
オンライン診療の実施には研修受講が必須?厚生労働省オンライン診療研修について解説
厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に記載されているとおり、オンライン診療を行う医師はオンライン診療の実施にあたり研修を受ける必要があります。
当初は2020年10月までに研修を受講する必要がありましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて通知されたいくつかの事務連絡により、研修を受講しなければならない期限が変更されました。
本記事では、厚生労働省のオンライン診療研修についてご紹介します。
関連記事:【医療機関必見!】オンライン診療の特徴から導入方法までわかりやすく徹底解説!
目次[非表示]
- 1.そもそもオンライン診療とは?
- 1.1.オンライン診療の理念
- 1.2.オンライン診療を導入するメリット
- 1.3.オンライン診療を導入するデメリット
- 1.4.オンライン診療の実施は研修受講が義務付けられている
- 2.オンライン診療研修とは
- 3.オンライン診療研修修了証が必要な理由
- 4.オンライン診療研修の受講期限
- 5.オンライン診療研修を受講するには
- 6.同時に受講できる研修
- 7.オンライン診療のスタート手順
- 7.1.1.オンライン診療研修の受講
- 7.2.2.施設基準の提出
- 7.3.3.医療情報ネットの登録
- 7.4.4.オンライン診療実施にかかる診療計画書の作成と合意
- 8.オンライン診療のリスク
- 9.リスク低減に向けた日本医師会の提言
- 10.オンライン診療資格のよくある質問
- 10.1.1.オンライン資格確認とは?
- 10.2.2.オンライン資格確認の導入費用を知りたい
- 10.3.3.オンライン資格確認を導入するステップとは?
- 10.4.4.オンライン資格確認の導入は義務なのか知りたい
- 11.まとめ
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そもそもオンライン診療とは?
オンライン診療とはパソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末を利用して診療を提供するシステムです。
オンライン診療は遠隔診療と呼ばれていた過去がありました。しかし、徐々に需要が高まりIT技術も進歩した結果、現在日常的な診療にも導入されています。
ここでは、オンライン診療に関して理解を深められるように、以下の項目に沿って説明します。
- オンライン診療の理念
- オンライン診療を導入するメリット
- オンライン診療の実施は研修受講が義務付けられている
オンライン診療の理念
オンライン診療の理念は「厚生労働省 オンライン診療の適切な実施に関する指針」に記載されています。具体的な内容は、以下の通りです。
- 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと
- 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
- 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化することを目的として行われるべきものである。
- 医師-患者関係と守秘義務
- 医師の責任
- 医療の質の確認及び患者安全の確保
- オンライン診療の限界などの正確な情報の提供
- 安全性や有効性のエビデンスに基づいた医療
- 患者の求めに基づく提供の徹底
オンライン診療の理念は、医師と患者のどちらも把握した上で診療を提供するべきです。
オンライン診療を導入するメリット
オンライン診療を導入するメリットは、以下の通りです。
クリニック側
- 新規患者獲得につながる
- 再診率向上につながる
- 地方・遠方の患者の診療にも対応できる
- 院内感染のリスクを下げられる
患者側
- 自宅やホテル、職場など好きな場所、落ち着く場所で診療を受けられる
- 通院時間や待ち時間、交通費をかけずに診療を受けられる
- 郵便で薬を受けとれる
- 院内感染のリスクを下げられる
オンライン診療を導入するデメリット
オンライン診療を導入するデメリットは、以下の通りです。
クリニック側
- 導入コストがかかる
- ランニングコストがかかる
- 処置や検査に対応できない
- クレジットカードの支払いに対応しなくてはいけない
- パソコンなどの操作に慣れる必要がある
患者側
- 手数料がかかる
- パソコンなどの操作に慣れる必要がある
- 処方されない薬もある
オンライン診療の実施は研修受講が義務付けられている
オンライン診療を実施するには、研修受講が必須です。
オンライン診療は対面診療とは違いスマホやタブレット、パソコンなどの情報通信機器を利用します。医学的な知見に加えて、情報通信機器を正しく利用できなければ適切な診療は行えません。
研修はインターネットで受けられ、無料なのが特徴です。研修内容は以下をご覧ください。
医師向けの研修
- オンライン診療の基本的理解とオンライン診療に関する諸制度
- オンライン診療の提供に当たって遵守すべき事項
- オンライン診療の提供体制
- オンライン診療とセキュリティ
- 実臨床におけるオンライン診療の事例
緊急避妊薬の処方に関する研修
- 経口避妊薬(OC)について理解すべき事項-各種避妊法とOC全般
- 緊急避妊(Emergency Contraception:EC)
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オンライン診療研修とは
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、研修を受講することが義務づけられています。
オンライン診療研修の目的は、医師がオンライン診療を実施する際に必須とされる、ガイドラインや情報通信機器の使用方法、そして情報セキュリティなどに関する知識を習得することです。
オンライン診療研修のプログラムは、5科目で構成されています。各科目の講義用動画を見たあとに、それぞれ10問の演習問題を解いていく形式です。
演習問題を全問正解することで合格となります。研修プログラムの詳細は、下記のとおりです。
科目名 |
講義時間 |
テキストページ数 |
---|---|---|
オンライン診療の基本的理解とオンライン診療に関する諸制度 |
29:31 |
49 |
オンライン診療の提供に当たって遵守すべき事項 |
29:18 |
73 |
オンライン診療の提供体制 |
15:40 |
17 |
オンライン診療とセキュリティ |
37:53 |
31 |
実臨床におけるオンライン診療の事例 |
26:32 |
38 |
すべての章を学習できれば、「厚生労働省指定オンライン診療研修修了証」が発行されます。
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オンライン診療研修修了証が必要な理由
オンライン診療責任者は診療研修を受講して、オンライン診療研修修了証が必要です。これは、厚生労働省がオンライン診療の適切な実施に関する指針を発表しており、その中に「医師は、オンライン診療に責任を有する者として、研修を受講することが義務」と記しているためです。
「オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となる。このため、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければならない。」
引用:厚生労働省|オンライン診療の適切な実施に関する指針
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オンライン診療研修の受講期限
2021年3月までに受講が必要とされていたオンライン診療研修ですが、下記の変遷を経て期限変更となりました。
オンライン診療ガイドラインに記載のあるオンライン診療研修
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定された当初は、2020年10月までにオンライン診療研修を受講する必要がありました。
2023年3月に改訂版が発出され、現在は、自身でオンライン診療を開始するまでに受講が必要です。オンライン診療研修についての記載は、本ガイドラインのp.30にあります。
3. その他オンライン診療に関連する事項
(1)医師教育/患者教育
オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となる。このため、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければならない。
※2020年4月以降、オンライン診療を実施する医師は厚生労働省が指定する研修を受講しなければならない。なお、既にオンライン診療を実施している医師は、2020年10月までに研修を受講するものとする。
参考:オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成 30 年3月 (令和5年3月一部改訂) 厚 生 労
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オンライン診療研修を受講するには
オンライン診療研修を受講するには、厚生労働省オンライン診療研修お申込みページから手続きすることができます。
医籍登録番号や所属医療機関の情報が必須です。また、手続きには医師等資格確認検索システムに登録されている必要があるため、注意が必要です。
point 医師法の規定による2年に1度の届出を行っていない医師の方は、医師等資格確認検索システムに氏名等が掲載されていません。 当検索システムへの登録がなされていない場合、「医師等資格確認検索システム掲載申請書」に必要事項を記載の上、厚生労働省医政局医事課試験免許室免許登録係まで郵送して登録する必要があります。 |
なお、歯科医師については現在オンライン診療にかかる研修についての必要性は明示されていません。研修のお申込みページも用意されていないため、現状では受講は不要です。
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同時に受講できる研修
オンライン診療研修を受講する際に、オプションとして緊急避妊薬研修プログラムの受講も可能です。緊急避妊薬研修プログラムの受講を修了することによって、緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修修了証を取得できます。
緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修修了証もオンライン診療研修と同じようにオンライン上で受講するタイプであり、40分程度の科目が2種類あり両方を受講する必要があります。
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オンライン診療のスタート手順
オンライン診療のスタート手順は、以下の通りです。
- オンライン診療研修の受講
- 施設基準の提出
- 医療情報ネットの登録
- オンライン診療実施にかかる診療計画書の作成と合意
それぞれ詳しく紹介します。
1.オンライン診療研修の受講
オンライン診療を導入するには、オンライン診療研修の受講が必須です。
研修を受けるには「厚生労働省オンライン診療研修実施概要」ページを開き、申請しましょう。申請したら、事前研修を受けられます。
2.施設基準の提出
オンライン診療研修を受け終わったら、施設基準の提出が必要です。
オンライン診療料の提出先は、各都道府県の「厚生局」になります。厚生局へオンライン診療料を提出した翌月から、算定可能です。
3.医療情報ネットの登録
オンライン診療料の提出が完了したら、医療情報ネットへ登録しましょう。
オンライン診療を導入しても、患者が情報を見つけられなければ新規の獲得にはつながりません。医療情報ネットへ登録することで、患者に見つけてもらいやすくなります。
4.オンライン診療実施にかかる診療計画書の作成と合意
患者がオンライン診療を希望する場合は、診療計画書を作成し合意を得る必要があります。
患者の中には、初診からオンライン診療を希望する方もいるでしょう。初診でオンライン診療を利用した方には、診察後に診療計画書を作成する必要があります。作成した診療計画書は、2年間の保存期間が定められています。
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オンライン診療のリスク
オンライン診療には、医師や患者のなりすましが発生するリスクがあります。医師のなりすましが発生すると適切な診察が受けられないため、患者の健康状態悪化につながりかねません。
一方、患者のなりすましでは、薬の不正入手や健康保険の不正利用が問題になります。なりすましを防ぐためにも、医師と患者どちらも本人確認を徹底することが大切です。
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リスク低減に向けた日本医師会の提言
オンライン診療のリスク低減に向けた日本医師会の提言は、以下の通りです。
- 医師の資格確認の義務化
- HPKIカード・マイナンバーカードでのログイン義務化
- オンライン資格確認を導入した保険資格確認
それぞれ詳しく紹介します。
医師の資格確認の義務化
オンライン診療を適切に実施するためにも、医師の資格確認は義務です。患者が医師の本人確認を行えるように、顔写真付きの身分証明書と医籍登録年を常に確認できる機能を備えることが提言されています。
HPKIカード・マイナンバーカードでのログイン義務化
日本医師会の提言により、HPKIカード・マイナンバーカードでのログインが義務化されています。HPKIカードはデジタル空間上で医師の資格と本人の確認を行うもので、マイナンバーカー ドは、本人の確認をするための基盤です。
HPKIカードやマイナンバーカードを、オンライン診療時のログインや本人確認で使用することが提言されています。
オンライン資格確認を導入した保険資格確認
令和3年5月から、オンライン資格確認を導入した保険資格確認が必要です。運転免許証などを利用する患者の本人確認に加えて、「オンライン資格確認の保険証の記号番号を用いて確認する方法」の実施が提言されています。
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オンライン診療資格のよくある質問
オンライン診療資格に関するよくある質問は、以下の通りです。
- オンライン資格確認とは?
- オンライン資格確認の導入費用を知りたい
- オンライン資格確認を導入するステップとは?
- オンライン資格確認の導入は義務なのか知りたい
疑問を解消できるように、詳しく回答します。
1.オンライン資格確認とは?
オンライン資格確認とは、オンラインで患者の資格情報を確認できるシステムです。医療機関や薬局の窓口で患者の資格情報を確認できるため、事務作業のコストを軽減できます。
2.オンライン資格確認の導入費用を知りたい
オンライン資格確認は病院だと3台まで、大型チェーン薬局や診療所薬局では1台まで無償提供されます。
3.オンライン資格確認を導入するステップとは?
オンライン資格確認を導入するステップは、以下の通りです。
- 顔認証付きカードリーダー申し込み
- システムベンダ発注
- 導入・運用準備
- 運用開始
- 補助金申請
4.オンライン資格確認の導入は義務なのか知りたい
オンライン資格確認の導入は、令和5年4月から原則義務化されます。オンライン診療を安全に利用するためには、オンライン資格確認が必要です。
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まとめ
ここまでオンライン診療の概要やスタート手順、オンライン診療のリスクなどを紹介しました。
オンライン診療は患者が来院せずとも、自宅や職場などで診察できるシステムです。便利である一方、患者や医師のなりすましのリスクも考えられます。
安心してオンライン診療を提供するためには、オンライン資格確認の導入が必須です。令和5年4月から原則義務化されるため、オンライン資格確認の導入を急ぎましょう。