
Withコロナ時代に過去最高益を達成した次世代クリニックの経営方法とは
今回、「withコロナ時代に過去最高益を達成した次世代クリニックの経営方法とは?」と題して、自身もクリニック経営者であり医師である福井先生に、次世代クリニック経営の極意をインタビューしました。
コロナ緊急事態宣言が出た中で、多くのクリニックでは患者さんが減っている状態です。しかし、錦糸町内科ハートクリニックには患者さんが戻ってきており、クリニック経営がより力強く立ち上がっていったそうです。
福井先生には資料もたっぷりと用意していただけました。錦糸町内科ハートクリニックの、そもそもの経営コンセプト・事業戦略について根掘り葉掘り伺いましたので、是非この話を一人でも多くの先生方に聞いてもらいたいと考えています!
![]() 錦糸町内科ハートクリニック 代表医師 福井 悠 氏
慶応義塾大学を卒業後、改めて千葉大学医学部に入学し医師免許を取得。総合内科、循環器内科のキャリアを積み開業の道へ。2019年3月に東京都墨田区に総合内科「錦糸町内科ハートクリニック」を開業。順番待ち確認システムや電子問診票などのシステムを積極的に導入し、患者に受付から会計まで快適な診療体験を届けるための環境を整えている。
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目次[非表示]
患者さんに尽くす喜びを医療者に取り戻すクリニック経営を
錦糸町内科ハートクリニックの福井です。よろしくお願いします。コロナの話が世間では騒がれていますが、それよりももっと根っこの部分が重要です。根っこである経営理念や戦略の部分を最初にお話し、最終的にこの時代に我々はどのように変化したのかお話します。
私は総合内科の後に、循環器内科のキャリアを積んだ後、今開業の道にいます。そもそも、なぜ開業しようと思ったのか?これは病院で働いた時に感じた課題です。
医療現場はかなり劣悪な労働環境です。元々、志があった医療者の方々の資質が毀損されている現実。その結果、患者さんの受診体験が低迷している現状。私が病院で働く中で、既存の経営知とテクノロジーでこの問題は解決できるはずだという思いに達しました。
図1
これは、自分がどういう仕事をしたいか?を考える時に使うフレームワークです。
Mustの部分が時代から必要とされているものです。私の場合は「医療者の資質を発揮させて患者さんの受診体験を向上させる仕組み」です。これは社会から求められていることです。
Willの部分が私がやりたいことです。それは、「個人の力を凌駕する組織構造を作りたい」という思いがあります 。そして最後にCan、私ができることは、総合内科・循環器内科医とMBAの掛け合いです。
この3つの共通部分で、私ができることは患者さんに尽くす喜びを医療者に取り戻すようなクリニックの運営、あわせてクリニックの支援事業です。これらを手掛けて行きたいと考えています。
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医療業界には多くの“アンマッチニーズ”が存在する
クリニック戦略をご紹介する前に、業界の話をします。
図2
こちらの図は、私が検診センターで患者さんにとったリサーチ結果です。1列目が脂質異常症と診断された方、あるいは治療中の方の人数です。その中で約20%の方はその場で治療を決断するか、すでに治療をしてます。
実は、70〜80%の方が治療を受けたいと思っているが、時間がなくて放置している現実があります。さらにそれを分けると、そもそも仕事が忙しくて時間がない方もいれば、平日は受診が難しいが夜間なら行けるという方もいます。あるいは決まった時間に受診できず、予約が取れるクリニックしかいけない方も。こういうクリニック側の努力で合わせることができる部分がたくさんあります。
図3
これは内科系クリニックの業界の特徴を示した図です。横軸はクリニックの規模、縦軸はクリニックの収益性を示しています。点一つひとつがクリニックだと思ってください。
実は、この業界は「業務独占資格(医師や看護師など)」という非常に高い参入障壁があります。しかも、保険診療によっても守られていて、競争や淘汰が進みにくい業界です。保険診療によって淘汰領域が下げられています。
そうなると、例えば1日10〜20名くらいの診察でも、個人院長・1〜2名のスタッフ・住宅エリア物件で固定費を押さえれば、保護された保険診療の収益で淘汰を免れられます。結果、零細クリニックが多数生き残ることが可能になります。
実際、医療法人の90%ぐらいが単独クリニックです。7院以上は全体の2%です。一方で、図の右上の方のプレイヤーがあまりいないんです。これは何故なのでしょうか?この部分に「医師稼働率ギャップ」が存在します。
話をまとめると、個々のクリニックでは診療オペレーションは市場原理によって洗礼されにくく、ここに捉えきれないアンマッチニーズが存在していると考えています。
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クリニックの規模化を妨げる「医師稼働率ギャップ」とは
図4
医師稼働率ギャップとはなんなのでしょうか?この図はクリニックの代表的なコスト構造です。
医業収益(=売上)があって、他には検査や賃料、光熱費などがあります。最大のコストは医師の人件費です。これは言うまでもありません。一般の人件費が25%程度。システム管理費が10%。 これらを売上から引くとEBITDA*が20%ほど残ります。
*EBITDA:税金が引かれる前の利益に、利息等を加えた利益のこと
ここで、1診制から2診制に外来を増やすと何が起こるか?単純に医師人件費が倍になります。病院を大きくしたからといって患者さんは急には増えないので、コスト構造が倍になってしまいます。すると、営業利益の部分が著しく下がるか、最悪赤字になってしまう。
これが、成長して同じ稼働率の診察室が2個できるようになると状況が変わります。他の固定費が圧縮され、営業利益が先ほどの倍になります。実は、稼働率を高めた状態でクリニックの規模を成長していけると、収益性が高まっていく。こういうコスト構造になっています。
1診制から2診制への移行は、「診療稼働率の半減=医師人件費率の倍増」によって、一時的に利益率が著しく悪化する。そのため、診療をニーズの堅調な見通しをもつ力が必要になってきます。そして、これ自体がクリニックの大規模化を妨げる要因の1つです。
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患者さんが受診を決める最も重要な“カギ”とは?
図5
この図は患者さんの診療セグメントです。 横軸は専門性と特定医師との関係性を重視した軸で、「プロフェッショナルバリュー」と呼んでいます。縦軸は一言で言うと利便性で、「サービスバリュー」と呼んでいます。患者さんが受診する最も重要なバリューはこの2つです。
まず、サービスバリューを重視する患者さんは、なるべく少ない待ち時間でアクセスが良いクリニックを選びます。こういった患者さんの目的は決まっています。処方箋や検診など達成したい目的が決まっているので、診察時間が短くなる傾向があります。医師は結構誰でもよかったりします。
こういう方は、利便性が高い駅前のクリニックができると、すぐにスイッチする特徴があります。平均診療単価はちょっと低めです。シーズナリティ(季節性の変動)が高いです。
横軸は大学病院や専門性の高いクリニック、地元の医療機関が挙げられます。地元の医療機関では「あの先生に見てもらいたい」というニーズがあります。このニーズを重視する方は、疾患に対する不安が根底にあり、心身ともに医療への依存度が高いと言えます。
診察時間が長めになる一方で、待ち時間に寛容です。こういう方はなかなか病院を変えません。診療単価は高く、1万円から2万円ぐらいです。シーズナリティは全然受けません。
図6
これを先ほどの横軸のプロフェッショナルバリューと、縦軸のサービスバリューに置いて並べていきます。例えば、大学病院のように3時間から5時間待つのが当たり前というところから、地域病院、専門型クリニック、駅前・駅中にあるクリニック、自由診療クリニックというふうに並べていくことができます。
プロフェッショナルバリューとサービスバリューはトレードオフ関係にあります。なので両立は難しい現状があります。例えば、速さを追求すると丁寧さが損なわれるというふうに、どうしてもこういう並びになってしまいます。
左上に行くほどサービス価値が重視されます。サービス価値はいろいろありますが、この中で何が一番大事なのでしょうか?それは「好アクセス」です。例えば、受診体験が悪く、Googleクチコミが☆1.0-2.0だとしても、駅近であれば混雑しているという事実があります。成功の鍵には好立地が外せません。
図7
先ほどのバリューラインの図の中で、トレードオフ関係をなんとか乗り換えて右上に行くことができればアンマッチニーズをきちんと捉えることができます。例えば、先ほどの生活習慣病の方(図5参照)で、現状の病院ではニーズが満たされなかった方が挙げられます。
これは何を意味しているのでしょうか。循環器内科医のわたしが普段診療しているのは、すでに心筋梗塞になってしまった方や、すでに大きな病気を抱えている方です。その方がもう一度大きな病気を起こさないようにする二次予防が多いです。
しかし、アンマッチニーズを超えることは、病気になる手前の方を対処することが可能になります。つまり、アンマッチニーズを補足することは、ポピュレーションアプローチの実現にもつながります。
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オペレーション戦略こそが地域のシェアを左右する
図8
オペレーション戦略がバリューラインを越えるのに重要な鍵だという話をしました。さらに、オペレーション戦略こそがクリニックのローカル地域のシェアも左右します。
私が「サービスレベルー稼働率均衡」と呼ぶ状態があります。これは、獲得している患者さんと流出している患者さんが均衡している状態のことです。クリニックが成長していけば、必ずどこかで到達します。
集患が進み、稼働率が上がってくるとサービスレベルは低下します。流出患者が増えるメカニズムは、主に混雑による待ち時間の長期化や、スタッフの疲弊や離職によるものです。
また、獲得患者が減るメカニズムもあります。例えば、予約が取りづらくなっていく場合や、口コミが悪化する場合があります。こういった中で、どこかで均衡が起こります。
サービスレベルー稼働率均衡というのは、クリニックが提供するサービスレベルだけではなくて、マーケットサイズと競合にも当然左右されます。
特定の地域に限定して考えると、周囲のクリニックは全て同じマーケットで競合です。図からわかるように、ここが定数となり、患者さんの動きはサービスレベルで作られたサービスレベルー稼働率均衡によってシフトしていくことになります。
図9
図の「80/100で80%」のクリニックと、「90/140で64%」のクリニックを比較して考えていきます。
一見すると、90人のほうが患者数が多いので、サービスレベルが低そうに見えます。しかし、キャパシティがしっかりあり、稼働率が64%と低いので、こちらの病院に患者さんは受診シフトしていきます。
洗練されたオペレーションは、戦略オプションを豊かにしてくれます。サービスレベルー稼働率均衡が訪れる段階によって、粗利が決まってきます。すると、クリニックの利益率ともに、外来医採用や分院展開などの戦略オプションが増加します。ここがオペレーション改善の肝とも言えます。
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オペレーション改善のボトルネックを同定する
図10
では、実際にオペレーションを改善する、あるいは最初から良いオペレーション構築するにはどのようにしたらいいのでしょうか?結論、ボトルネックと呼ばれる部分を最初に同定することが非常に重要です。そして、ボトルネックは例外なく診察室です。
例えば、お菓子工場の工程を考えてみてください。1時間に400個ぐらいのクッキー生地を作り、焼いて、箱詰めし、出荷することを目標にする工程を想定します。この図のような工場の場合、焼き工程が1時間に200個しか作れません。ですので、どんなに他の工程の効率がよくても、クッキーは、絶対に1時間に200個しか出てきません。
工場全体の効率を上げる場合、このボトルネックを見つけて、それを改善する仕組みを考える必要があります。クリニックのボトルネックは間違いなく診察室です。なぜなら、用意するためのコストが最も高く、物理的な制限もあるからです。
図を見てください。当院の場合、最初のモデルが9分で1人見れる設定(1時間で6.7人)でした。これは実際に測定をしました。該当割合というのは、全員が検査を受けるわけではないので、検査処置を受ける割合を示しています。つまり、診察室の1時間あたり6.7人が当院の最初のキャパシティでした。7時間で47人しか診察できないことを意味しますので、これをどうすればいいでしょうか?
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診察キャパをタスクシフティングで増加させる
図11
診察キャパシティを増やす方法は決まっています。診察速度を早くするか、外来を増やすしか、診療時間を延長するかしかありません。
では、診察速度を早くするためにはどうするか。1つめは、ボトルネックから仕事を移すタスクシフティングという方法です。2つめは、医師の外来診察能力を上げる方法です。
診察室を増やしたり診療時間を伸ばすことは、医師稼働率ギャップを乗り越えた先のオプションです。
最初の戦略から要請される、戦略オプションの要点というのはボトルネックからのタスクシフティングと医師の外来診療能力の向上の2つになります。
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まとめ:内科系クリニック“成功のカギ”は?
要するに、何が一番大事なんでしょうか。まずは立地です。多くの患者の生活動線をとらえる好立地を確保すること。そして、洗練された診療オペレーションで診察キャパシティを最大化し、バリューラインを超えること。最後に、サービス価値とプロフェッショナル価値をきちんと両立して提供するクリニックを作ることができれば、圧倒的に勝つことができます。
これらをどのようにすればいいのか。ここでオペレーション戦略の話をさせてください──
ここから先の「錦糸町内科ハートクリニック」の具体的な実践例については、限定公開中の動画(無料)にてご覧いただけます。
視聴をご希望される場合は動画URLをお送りしますので、すぐ下のリンクからお問い合わせください。