
【後編】オンライン診療で実現する医療現場のデジタルトランスフォーメーション
前編では、正幸会病院で実際にオンライン診療を活用した事例を伺いました。見るだけで病院でのオンライン診療の導入準備ができる「オンライン診療導入の準備リスト」や、「発熱外来でCLINICS活用する業務フロー」をご紹介いただきました。
まだご覧になっていないかたは、前編もご覧ください
この記事では、後編として「医療現場のデジタルトランスフォーメーション」と「正幸会病院が実際に導入した20種類のデジタルサービス」をお届けします!
![]() 医療法人正幸会 正幸会病院 院長 東 大里 氏
大阪大学医学部を卒業。大阪警察病院で初期臨床研修、消化器内科の経験を積み、宝塚市立病院の消化器内科を経て正幸会病院 院長に就任。医療現場のデジタル化推進を強く推し進めることによって、患者さんと医療従事者にとってより生産性の高い医療体験の実現を目指されている。
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目次[非表示]
スタッフ2名の「私たち明日、辞めます」事件
まず、そもそも私自身が病院でデジタル化を進めて行こうと思ったきっかけをお話ししたいと思います。今から5年前の2015年のある日、当時2名体制だった外来事務スタッフの2名が突然「私たち明日、辞めます」と言って本当にいなくなってしまった「私たち明日、辞めます事件」がありました。
それを機に、業務をアナログで人に頼っているリスクを痛切に感じまして、属人性を解消して業務の効率化を進めるべきだと考えました。
私自身がデジタルが好きだったこともあり、病院の成長戦略の柱をデジタル化にしようと考えました。一度そのように方針が決まると、どんなときでも方針が一貫しているので、投資判断がしやすかったり、スタッフの皆に説明しやすくなり、何より自分自身が納得できる決断をすることが可能になりました。
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デジタルトランスフォーメーションの定義
題名にもあります通り、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)について触れていきます。DXという言葉自体はよく聞くようになったと思います
この言葉の定義は以下の2つです。
①進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること
②既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの
カメラ写真のケースに例えてイメージがつきやすいように説明します。まず、デジタイゼーションはフィルムカメラからデジタルカメラに変わることです。
次に、デジタライゼーションは、写真現像の工程がなくなりオンライン上で写真データを送受信する仕組みが生まれることです。
最後に、DXとは写真データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNS を中心にオンライン上で世界中の人々が写真で楽しませるようになるということです。
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医療におけるDXの現状
では、医療現場でのDXの現状はどうでしょうか。医療は世界でも最先端の科学技術が投入され目覚ましい進歩を遂げている分野です。特に、医薬品や医療機器の分野は巨大市場となっています。しかしながら、その一方で他の産業と比較すると、インターネットテクノロジーの持つ力をあまり活用できていないという課題も抱えています。
例えば、対面診療で結果を聞くためだけに長い時間待合室で過ごしたり、診療予約が電話でしか取れなかったり、支払いも現金のみという医療機関も未だに多いかと思います。電子カルテの普及率も35%程度ですので、半数以上の医療機関でまだ紙のカルテが利用されている現状もあります。
こういったインターネットテクノロジーを活用できていないために、医療現場全体が損を被ったりあるいは恩恵を損なったりしているんじゃないかと私は考えます。
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デジタル化の障害と解決策
しかし、実際にデジタル化を進めていく上での障害もあります。トップが「デジタル化しましょう!」と言っても、現場スタッフの抵抗感が導入の弊害になることがあります。原因は、スタッフ側にITスキルがないことや、新しいものへの拒否反応、積み上がるタスクから逃れたいなどがあります。
実際に、今までは紙に書いて人に渡すだけだったのに、デジタル化をすることで自分自身でパソコンに打ち込まなくてはならないなどの作業が増えて不便になったという感想を持つ場合があります。最終的には全体と自分自身の業務効率が改善するのですが、そのような未来をすぐには想像できないからです。
それに対しては、丁寧な説明や計画性をもった導入スケジュールによって、スムーズに導入できるような環境整備が必要だと思います。合わせて、スタッフの方への敬意と礼儀正しさを持ってコミュニケーションすることも忘れてはならないと思います。
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正幸会病院が実際に導入した「20種類のデジタルサービス」
当院で行なっているデジタル化の例を示します。2015年に当院では診療情報管理と紙カルテの廃止を始めとして、一連のツールを導入しました。
ここにデジタルサービスの表があります。赤い枠で囲んだものを特にクラウドサービスになっています。
メドレーさんはじめ、ベンチャーのプロダクトは非常に素晴らしいものばかりというのが私の率直な感想です。 資料を取り寄せて説明を聞くと、いつも感心してすぐ導入を決めてしまうことが多いです。
各社のサービスを使いやすさが非常に工夫されて導入支援サービスを行う企業もあります。せっかく導入するのであればきちんと使いこなして自分のものにしなくてはなりません。やる気だけではどうにもならない場合もあります。自分たちの持ち合わせる技能に応じて、時には追加で料金を払って導入支援を受けたり、あるいは外部からのアドバイスを受けたりすることも非常に有益だと思います。
※2021年2月8日に2サービスを追加し、20サービスを一覧で掲載しております。
サービス名 |
サービス概要 |
URL |
CLINICS |
オンライン診療・服薬指導アプリ |
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TEIJIN |
睡眠時無呼吸症候群の遠隔モニタリング診察サービス |
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KONICA MINOLTA |
クラウド型画像管理サービス |
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フクダ電子 |
クラウド型検査データ管理 |
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san-ei |
レセプトコンピュータ |
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kintone |
業務改善プラットフォーム |
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Google Workspace
(旧G Suite)
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Gmail等の法人向けサービス |
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salesforce |
顧客管理サービス |
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CMS |
電子カルテ |
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LINE WORKS |
ビジネス版のLINE(院内・院外コミュニケーション) |
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slack |
院内・院外コミュニケーション |
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skype |
チャット、ビデオ通話アプリ |
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Office365 |
月額定額でワードやエクセルが使えるサービス |
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Dropbox |
ファイルを共有するクラウドサービス |
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akerun |
スマホが鍵になるスマートロックサービス(入退室管理) |
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KING OF TIME |
クラウド型勤怠管理 |
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freee |
人事労務・会計業務の効率化 |
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sansan |
オンラインで請求書受領、一元化 |
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メルプ |
WEB問診システム |
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Carnas |
クラウド型健診システム |
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ほとんどのキャッシュレス支払いにも対応
また、患者さんの利便性も考えて概ねすべてのキャッシュレス決済にも対応しています。キャッシュレス決済は奇しくも窓口での接触を避けコロナの状況下では有用なものとなりました。
病院においてデジタル化を進めることは、スタッフの意識改革にもつながります。今おこなっている業務は、本当に患者さんの利便性や業務の効率化につながっているかどうか?ということを常に意識するような環境を生み出していると思います。
積極的にデジタル化を進める病院としてのブランディングを行うことは、スタッフが当院で働くことに対する誇りにも繋がるのではないかと信じています。
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病院でデジタル化を成功させる「5つの提言」
最後に、僭越ですが病院のデジタルシフトを成功させるための5つの提言を考えてみました。
デジタル化を進めるためにはまずトップが意識を高くもって組織全体にデジタル化がもたらす未来の魅力を伝え、啓蒙して、組織全体が意欲的にデジタル化を進める集団に変えていかなければならないと思っています。
オンライン診療を含めたデジタル化をすすめるということは、10年後に当たり前になることを今からやるということなんじゃないかなと思っています。
トップはデジタル化を進めることの正当性は揺らぎないという自信をずっと持ち続ける必要があると思います。現場の抵抗を感じると心が迷ってしまうかもしれません。ですが、諦めてはいけません。
デジタルシステムの浸透は必ず最後には自らの利便性につながって本来の自分の仕事に専念ができるようになります。それはより良い医療体制を構築し、最終的には患者さんへの価値に繋がるというふうに揺るぎない自信をずっと持ち続け続けてください。
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