2019.7.11

オンライン診療のカギは、患者さんへの細やかな共感力

循環器内科

公益財団法人ときわ会 常磐病院|佐藤 亜紀 医師

福島でSASのオンライン診療に取り組む意味

ー はじめに、オンライン診療導入のきっかけ、背景を教えていただけますか。

佐藤先生: まず最初に、当院の立地する福島県は、心筋梗塞や脳卒中にかかっている患者数が、全国的にみても比較的多い県なんですよね。さらに、4人のうち1人の割合で、心疾患や糖尿病などの生活習慣病が原因で亡くなっているというデータまで出ています。そのなかで、私たちが診療を行っている睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)自体が、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、健忘症、認知症、うつ病、交通事故など、さまざまな疾患や事故に影響を及ぼすとされる病気なんです。つまり、SASに直接介入することは、先ほど挙げたような重大な疾患の要因すべてにアプローチを行うことを意味し、包括的かつ効率的であると考えられます。当地域の場合、すでに対面診察でのSAS診療を確立している病院がいくつかあったので、オンライン診療という形で、他院との差別化をはかることにしました。

オンライン診療の活用には、思い込みに捉われない見極めが大事

ー そのような背景で導入してみて、実際にいまどのようにご活用いただいているのか、具体的なシーンを教えていただいてもよろしいですか。

佐藤先生: まず、当院はオンライン診療を開始して2年目に突入しており、対面診療(初回)、オンライン診療(2回目、3回目)という流れを1クールとすると、現在8クール目に突入しています。年齢層は、34歳から83歳までと幅広く、平均年齢は57歳となっています。ちなみに60歳以上に限定すると全体の約4割以上を占めまして、そのなかでも比較的高齢な75歳以上の患者さんは3名おります。次に、患者さんがオンライン診療を受ける場所についてですが、やはり一番多いのは自宅、次に職場、たまに歩いている途中などの「ながら診療」もあります(笑)あとは県外の出張先からの接続や、自分の職場にいるんだけれども、プライバシーの意識からか駐車場に停めている車内から、という場合も多いです。

ー 83歳の患者さんまでオンライン診療を選択されていらっしゃるんですね。

佐藤先生: そうなんです(笑)その方は一人でスマホが操作できていて、自宅や外出先、コンビニのカウンターなどから受診してくださいます。さすがに最初の頃はどう予約していいかわからないとか、若い方よりも操作を理解するのに少し時間がかかったという点はありましたが、事務スタッフから2、3回ほど丁寧に操作方法をお伝えし、やり方を覚えて以降はまったく問題なく使えており、本人は非常に喜んでおります(笑)ついつい高齢者の方には、オンライン診療なんて難しいのではないか、というイメージを持ちがちですが、そのイメージを打破するような、とてもいい症例だと思います。もちろん人による部分は大きいですが、年齢が若いからオンライン診療と相性がいい、高齢の方はオンライン診療と相性が悪いと一概に決めつけられないので、やはり対面診療のときに患者さんとしっかりお話をして、この人ならオンライン診療を使っていただけるのではないかという見極めが非常に大事だと思います。

求められるのは患者さんへの細やかな共感力

ー 次に、オンライン診療を導入してよかった点はなんでしょうか。

佐藤先生: 現在オンライン診療を実施している患者さんは30人近くいるんですが、オンライン診療に対してネガティブな感想を持った方は1人もおらず、対面診療よりも圧倒的に気に入っていただけていることです。また、最近受診される患者さんのなかには、当院でオンライン診療を実施していることを知り、最初からオンライン診療を含めた治療を希望される方も出てきました。このように、オンライン診療に対する患者さん側の認知はかなり広がってきており、医療者側がオンライン診療の導入に対して足踏みしている段階は、もうとっくに過ぎているのではないかと感じています。

ー 一方、課題に感じていることはありますか。

佐藤先生: いたしかたないことですが、患者さんの通信状況によって接続時に小さな通信トラブルが起きることですね。医療機関は通信トラブルが起こる可能性をあらかじめ想定し、もし起きてしまった場合は、柔軟な対応ができるよう準備を整えておくべきだと思います。もちろんトラブルが起きてしまったときだけでなく、オンライン診療は対面診療と比べて非言語的情報が圧倒的に不足しているので、その見えない部分を穴埋めできるよう、医療機関側は細やかな共感力をしっかり持った上で対応することが肝要であると感じます。

丁寧な初動対応が、今後患者さんが受けられる医療の質を変えるかもしれない

ー 貴院でオンライン診療を実施している患者さんのなかには高齢の方も多いと伺いましたが、患者さんへのアプリ登録などのご案内に苦労されたりする点はありますか。

佐藤先生: 当院では説明するための専任スタッフを配置しており、困っている方がいれば即時電話や直接来院による追加指導などで対応しているので、案内時の大きな苦労はあまりないですね。やはり、どれだけ丁寧に使いやすさを伝えられるかという点は、その後の患者さんの使い方にまで影響してくるので、本当に初動は大事だと感じています。また、多くの患者さんにとって、このオンライン診療が、医療ICTサービスとの最初の出会いである可能性は高いと思っています。もし患者さんがオンライン診療でつまずいてしまったら、それが苦い経験となって、この先便利な医療ICTサービスが出てきても始めてみようと思わないかもしれない。それによって、患者さんが享受できる医療の質が大きく変わってしまう可能性があるんです。

やはり何事も最初の経験ってすごく大事だと思うので、私たちがいま取り組んでいることには、社会的にも重要な意味があるんだということを意識しながら、これからもオンライン診療に取り組んでいきたいですね。

ー 本日は貴重なお話をありがとうございました!

公益財団法人ときわ会 常磐病院

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