ水準や管理体制が、国際標準規格に適合したものであると第三者機関に認められています。
詳しくは、「ISMSクラウドセキュリティ認証」とは?をご確認ください。 |
総務省の「医療情報安全管理関連ガイドライン検討ロードマップ」によると、総務省と経済産業省は共済会議において、2019年度中に「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1版)」と「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン(第2版)」の整理・統合を検討しています。
これが実現されると、現行の3省3ガイドラインが「3省2ガイドライン」へ集約化されることになります。
さらに、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第5版)」との整合性確保も検討するとのことです。
こちらに関しては、公式発表があり次第、随時更新していきます。
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