オンライン資格確認の原則義務化は2023年4月から!導入手順や経過措置の概要、診療報酬・補助金の見直しを徹底解説
オンライン診療を導入しているクリニックで働く方で、上記のような疑問を抱えている方もいるでしょう。オンライン資格確認は義務化されますが、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。当記事ではオンライン資格確認の概要や導入手順、導入するメリットなどを紹介します。
目次[非表示]
- 1.オンライン資格確認とは?
- 2.オンライン資格確認の導入手順
- 3.オンライン資格確認の原則義務化はいつから?
- 4.導入時にやむを得ない事情がある場合の経過措置
- 5.オンライン資格確認義務化の影響による施設基準の廃止と新設、改正
- 5.1.1.掲示義務
- 5.2.2.療養担当規則の廃止
- 6.医療情報化支援基金による補助の見直し
- 7.診療報酬上の評価の見直し
- 7.1.1.オンライン資格確認等システムを通じた情報活用に係る現行の評価の廃止
- 7.2.2.初診時等における診療情報取得・活用体制の充実に係る評価の新設(2022年10月~)
- 7.3.3.「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」への特例措置(2023年4月~12月まで)
- 8.オンライン資格確認を導入する7つのメリット
- 8.1.1.資格過誤によるレセプト返戻の作業が削減できる
- 8.2.2.保険証情報入力の手間が削減できる
- 8.3.3.来院・来局前に一括照会で事前確認できる
- 8.4.4.限度額適用認定証等の連携ができる
- 8.5.5.診療/薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができる(災害時にも閲覧可能)
- 8.6.6.診察券として利用できる
- 8.7.7.電子版お薬手帳と連携できる
- 9.オンライン資格確認の義務化に関するよくある質問
- 10.まとめ
オンライン資格確認とは?
患者が加入している保険をオンラインで確認できるのが、オンライン資格確認です。マイナンバーカードのICチップや健康保険証の記号番号などを活用すれば、オンラインで資格を確認できます。
「経済財政運営と改革の基本方針 2022」の概要
「経済財政運営と改革の基本方針 2022」では、健康保険証の原則廃止を目指してマイナンバーカードの普及や推進について記載しています。
主なポイントは、以下の3つです。
- 2024年度中を目安に健康保険証の原則廃止
- 2023年4月からオンライン資格確認の原則義務化
- スマートフォンに対応したオンライン資格確認の仕組みの検討
オンライン資格確認の導入状況
オンライン資格確認の導入状況は、以下の通りです。
- 顔認証付きカードリーダー申込数 211,745施設/229,479施設 ※義務化対象施設に対する割合:99.0%
- 準備完了施設数 157,076施設/229,479施設 ※義務化対象施設に対する割合:73.4%
- 運用開始施設数 132,111施設/229,479施設 ※義務化対象施設に対する割合:61.8%
オンライン資格確認の導入手順
オンライン資格確認の導入手順は、以下の通りです。
- 医療機関等向けポータルサイトでアカウント登録をする
- 医療機関等向けポータルサイトより顔認証付きカードリーダーを申し込む
- 医療機関等向けポータルよりオンライン資格確認利用申請、電子証明書の発行を申請する
- システムベンダに各種機器の導入・設定やシステムの改修、ネットワーク設定などを依頼する
- 顔認証付きカードリーダーなどの機器を受領後、システムベンダにてオンライン資格確認を設定する
- オンライン資格確認の導入完了後、医療機関等向けポータルより運用開始日を登録する
- 運用開始に向けて、受付業務の変更点確認や、患者さま向け掲示の準備をする
- システムベンダから必要書類を受領する
- 医療機関等向けポータルより補助金を申請する
オンライン資格確認の原則義務化はいつから?
オンライン資格確認は2023年4月から原則義務化されます。2023年4月までに、オンライン資格確認を導入しましょう。
導入時にやむを得ない事情がある場合の経過措置
オンライン資格確認の導入についてやむを得ない事情がある場合は以下の期間、経過措置が取られます。
やむを得ない事情 |
経過措置の期限 |
2023年2月末までにベンダーとの契約締結が完了したが、導入に必要なシステム整備が未完了の場合 |
システム整備が完了する日まで (遅くとも2023年9月末まで) |
オンライン資格確認等システムに接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない場合 |
光回線のネットワークが整備されてから6カ月後まで |
改築工事を行っており、臨時施設で医療を提供している場合 |
改築工事が完了するまで 臨時施設が終了するまで |
オンライン資格確認は2023年4月から導入が義務化されます。
しかし、上記のようなやむを得ない事情がある場合は経過措置を取られるでしょう。ただし、経過措置を受けるには地方厚生局への届出が必要になるので注意してください。
オンライン資格確認義務化の影響による施設基準の廃止と新設、改正
オンライン資格確認義務化により、以下のような義務や規則が廃止になりました。
- 掲示義務
- 療養担当規則の廃止
それぞれ詳しく紹介します。
1.掲示義務
2023年4月からマイナンバー健康保険証の利用に必要なシステム導入義務を、掲示しました。
オンライン資格確認義務化により、健康保険証が不要になっていくでしょう。患者に最適な医療を提供できるように、システムを必ず導入しましょう。
2.療養担当規則の廃止
2023年4月から、療養担当規則などが廃止されます。以下をご覧ください。
- 紙レセプト請求を行っている医療機関は、オンライン資格確認導入の原則義務付けの例外とする。
- 患者がオンラインで資格確認を求めた場合は、オンライン資格確認によって受給資格の確認を行わなければならない。
- オンライン資格確認による確認を求めた場合に対応できるよう、あらかじめ必要な体制を整備する
引用:療養担当規則の廃止
医療情報化支援基金による補助の見直し
医療情報化支援基金による補助の見直しは、以下の通りです。
顔認証付きカードリーダーの申込時期 |
病院 |
大型チェーン薬局 |
診療所薬局 |
|
顔認証付きカードリーダー提供台数 |
3台まで無償提供 |
1台無償提供 |
1台無償提供 |
|
その他の費用の補助内容 |
①令和3年4月〜令和4年6月6日 |
①1台導入する場合:105万円を上限に補助 ※事業額の210.1万円を上限に、その1/2を補助 ②2台導入する場合:100.1万円を上限に補助 ※事業額の200.2万円を上限に、その1/2を補助 ③3台導入する場合:95.1万円を上限に補助 ※事業額の190.3万円を上限に、その1/2を補助 |
21.4万円を上限に補助 ※事業額の42.9万円を上限、その1/2を補助 |
32.1万円を上限に補助 ※事業額の42.9万円を上限、その3/4を補助 |
②令和4年6月7日〜 |
①1台導入する場合:210.1万円を上限に補助 ※事業額の420.2万円を上限に、その1/2を補助 ②2台導入する場合:200.2万円を上限に補助 ※事業額の400.4万円を上限に、その1/2を補助 ③3台導入する場合:190.3万円を上限に補助 ※事業額の380.6万円を上限に、その1/2を補助 |
同上 |
基準とする事業額42.9万円を上限に実費補助 |
診療報酬上の評価の見直し
診療報酬上の評価は、以下のように見直されています。
- オンライン資格確認等システムを通じた情報活用に係る現行の評価の廃止
- 初診時等における診療情報取得・活用体制の充実に係る評価の新設(2022年10月~)
- 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」への特例措置(2023年4月~12月まで)
1.オンライン資格確認等システムを通じた情報活用に係る現行の評価の廃止
オンライン資格確認等システムを通じた情報活用に係る現行の評価は、廃止されます。
【医科】
マイナ保険証を利用する場合:7点(初診)4点(再診)
マイナ保険証を利用しない場合:3点(初診)
2.初診時等における診療情報取得・活用体制の充実に係る評価の新設(2022年10月~)
初診時等における診療情報取得・活用体制の充実に係る評価は、2022年10月から新設されました。
以下をご覧ください。
【医科】
マイナ保険証を利用する場合:2点(初診時)
マイナ保険証を利用しない場合:4点(初診時)
3.「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」への特例措置(2023年4月~12月まで)
2023年4月〜12月まで「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」への特例措置が設定されます。
【医科】
マイナ保険証を利用しない場合(初診時): 4点⇒6点
(新)マイナ保険証を利用しない場合(再診時): 2点(1月に1回)
オンライン資格確認を導入する7つのメリット
オンライン資格確認を導入するメリットは、以下の通りです。
- 資格過誤によるレセプト返戻の作業が削減できる
- 保険証情報入力の手間が削減できる
- 来院・来局前に一括照会で事前確認できる
- 限度額適用認定証等の連携ができる
- 診療/薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができる(災害時にも閲覧可能)
- 診察券として利用できる
- 電子版お薬手帳と連携できる
それぞれ詳しく紹介します。
1.資格過誤によるレセプト返戻の作業が削減できる
オンライン資格確認導入により、資格過誤によるレセプト返戻の作業が削減可能です。オンライン診療の際に、患者の資格が不明なままレセプトを請求すると返戻されます。
レセプト返戻になると、再度レセプトを請求しなければいけない上に未収金になるケースも少なくありません。レセプト返戻の作業を削減するためにも、オンライン資格確認導入が必要です。
2.保険証情報入力の手間が削減できる
保険証情報入力の手間を削減できるのが、オンライン資格確認導入のメリットです。
患者がマイナンバーカードで資格を確認した場合、次回以降は保険証の情報を自動で取り込めます。何度も保険証の情報を入力しなくていいので、作業を効率化可能です。
3.来院・来局前に一括照会で事前確認できる
患者の来院、来局前に一括紹介で情報を事前に確認できます。患者の情報を事前に確認できるため、保険証を紛失していないかなどを詳しくチェック可能です。
また、来院してからのトラブルなどを事前に防げるでしょう。
4.限度額適用認定証等の連携ができる
オンライン資格確認導入により、限度額適用認定証等の連携が可能です。
以前は、患者が保険者へ申請しなければいけませんでした。オンライン資格確認導入により、患者が保険者へ申請しなくても限度額情報を取得できます。
患者が限度額以上の支払いをしなくて良いのがメリットです。
5.診療/薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができる(災害時にも閲覧可能)
診療/薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができるのが、オンライン資格確認導入のメリットです。
上記の情報を閲覧するには、マイナンバーカードの利用で患者から同意を得る必要があります。同意を得られると、有資格者などは情報を閲覧可能です。
また、災害時にも閲覧できるため緊急時にも患者の薬剤情報などを取得できます。
6.診察券として利用できる
患者がマイナンバーカードを利用する際、診察券としても活用できるのがメリットです。
オンライン資格確認でマイナンバーカードをICリーダーで確認するだけで、受付が完了します。受付業務の負担も減り、効率よく業務を行えるようになるでしょう。
7.電子版お薬手帳と連携できる
マイナンバーカードを利用する場合、電子版お薬手帳と連携できます。電子版お薬手帳に蓄積された情報を、マイナポータルを介して閲覧できるようになるのがメリットです。
オンライン資格確認の義務化に関するよくある質問
オンライン資格確認の義務化に関するよくある質問は、以下の通りです。
- オンライン資格確認を導入しなかった場合、罰則はありますか?
- 義務化対象外となる施設はありますか?
疑問を解消できるように、それぞれ詳しく回答します。
質問1.オンライン資格確認を導入しなかった場合、罰則はありますか?
オンライン資格確認を導入しなければ、罰則が適用されるので注意しましょう。罰則の内容は、個別事案ごとに判断されます。
質問2.義務化対象外となる施設はありますか?
紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局に関しては、オンライン資格確認導入の義務化対象外となります。
まとめ
ここまで、オンライン資格確認義務化の概要や導入手順、導入するメリットなどを紹介しました。資格過誤によるレセプト返戻の作業が削減でき、保険証の情報を自動取り込みできるなど、オンライン資格確認導入には多くのメリットがあります。
オンライン資格確認の義務化で患者は安心して診察を受けられ、医療機関も効率よく診察や作業を行えるようになるでしょう。