
【前編】オンライン診療で実現する医療現場のデジタルトランスフォーメーション
今回、「オンライン診療で実現する医療現場のデジタルトランスフォーメーション」と題して、東院長先生に医療の現場目線からセミナーをしていただきました。
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)と、いかにもな流行り言葉をタイトルに入れておりますが、要はどういう風にクリニックや病院さまでデジタルツールを導入していくのかというお話です。東先生はかなり実践しておられますので、医療のDXを成功させる秘訣をお話しいただきました。
この記事では、前編として「オンライン診療の導入とその準備」をお届けします!
![]() 医療法人正幸会 正幸会病院 院長 東 大里 氏
大阪大学医学部を卒業。大阪警察病院で初期臨床研修、消化器内科の経験を積み、宝塚市立病院の消化器内科を経て正幸会病院 院長に就任。医療現場のデジタル化推進を強く推し進めることによって、患者さんと医療従事者にとってより生産性の高い医療体験の実現を目指されている。
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目次[非表示]
オンライン診療の定義、正しく把握していますか?
本日は、オンライン診療をはじめとするデジタル化への取り組みを紹介する中で、皆さんにオンライン診療に取り組む意義についてお考えいただく時間となれば幸いです。
私は2010年に父から病院を継承して以来、院長を務めております。診療の経験しかなかった私が突然病院の経営を行うことになり、非常に苦労の連続でした。ですから、10年間の苦労話などもお話できればと思います。
まず最初に、オンライン診療そもそもの定義と制度について簡単にお話します。厚労省が示す「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に示すように、オンライン診療は遠隔診療の中の1つと定義されています。ここでは情報通信機器と書いてありますが、実はビデオ通話に関しては明示されておりません
ビデオ通話を利用したオンライン診療に関しては、2018年3月の診療報酬改定による「オンライン診療料の算定要件」によって定義されていると認識されていると思います。
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オンライン診療のニーズはどこに?
現在、少子高齢化社会による医療の増大・人口減少に伴う医療人材不足の問題が顕在化しています。これらの問題への対策として、通院負担の軽減やかかりつけ医機能の強化、医療従事者の働き方改革が求められています。それに寄与するものとして、オンライン診療が新しい診療スタイルとして注目されています。
こういった状態の中で、オンライン診療に関する制度について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?私個人としては、現在はコロナ時限のオンライン診療制度ですが、この制度を維持しながらオンライン診療が普及していく形で制度が進んでいくと考えております。
私がオンライン診療を取り入れたキッカケは、2018年3月の診療報酬改定でした。オンライン診療を知り、私は新しい医療の夜明けを見ているような気持ちになりました。そして、大阪初のオンライン診療の病院になりたい!病院をデジタル化したい!という思いになり、すぐにメドレーさんに連絡を取りました。
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オンライン診療導入の準備リスト
実際に当院で行った、オンライン診療の導入とその準備3ステップをお伝えします。
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まず、1つ目のオンライン診療ツールを決めることについてです。当院ではメドレーさんのCLINICSを使っています。しかし、オンライン診療は、ビデオ通話であればFacetimeなどのビデオサービスを利用することも不可能ではありません。しかし、患者さんの予約管理やセキュリティの担保、支払い方法を考えると現実的には難しいと考えます。
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2つ目が、診療メニューを決めることです。対面診療とオンライン診療の両者のバランスを考えて、診療内容と時間枠を病院で設定します。図に示すように、当院では具体的にこれら5種類の診療メニューを設けています。
診療報酬は、オンライン診は対面より安くなっていることが多いです。そのため、医療機関と患者さんとの利便性や公平性を考慮した上で、システム利用料等で調整するかどうかを決めればいいでしょう。
3つ目が、院内運用ルールを決めることです。これはとても大事なことです。CLINICSはオンライン診療を行う上で十分な機能を備えています。しかし、院内で運用するルールを決めてはじめて円滑なオンライン診療ができると考えます。そうでなければ、院内トラブルで患者さんに迷惑をかけてしまうことにつながりません。
例えば、診療予約の締め切りをいつにするか決めることができます。締め切りが早ければ院内での確認作業に余裕ができますが、患者さんにとってはすぐに受診ができないために利便性を損なうことになります。
また、オンライン診療は患者さんが目の前にいないため、すっぽかしてしまう可能性もあります。当たり前のように聞こえますが、当日のオンライン診療の予定を確実に把握することは非常に重要です。CLINICSでは、当日のリマインドメールが患者さんに送られる機能もありますので、これを活用するといいでしょう。
そして、診察終了後には、事務スタッフの方から患者さんにもう一度電話連絡を取るのもいいと思います。
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発熱外来でCLINICSフル活用の具体例をご紹介
発熱外来(コロナ・インフル同時検査外来)では、濃厚接触回避のためにCLINICSをフル活用しているため、具体例として紹介します。以下に、発熱外来の予約から当日、検査結果説明日までの流れをまとめました。参考にしていただければと思います。
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このようにCLINICSを利用することで、コロナ疑い患者との接触回数を最小限(医師1人が検査時に1回接触)に抑えながら、スムーズな治療の流れを実現できています。
それに対して、CLINICSを使えない人は煩雑な手順が必要になってしまいます。CLINICSを利用しない場合の発熱外来の流れも画像からご確認ください。
やはり、CLINICSを使える人に対して、どうしても煩雑な手順が必要になってしまいます。
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まだまだオンライン診療には課題がある
一方で、まだまだオンライン診療にも課題があると思います。例えば、以下のような課題が挙げられます。
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医師側の課題
- 医療の質を担保できるか?
- そもそもスマホ・PCの画面越しである
- 検査ができない
- 病状が不安定な方には適さない
- 診療報酬点数が低い
- システム導入・維持の負担
- 個人情報漏洩のリスク
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患者側の課題
- 通信状況や撮影環境で影響が出る
- ITリテラシーが不十分だと利用できない
- クレジットカードを持ってないと利用しにくい
- オンライン利用料の費用負担がかかる場合がある
このような課題によって、日本のオンライン診療の普及が阻まれている現状も鑑みる必要があります。
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中国では3億2000万人もがオンライン診療を活用
この図から、世界ではオンライン診療が広く普及してることがわかります。世界最大のオンライン診療サービスである「平安健康医療科技」のユーザー数は3億2000万人にも登ります。中国は国土が広く市民が医療にアクセスしにくかったり、人口も多く病院での待ち時間が長いなど、独自の事情もあるようです。
コロナ前後のオンライン診療の実態と割合
こちらは、今年4月にオンライン初診を開始して以降の最初の1ヶ月間のデータです。まだアンダーコロナと呼ばれる時期でした。当院の受診内容の割合を示すデータでは、47%もの方がオンライン初診を利用されました。
コロナを心配するから外出を控えたいけれども、医師の診療を受けたいという方が利用していました。
こちらは、2020年1月〜11月のオンライン診療回数と外来診療回数を比較したグラフです。まずは、外来診療の回数を示すグレーのバーをご覧ください。 ビフォーコロナと比べて、アンダーコロナでは緊急事態宣言の下で多くの人が外出を避けたため、外来患者数が最大で40%程度低下しています。
次に、赤いバーをご覧ください。これは、1ヶ月あたりのオンライン診療回数を示しています。ビフォーコロナでは、月5件程度しかなかった診療回数ですが、 アンダーコロナで月30回以上に利用が急増していることがわかります。その後、ウィズコロナとなって一旦落ち着いたとはいえ、ビフォーコロナの水準よりは遥かに多いままを維持し、増加傾向をたどっています。
最後に、オレンジの折れ線グラフをご覧ください。これは、全外来診察数に対するオンライン診療回数の割合を示しています。こちらもアンダーコロナで割合が増加して、特に5月は10%を超えています。また6月以降のウィズコロナでも5%程度を推移しており、ビフォーコロナでは1%以下だったことを考えると、明らかに患者さんの受診様式の変容が見て取れます。そして、一度オンライン診療を体験した人の多くがリピートする傾向にあるので、満足度が非常に高いことも考えられます。
医療においても、社会の変化を想定して対面のみを前提としない医療への転換が必要です。オンライン診療は、対面診療との組み合わせで活用されていくのではないかと考えています。
オンライン診療を活用することは、個々の患者にとって必要な医療をより正確に効率的に提供し、医療資源とその恩恵を最大化することだと思っています。
後編では実際に導入した「20のサービス一覧」をご紹介
後編では、東先生が取り組まれてきた「医療現場のDXで導入したサービスや課題」をお届けします。東先生が、外来事務スタッフの「私たち明日、辞めます」事件から、苦労して進めてきたDXを余すことなくお伝えします!
実際に導入している「20種類のデジタルサービス一覧」もお伝え予定です、ぜひご覧ください!